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この二つの液体は一体何でしょう。醤油とお酢のようにも見えますが、違います。これらは今から300年以上前の日本で最もよく使われていた調味料なのです。醤油が江戸の庶民に広まるのは享保年間(1716~1735年)以降のことであり、それまでは蕎麦つゆにも醤油は使われていませんでした。今回はそれらを実際に作ってみて、現代の食事に適用できるかを検討してみました。
まず最初に上の写真の左側、煮貫(にぬき)から作ってみます。

赤味噌をその3倍量くらいの水に溶かします。
15分くらい置いてから漉していきます。


そうしますとやや薄い醤油のような物ができます。これを生垂れ味噌と言います。
これに半量程度の日本酒と鰹節や昆布を加えて半分位になるまで煮詰めます。



再度、漉したら煮貫の完成です。
いやいや、これは素晴らしい。味噌の香りは残りますが、甘味のない蕎麦つゆのようです。

大した量ではありませんが、煮沸滅菌した瓶で冷蔵保存します。
続いて、もう一方の薄黄色の液体ですが、これは煎り酒と言います。


材料は日本酒と梅干し、それに鰹節や昆布などです。これも半量になる位まで煮詰めますが、梅干しを潰して風味を酒に移します。
煮貫と同じく漉したら煎り酒の完成です。


程よい塩味と酸味で上品な調味料となっています。ダシも利いていますので、このまま酢の物に使えそう。
同じく瓶に入れて冷蔵保存です。

酸味はありますが、白身魚の刺身に合いそうな予感。
まずはそれぞれの個性を把握するために白石温麺で味わってみます。蕎麦よりも煮貫や煎り酒の味わいが分かりやすいと思ったからです。

煮貫はまさに麺類にぴったり。味噌の香りも仄かなので蕎麦でも行けそうです。実際、醤油が普及するまではこれが蕎麦つゆとして使われていたのですから当たり前ですね。煎り酒は酸味があるので蕎麦には向かないと思いますが、このような小麦系の温麺や素麺には最適ですね。実際、梅酢を入れた麺つゆもありますし。
さて、刺身との相性ですが、カツオ、スルメイカ、ホヤで試してみます。さて、その結果は。。。


驚いたことにそれぞれ煮貫も煎り酒もどちらでも美味しく頂けました。イカやホヤに梅酢が合うのは想定内でしたが、カツオも柑橘酢が合うように煎り酒にもよく合います。煮貫は醤油の代用ですから何にでも合います。ただ、煎り酒は鰹節の香りが表に出てくるのでイカや白身の魚には邪魔な感じもします。たぶん、昆布のダシだけにすればよいのでしょう。
江戸時代の調味料は実によく工夫されていました。煮貫と煎り酒があれば、大概の物は食べられるでしょう。ただ、刺身には若干、塩味が足りないかも知れません。たぶん当時の味噌や梅干しの塩分濃度は現在よりもっと高かったはずです。特に我が家の梅干しはヘルシー志向の細君が漬けますので、通常の半分程度の塩分濃度ではないでしょうか。従って、さらに煮詰めるか塩を補うかの改良が必要です。しかし、刺身用と麺つゆ用の調味料が同じ塩分濃度というわけには行きません。ですので刺身用に調製して、必要に応じて薄めて使うのが良さそうです。(^-^;
2016/07/18(月) 05:00 | trackback(0) |
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