(15)ソウルで伝統的韓定食・・・発酵エイに仰天@@
カテゴリー: 外食:その他
釜山、晋州と朝鮮半島の南で仕事を終えた後、韓国の新幹線KTX(韓国高速鉄道 Korea Train Express)釜山駅より一路서울ソウルへと向かいます。ソウルは韓国唯一の特別市で釜山のような6つの広域市とともに道には属しません。その点が日本の政令指定都市とは違いますね。韓国の人口の約1/5に相当する1千万人がソウルに住んでいると言われ、その一極集中ぶりは日本の比ではありません。でも、人口密度は東京23区(1.4万人/K㎡)より少し多い1.7万人/K㎡です。
KTXは最高速度300Kmでソウルまでの400Kmを2時間40分で駆け抜けます。
サメをモデルとしてデザインされたというなかなか精悍な顔付きです。料金は非常に安く釜山-ソウルが約50,000W(4,000円)でした。移動日は生憎の天気でしたが、韓国内陸の山河や田園風景を楽しむことが出来ました。そうそう、客室乗務員の女性がまるでスッチーさんのように皆様長身スリムで上品なのでした。^^
ソウル到着後は直ちにソウル支店を表敬し、支店長と韓国人スタッフの金さんのご案内でさっそく、街に繰り出します。支店長御用達の新羅韓定食(ソラボル・ハンジョンシク)さんです。
今晩はいわゆる伝統的な韓定食を食べることになりました。韓定食とは日本の刺身定食や焼き肉定食のようにお盆に乗った一人前の料理ではなく、陰陽五行説に基づいた五味五色の料理をテーブル一杯に並べるのが特徴です。唐辛子が日本から伝わる以前の李氏朝鮮時代の宮廷料理をルーツとしていますので、基本的には激辛料理はありません。ただ、大衆的な田舎定食も韓定食とされることがあり、キムチやチゲなどの辛味も取り入れた様々なランクがあるようです。
大山のぶ代似の女将さんが笑顔で迎えてくれました。^^
よく使っている支店長は、相当気に入られているなと直感で分かりました。^^
さあ、それでは韓定食の始まりです。皮切りはどこも同じでキムチやナムルの小皿盛りからやってきます。
キムチに冷や奴が添えてあるパターンは初めてです。なるほど、チゲにも入りますので、豆腐とキムチは出会いのものなんですね。日本の居酒屋だったらキム奴なんてネーミングになりそうです。ググったら、キム奴(やっこ)はほとんどないものの、キムチ奴は山のようにありました。^^
これは宮廷料理の九節板(クジョルパン)を略式化したものです。
本来は八角形の器の周囲に料理を盛り付け、中央にミルジョンビョンと呼ばれるクレープのような皮を置き、それで包んで食べるのです。これは皮の変わりに大根の薄切りです。
今晩はソウルで最もポピュラーなマッコルリ長壽を飲み倒しています。
南のマッコルリよりやや薄く感じられますが、甘味と炭酸が爽やかでスイスイ飲めて困ります。^^
左は韓国風茶碗蒸しと呼ばれるケランチム、右はトックのベーコン巻きです。
ケランチムは実は蒸すのではなく、調味した卵液を土鍋に入れて直火にかけ、固めたものです。出来立てはふっくら膨れあがっていたのですが、冷めるとすぐに萎んでしまいます。生卵1個に味噌汁大さじ1を入れて良く攪拌し、レンジで1分ほど加熱しますと似たようなものが出来ますよ。
左はプルコギ風の牛肉の炒め物、右は有名なジョンです。
ジョンは野菜や肉に粉と溶き卵を浸けて鉄板で焼いたものですね。韓国式ピカタです。
左は茹でたエイのピリ辛和え、右は梨の千切りがたっぷり入ったユッケです。
生エイの切り身をこのように和えたカオリチンという料理は晋州で頂きましたが、これは初めて。ユッケと梨の出会いも表彰物です。マッコルリが進むこと進むこと。^^
