寒真鯒(マゴチ)で二品
カテゴリー: 料理:釣り魚
12月に入ると釣りも厳しくなってきます。よっぽど高気圧に覆われた穏やかな日に当たらないと修行のように辛い時間を過ごすことになります。この日はこれから晴れてきそうな気配だったのですが、雪雲が次から次へとやって来て、粉雪が混じる冷たい雨が降り続きました。前半戦、アイナメがぽつりぽつり釣れる程度で時が流れました。
そんな時、得体の知れない大物が掛かりました。アイナメでもヒラメでもない不思議な手応え。なんと夏が旬の真鯒(マゴチ)でした。
初夏の頃、産卵のために浅場にやって来ますので、よく狙って釣ることもあるのですが、この季節に釣れたのは珍しい。大きさは全長55cm、どおりで重いわけです。
しかし、よく見ると不気味な顔立ちをしています。
頭の背面が硬い一枚の板のようです。鰓蓋や鰭にも鋭い棘があり、取り扱い注意な魚です。
そんな魚も頭を落とし、鰭を調理バサミで切り取れば、扱いが楽になります。内臓を取って、頭とカマと胴に仕分けします。
今日はマゴチでプロバンス風の二品を作ってみます。
まずはサエモン式ブイヤベース。材料はマゴチのアラと筒切りの身、適当な野菜くず、パセリ・セージ・ベイリーフ・ニンニクなどのハーブや香辛野菜です。
これにトマト水煮缶と塩胡椒、オリーブオイル、白ワインなどが必要になります。マゴチは滑りが強いので皮目に熱湯をかけて粘液を洗い落としておきます。
フライパンに油を引き、ニンニクを炒めて香りを出したら、野菜やマゴチのアラを加えて炒め合わせます。
焦げ付かせないように中火で炒め、マゴチの肉が白くなったら、600ml位の水とハープ類を加えて煮込みます。
アクを取りながら15分程煮込み、トマトの水煮缶を加えてさらに10分程煮込みます。
あれば、サフラン水を作って加えます。
こんな感じになるように竹ベラでアラや野菜を突き崩して行きます。
それをシノワかザルで越し、白ワイン、塩胡椒、フェンネル、コリアンダーなどで調味します。
最後にこの濃厚なスープでマゴチの身を炊けば完成です。
飾りも兼ねて、ムールやアサリ、エビなどを入れ込むこともありますが、魚貝類の味の足し算は必ずしも上手く行くとは限りません。マゴチのアラだけでも十分に濃厚な味が出ています。
もう一品ですが、マゴチの薄切りを使ってカルパッチョ風を作ってみます。ソースはレモスコとオリーブオイル。
カルパッチョは元来、生の牛ヒレ肉の薄切りにパルメジャーノやオリーブオイルベースのソースをかけたものですが、日本からの逆輸入で魚のカルパッチョもイタリアに広がっています。その底辺にはイタリアにおける日本食のブームもあるのでしょう。
マゴチの薄切りを皿に張り付け、海水程度の塩水を軽く噴霧しておきます。それにイタリアンパセリの微塵切りとポワブル・ロゼを散らしてからソースを垂らします。
マゴチの身はしっかりとした噛み応えがあって、薄く切っても存在感がありますね。カルパッチョ向きの魚と言えます。
本日はマゴチに白ワイン。
白は滅多に呑まないのですが、料理に使った残りです。^^
マゴチの旨味が凝縮したスープで炊いた上品な白身。
産卵期の夏より身が締まって美味しく感じます。
スープにパンを浸して頂くと濃厚なスープとふわふわ感を同時に楽しめます。
皿に残ったスープをパンで拭き取るのは食べ物を大切にする道徳的な意味合いだけではなく、海への負荷を軽減する意味でも大切なことです。カレーライスや麻婆豆腐の場合はお湯を注いで漬物で擦って飲みたいですね。^^
厳しい寒さの中で釣り上げたマゴチの味わいは秀逸で冷えた体や疲れを癒やしてくれました。自分で釣った魚を大切に食べる。そして、自然の恵みに感謝して必要以上に持ち帰らない精神は縄文時代から日本人の心に養われてきました。アリカナイズされた釣りが若い世代に広まってますが、対象魚だけしか眼中にない歪んだ自然観も植え付けているようです。世界は日本の文化や自然に憧れています。決してアメリカナイズされた姿を望んではおりません。と言いつつ、外国の料理を作っていますが、日本の伝統料理も大切にしています。^^
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