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【夏の小鍋立て】冷やし葛鶏で一献
カテゴリー: 料理:肉・卵・乳



このところ、小粋な晩酌を確立すべく小鍋立て料理を次々考え出しております。鍋料理と言いますとどうしても冬のイメージですよね。温かいものを食べて暖を取ろうというのが鍋料理に期待するところだと思います。ですが、鍋料理に囚われず、卓上調理だと捉えれば、周年稼働の可能性も出て参ります。そこで、あれこれ考えて写真のような火力可変式電熱器に行き着きました。
本当はお燗機能も備えた長火鉢が憧れなのですが、かつてのように一年中、炭を熾すライフスタイルではないし、密閉度の高い現代の家屋では一酸化炭素中毒も懸念されます。I Hやカートリッジ式ガスの卓上コンロもありなんですが、なんとなく無粋に感じるのは私だけ???
それはともかく、夏向きの小鍋立て創製の一つとして、冷やし葛鶏を紹介します。材料は至ってシンプル。

鶏胸肉、キウイ、片栗粉、日本酒と自然塩。それに青みとして適当な青菜。水菜や春菊でも良いし、今回は畑にモロヘイヤが大量に残っているのでそれを。小粋な小鍋立てはシンプルが一番、具材もせいぜい3種類まででしょう。
まず最初に酒塩を作ります。これは江戸期には垂れ味噌や煎り酒と並んでよく使われた調味料です。料理酒(料理用日本酒)の祖先みたいなものでしょう。

適当な日本酒に海水程度の塩分濃度(約3%)になるように自然塩を溶かし込みます。かつては主に魚などの下味付けに使われていたとか。今回は2段階で活躍します。
鶏胸肉は3~4mmの削ぎ切りにしますが、筋繊維の走る方向に直交するように切るのが、加熱しても胸肉を硬くさせない技のその1。


胸肉の筋繊維は葉っぱの葉脈のように中心線から左右上方へ向けて走りますので、それを頭に入れて切っていきます。
切った胸肉を酒塩に漬け込みますが、キウイの絞り汁を加えます。これが技のその2。

胸肉の筋繊維の結合をキウイのプロテアーゼで緩めます。酒自体にも肉を軟らかくする力がありますので効果の上乗せを狙っています。漬け込み時間は30分程度。
酒塩に漬けた胸肉はキッチンペーパーで水気を拭き取り、片栗粉を入れた袋の中で塗します。


余分な粉をはたき落とし、皿に並べます。現代では葛粉の代わりに片栗粉を使っても葛打ちとか葛叩きとか呼んでいるようなので、今回は葛鶏と銘打ってます。
次に残りの酒塩に大量の氷を入れて材料共々食卓に運びます。


この氷酒塩が今回の料理の肝なのです。
胸肉には軽く塩味が付く程度なので、ポン酢と好みの薬味を揃えます。今回は茗荷と生姜と大葉。


いつものようにメインの小鍋立てまでの間に前菜で冷酒を軽くやって気分を盛り上げます。^^
鍋の昆布だしが80℃程度になりましたら、葛打ちした胸肉をそっと沈めます。

しゃぶしゃぶではないので、粉を落とさないようにそっとです。鍋底にくっ付かないよう昆布の上で引き揚げを待たせましょう。
1分ほどで中まで火が通りますのでそっと引き上げて、今度は氷酒塩に沈めます。

これにより、べと付いた衣がきゅっと引き締まって固まります。透明な葛の衣でコーティングされるのです。これの喉越しが最高です。
好きな薬味を乗せてポン酢にちょいと浸けて頂きます。

ひんやりツルリで技ありの胸肉もふっくら。これは我ながら夏の逸品だと思います。
茗荷も大葉も好いのですが、自分の中でのベストマッチはおろし生姜。

夏にはピリッとした生姜の刺激が爽やかに感じます。
モロヘイヤのしゃぶしゃぶもいけますね。

この食べ方、はまりそうです。^^
さて、最後のお楽しみはダシの利いた葛湯です。葛鶏の片栗粉が徐々に溶け込み、このような葛湯になっています。

適度なとろみが付いた上品なスープとなっています。自然塩で味を調え、残ったモロヘイヤや薬味も加えて最後の〆となります。
夏の暑さの中でもなんとか小鍋立てを楽しめないものかと考えていて思い付いたのが、この冷やし葛鶏でした。江戸期の調味料、酒塩もフルに活用して涼を楽しむ晩酌に仕上げてみました。これを冬仕様にするとしたら、少し甘味も加えて味醂醤油に漬けてから葛打ちし、温かいままツルリと頂くのも乙ではないでしょうか。小鍋立てシリーズ、まだまだ、続きますよ。^^
2016/09/05(月) 05:00 | trackback(0) |
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