こんな料理も出るのですね。西洋料理の影響でしょうか。ボイル海老のサラダ仕立てです。
そう言えば、韓国でもポテトサラダやドレッシングのかかったフレッシュサラダは普通に出てきますね。
すっかり、ご機嫌で食べ進んできた韓定食ですが、ここで鉄槌と言いますか、跳び蹴りと言いますか強烈な洗礼を受けることになろうとは・・・。^^
この料理は三合(サマプ)と言いまして、奥から茹で豚、白菜キムチ(生の白菜も)にホンオ・フェと呼ばれるガンギエイの刺身です。キムチや白菜に豚とエイを乗せて3つを一緒に食べることから三合と呼ぶそうです。何だ、普通じゃないと思われるでしょうね・・・。
ところが、、、、このホンオ・フェ、その優しい風貌とはかけ離れたこの世の食べ物とは到底信じがたい激味なのです。
どう説明したらよいのでしょう。とにかく、凄まじい匂いです。世界の発酵食品の中にはとてつもないものもありますが、これはまったく系統の違う衝撃です。饐(す)えた匂いとか腐敗臭とかではなく、アンモニアそのものの刺激臭が噛む度に鼻腔に広がり、目にも染みて涙も出てきます。食べている途中に息を吸うとむせ返って、命の危険すら感じます。いったい何なんだ、これは!!!
韓国人スタッフの金(キム)さんにご説明頂きましたが、これは単なるエイの刺身じゃなくて、壷か何かに密封してアンモニア発酵を促進させたものとのこと。起源は保存の過程で生じてしまった刺激臭でしょうけど、いまではこれを楽しむようになっているそうな。夏の暑さでバテ気味の時にこの刺激が清涼感となり、冷えたマッコルリで流し込むと暑さも癒えてスッキリとするらしいのです。確かにメントールに通じる刺激は感じましたが、それでもアンモニアはアンモニアです。必死に理解しようとして2切れ食べましたが、そこでギブアップでした。目からは涙がポロポロ・・・。^^
この刺激と言うか匂いは、小泉武夫先生の「発酵は力なり」によりますと、世界でも北欧の発酵ニシンの缶詰、シュールストレミンに次いで2番目で、日本のくさやなどまだまだ序の口なのです。如何に凄まじいか、お分かり頂けると思います。
順 位 | 食 品 名 | 臭みの強さ(Au) |
1 | シュールストレミン | 8070 |
2 | ホンオ・フェ | 6230 |
略 | ||
5 | くさや(焼きたて) | 1267 |
6 | ふな寿司 | 486 |
7 | 納 豆 | 452 |
日本でもかつて内陸部に輸送できる生魚はサメやエイくらいしかなく、もしかすると、時間が掛かって到着されたものはこのようなアンモニア臭を発したのかも知れませんが、それが伝統食として継承されることはなかったようです。
ホンオ・フェでグロッキー状態のところへおこげご飯粥とチゲがやってきました。
朦朧としながらも、いつもは辛く感じるチゲがなんと優しい味に感じたことでしょう。^^
宮廷料理を起源とする韓定食の多種多様な料理は海鮮料理店や大衆食堂のパンチャン(おかず)の提供スタイルとよく似ています。韓定食が庶民に広がるにつれて、もてなし料理には食べ余るパンチャンを並べる慣習が根付いたのかも知れません。それにしても、エイをアンモニア発酵させたホンオ・フェの強烈な臭いにはカルチャーショックとともに鼻腔と目へのストレートパンチを同時に食らってしまった感じでした。中国人は辛酸甘鹹苦の五味に山椒の麻(痺れ)も味として加えましたが、韓国ではアンモニアの刺激も風味の一員となっていたのでした。ただ、鼻腔と目に来るこの刺激は韓国人のキムさんも苦手とのことで旅の日本人が初めから理解できる代物ではありません。
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