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イタリアでは酒屋のことをENOTECA(エノテカ)と呼びます。本来はギリシャ語から派生したワインの箱やケースという意味でしたが、現在はワインに特化したライブラリー的な販売店をそう呼ぶようです。ワイン以外の酒類や食品も扱ったり、軽食を提供したりする店舗もあります。
ミラノにはWineMIという5店舗のエノテカの共同体があり、ミラノのワインの伝統を守りながらも革新的な活動も行っています。


今回は5店舗のうちMassimo Malfassi(マッシモ)さんが経営するenoclub(エノクラブ)において、日本酒の試飲や日本の食品の紹介を行います。
紹介する日本酒は塩竈の銘酒浦霞(佐浦)です。純米酒や吟醸酒でイタリア人の評価を受けます。


日中の試飲は3日間ですが、一晩だけパーティー形式の試飲会も行っています。さらに、ベネティアに近いChioggia(キオッジャ)においても交流会や昼食会で試飲を実施する予定です。
エノクラブにおける浦霞の試飲の様子。お客様のほとんどの方が純米酒や吟醸酒は初めてだったようです。


残念ながら他の活動があり試飲には長時間立ち会えなかったのですが、皆様、日本酒の概念が変わったとのこと。イタリアにおいても知識人は最近の日本酒が以前のように大メーカーの量産酒だけではなく、純米酒や吟醸酒等の高品質な日本酒が地方の蔵元で醸されていることを少しずつわかって来ているようですが、そう簡単に入手できないのが現実です。
この日は夜に日本酒と和食を楽しむ会があります。日中から和食プレートの準備です。



同行した居酒屋の料理長がテキパキと拵えて行きます。その手下になって手伝っています。献立は純和風でコンニャクや野菜の煮物、インゲンの胡桃和え、サーモンの押し寿司等です。参加するミラネーゼは全部食べてくれるでしょうか。。。
マッシモさんの軽快なトークで口火が切られ、浦霞の一連の醸造工程をDVDで紹介します。

皆様、食い入るように見ています。そりゃそうですよね。葡萄から造るワインと違って、主食の米がなんでこんな気品のある酒になるのか不思議がっていましたから。
浦霞は全部で5種類試して頂きました。左から純米酒浦霞(まなむすめ65%)、純米吟醸 浦霞禅(山田錦、トヨニシキ50%)、特別純米酒生一本浦霞(ササニシキ60%)、純米大吟醸浦霞(山田錦45%)、浦霞梅酒です。()内の%は精米歩合です。



試飲の後で気に入った酒を挙手により伺ったところ、きき酒でも食中でも特別純米酒生一本が一番人気となりました。きき酒では吟醸香の強い浦霞禅も二位に付けたのですが、食中では三位に後退し、純米酒が二位を奪いました。ササニシキで醸した限りなく吟醸酒に近い生一本の程よい風味が繊細なイタリア人の舌と鼻にマッチしたようです。
ただ、日本酒ベースの梅酒は食後酒的に出したのですが、これを含めて好きな酒は何?の問いかけに梅酒が一番だったのは冨谷企画課長も複雑な面持ち。でも、ワイン文化圏においてはフルーティーな酒にも慣れ親しんでいますから十分理解できますね。
和食の方は42プレートを提供しましたが、食べ残しがほとんどありませんでした。ほぼ完食と言っても良いでしょう。ユネスコ世界遺産に登録された和食は、イタリアでもかなり注目されています。小細工をしない真っ当な和食はイタリア人にも通じることがわかりました。それにしてもほぼ全員の方が箸を上手に使います。あとで伺ったら、ミラノには中華料理店が多いからとのことでした。たしかに途上国の田舎町でも中華は見かけますからね。
最後に日本酒とチーズのマッチングを試して頂きました。


