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8 水産流通・加工会社CAMを訪ねる @ Chioggia
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キオッジャ二日目の午前中は貝類養殖セミナーでの講演があり、ちょっとナーバスになっているのですが、その前にこの地区で最大の水産会社での見学と情報交換です。今、この会社の専用岸壁からベネティア湾越しにまさにベネティアの方を眺めていますが、直線距離で20Kmもあり、ベネティアには高層ビルもないのでよくわかりません(下図)。
今日、お邪魔するのは、CAM(カム)という水産会社です。CAMは Conservificio Allevatori Molluschi の頭文字で強引に直訳しますと、貝類生産者の加工場でしょうか。元々はこの海岸を所有していた一族だったらしいのですが、遠浅なベネティア湾でもこの一帯は湾外から続く天然の澪筋になっており、沖からの漁船が漁獲物を水揚げするのに適していたそうです。
かつては停泊料を取って水揚げをさせていたのですが、やがて、この水産物を扱う流通業を始めたそうです。それが成功して現在は水産加工も手掛けるようになっています。
ベネティアもキオッジャ(旧市街地)も内湾の人工島なのですが、ゲルマン人からの攻撃から逃れるために侵入しにくい干潟で生活するようになったのが発端とか。(赤い矢印は上の写真の遠望方向)

島だと周囲を船に囲まれて焼き討ちにされそうですが、遠浅なベネティア湾は干潮時に干潟となるところが多く、澪筋を熟知していないと座礁してしまうそうです。冒頭の写真にも澪を示す杭が並んでいますが、敵の襲来を察知すると抜いてしまったそうです。
軟弱な干潟に土地を造成するのは容易ではなく、夥しい数の木が打ち込んであるそうで、ベネティアをひっくり返すと森になるとも言われます。それでも、時代とともに沈下は進行しており、Scirocco(シロッコ)と呼ばれるアフリカからの南風が吹き込むと海面が上昇し、冠水してしまうエリアもあるのです。以前、ベネティアを訪れた時は、サン・マルコ広場が冠水していて板を渡した応急の橋を観光客が恐る恐る渡っていました。
CAM の貝類畜養出荷施設を見学します。衛生管理のためにディスポの白衣、シューズカバー、キャップを装着します。

畜養出荷施設でもこの厳重な防疫対策は立派です。大陸ですから伝染病で何度も悲惨な目に遭ってきたのでしょう。
アサリやムールが出荷のために袋詰めされていました。




このアサリはイギリス経由で導入した日本のアサリと同種です。23年前、キオッジャに近いGOROのアサリ種苗生産施設を見学しています。年間2億個のアサリ種苗を生産し、干潟に蒔いて着実に生産量を伸ばしていました。
こちらのムールは日本に帰化して、日本中の岸壁に張り付いたムラサキイガイとは別種で、幾分小型ですが、味はこちらの方が美味しかったですね。
こちらは出荷待ちのコンテナを自動で入出庫する装置です。


フォークリフトが床のレールに沿って動き、命令されたコンテナを引き出しています。
貝類だけではなく甲殻類も扱っています。これはヨーロッパクモガニ、北イタリアで蟹料理というと大概これですね。


日本ではクモガニというとイッカククモガニなどの小型種を連想しますが、こちらではこんなに大きくなるんですね。そういえば、巨大になる深海性のタカアシガニもクモガニ科でした。
こちらはヨーロッパイチョウガニです。甲羅の形が特徴的です。

日本のイチョウガニは小型で食用にはされていませんね。
活ロブスターも扱っています。


上は日本のイセエビに近いスパイニーロブスター。でも種類がわかりません。白い斑点があるのでカノコイセエビに似ているのですが、大触覚の斑紋が異なります。下は有名なオマール、つまりヨーロピアンロブスターですね。
畜養出荷施設から水産加工場へと移ります。水揚げから畜養、流通、加工と一気通貫の生産システムですねぇ。

この施設はまだ新しく、加工の歴史はまだ浅いとのこと。ですから、日本の水産加工技術に高い関心があるのでしょう。
最初のマルブン食品の佐藤社長が揚げ蒲鉾の生産工程をDVDで解説。その後、CAM側の生産理念やシステムをプレゼン。



イタリアでも若い世代の魚離れが見られるとのこと。魚をより食べやすい形にして提供することが必要。でも、ちゃんと料理したい人もいるので、加工レベルを4つのカテゴリーに区分しています。
内臓や鱗を取った一次処理魚、フィレ-やポーション、半調理製品、温めれば食べられる調理済み食品の4段階で製品を区分します。多様なニーズにも応えようという理念ですね。これって大変なことです。
様々な加工マシンを見せて頂きます。どれもピカピカ。


でも、日本のハイテクマシンに比べるとごく普通の洗浄機・焼成機・パッキングマシンに見えます。
このような雑魚があまり利用されていないそうです。


CAMではこれらの商品開発を行っています。よく見ると、日本のミシマオコゼやカサゴ、エソの仲間のようです。日本人にはどれも美味しそうに見えるのですが。。。
現在の試作品はこの2種類。



どうやらスープとハンバーグのようです。皿の縁にはイタリアと日本の国旗がソースやペーストで描かれています。この辺りのホスピタリティーがイタリア人らしいですね。ゲルマン人ではこうは行きません。
肝心のお味ですが、、、



スープはブイヤベースのようで濃厚で魚の旨味がよく出ています。これは日本人も気に入るでしょう。一方、ハンバーグはサーモンも混ぜ込んでいるのですが、モソモソとして家庭的な味です。日本人としては野菜をもう少しくわえ、ハーブやスパイスで非日常的な香りが欲しいところです。
宮城にも鮮魚や冷凍魚の販売と加工品の製造販売まで手掛ける水産会社も多々ありますが、加工技術に関して比較しますとかなり高度に発達しています。その背景には水産物の伝統的な食文化があり、多種多様な加工品を生み出されるのだろうと思われます。イタリアも深い食文化がありますが、一人当たりの年間水産物消費量は日本の半分以下で基本的には畜肉や乳製品からの蛋白摂取が主体です。そういう日本も年々ランキングの順位を下げつつあり、食事の欧米化とともに水産物の消費が年々減っています。世界で和食が注目されてきている反面、当のご本家では欧米化しつつあるのですから困ったものです。
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2015/09/22(火) 05:00 | trackback(0) |
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