チーズはマッシモさんのセレクションです。手前の賽の目に切ったチーズはSALVA CREMASCO(サルヴァ クレマスコ)。ロンバルディア地方の特産で牛乳から作るウォッシュタイプです。従って、臭いはきついですが、味わいは繊細で上品。牛乳の甘味もあり、仄かな酸味も感じましたが、少しモサモサした口触りです。右に細かく切る前の姿を示しましたが、珍しく断面が四角形です。スイスに近い渓谷部で作られるので運搬時に安定させるための知恵ですね。
奥のスプーンに乗った真っ白いクリームタイプのチーズはCAPRINO FRESCO(カプリーノ フレスコ)です。山羊の乳で作ったフレッシュタイプのシェーブルチーズですね。多少、山羊の癖は感じますが、まろやかで爽やかな口当たりでした。胡椒とオリーブオイルをかけて食べてみたいです。因みに羊で作ったフレッシュチーズはペコリーノ フレスコと言います。
準備中にチーズの味見はしていたのですが、試飲会が始まると給仕に追われて浦霞との相性をチェックすることが出来ませんでした。ただ、マッシモさんが睨んだとおり、両方とも上品な味わいなので、純米酒や吟醸酒ともベストなマリアージュとなったはずです。
ミッションの後半はアドリア海の港町ベネト州ベネティア県キオッジャでの活動です。

いつ来ても好い街です。建物の色形こそ違いますが、雰囲気はまるで塩竈です。塩竈とのキオッジャの驚くべき共通点は、このシリーズのトップ記事(1なぜイタリア? 平成遣欧使節団)をご覧下さい。
キオッジャ市民との交流会の前にリストランテで打合せだったのですが、食事が終わって外に出てみますと、、、




楽団が待ち受けていまして、交流会場の市民ホールまで嬉し恥ずかしのパレードでした。交流会では様々なPPプレゼンテーションを日伊交互に行いました。その中で塩竈とキオッジャの共通性には参加者一同から驚きの声が上がりました。最後に副市長さんから運び切れないほどのお土産を頂き、それもイタリア人の親友が空輸してくれました。何から何まで Grazie mille
その交流会終了後、隣の部屋で浦霞の試飲会を開催しました。


立食ですが、浦霞2種と揚げ蒲鉾が中心の和食プレートを提供しました。これらも完食に近かったでのすが、しらす干しを使った珍味には親友から「資源学的にこの利用は問題ではないのか?」と指摘されました。さすが、国立環境保護研究所長です。ですが、「カタクチイワシの資源変動は主に気候変動に左右され、人間の漁獲が小さかった時代から大きな変動を繰り返しており、極端な低水準期以外はシラスを獲っても持続的な利用が可能である」と教科書通りに答えておきました。^^
翌日も快晴、朝から強い日差しが照り付けます。

この日の午前中はキオッジャ市内の水産会社見学や貝類養殖セミナーでの講演が主な活動です。
その後、地元信用金庫主催の昼食会にお呼ばれしました。


昨晩の文化交流会、そして、本日の貝類養殖セミナーの成功を祝して浦霞で乾杯です。
皆様、日本酒とイタリア料理のマッチングは如何でしょうか。


この会場では純米酒浦霞と浦霞禅を味わって頂きました。各テーブルに一本ずつですから、すぐになくなってしまいました。それくらいの方が印象が強く残ってきっと好かったのでしょう。
今後のキオッジャと塩竈の友好に浦霞が架け橋の1つとなってくれることを期待しています。是非、キオッジャの皆様にも塩竈へお越し頂いて、寿司と日本酒を堪能して頂きたいと思います。ただ、イタリアで日本酒を普及させるためには、やはり、イタリア人が日頃食べている物との相性が重要になります。イタリアチーズは400種類とも600種類とも言われるくらい多種多様です。今回のサルヴァ クレマスコやカプリーノ フレスコ以外にもきっと合うチーズが見つかるはずです。チーズ以外にも美味しい料理に溢れるイタリアです。日本酒とのマッチングも今後の課題となるでしょう。
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2015/09/12(土) 12:00 | trackback(0) |
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