情熱・誘惑クリチ(クリームチーズ)で有名なあのねの吉ファームの星野さんから、漬け床用のクリチ味噌を試作したので試して欲しいとの連絡がありました。ちょうど、翌日のパーティーで情熱クリチを使いたかったので、買い出し兼ねて仙台駅のブースに取りに行って参りました。その時、たまたま、星野さんは外出中で綺麗なお姉さんが丁寧に対応してくれましたよ。ラッキー。^^
ちなみに、味噌漬クリチ(上)という製品は既に商品化されておりますが、漬け床用のクリチ味噌(下)はこれとは別物です。
現在、我々はイタリアにカニカマ以外の練り製品を普及させるために、田楽味噌を改変したイタリア向けディップも合わせて検討しています。その一環として上の味噌漬クリチを湯煎して練り混ぜて試したところ、なかなか佳い具合でした。たぶん、そこから星野さんが魚などの漬け床としての応用を思いついたのでしょう。
パーティーでは、気仙沼名産のメカジキのハーモニカを実山椒の香りを利かせてオーブンで焼き、その周囲に宝石のように色とりどりのクリチ味噌漬焼きの魚貝類を散らす趣向です。
材料は刺身用のメバチ、ギンザケ、タコに、冷凍ですがホタテとエビです。散らす関係でやや大きめの賽の目に切っています。
一晩、漬けますので、あまり味が染み過ぎないように、うっすらと塗す程度にして保冷バッグに収容しました。
今回の試作漬け床は味噌200g、クリチ100g、味醂100g、酒25g、砂糖大匙1の配合で、そのまま食べるには味が濃い目ですが、通常の味噌床よりはかなりマイルド。クリチが塩味を和らげています。
ハーモニカの実山椒焼きに添えた海の幸のクリチ味噌漬焼き。
結果は悪くなかったのですが、クリチ味噌漬の魚貝類はまとめてフライパンで焼きましたので、かなり水分が出てしまい、味噌床が洗い落とされました。その結果、味噌の味は染みていますが、クリチの存在があまり感じられないことが判明しました。
続いて、気仙沼で。。。 このクリチ味噌は、畜肉との相性も良いはずだと直感し、さっそくチキンとポークで試してみました。まず、鶏もも肉です。 漬け込みは一昼夜です。
味噌床を拭わずにクッキングシートを敷いたフライパンで両面を焼いていますが、身が厚いので最初、弱火で蓋をして焦がさないように中まで火を通します。最後に少し火を強め、好みの焦げ目になるように焼き上げます。味噌床には糖分が入っていますので、最初から蓋なしの強火で焼きますと、中芯に火が通る前に周囲が黒く焦げてしまいます。
美味しそうに焼けています。ふっくらとジューシーです。
鶏ももはかなり肉厚で脂肪も多く、今回の味噌床の調合だと一晩漬けでは味が物足りなく感じます。でも、それは漬け時間や味噌床の量で加減すべきでしょう。あまり味噌味が強くなると今度は魚には染み過ぎてしまいます。
続いてポーク。こちらは味もジャストミートでした。
ロースの脂身と味噌床の甘味が実によく融和しています。鶏ももに比べて薄いので、火の通し過ぎには注意しましょう。ポークソテー用の肉だと一晩漬けで中までちょうど良い塩梅で味が染みています。この焼き方はクリチ味噌ごと加熱しますので、肉の周りにクリチの旨みやまろ味が残ってくれます。これでこそ、クリチ味噌の本領発揮です。
さらに、魚での追試です。この日は仙台で草香麺のお披露目会でしたが、カネシゲ(干物製造販売・冷凍魚販売)の高嶋さんが魚三種を漬けて届けてくれました。
これは赤魚ですが、クリチ味噌との出逢いは未だかつてないでしょう。この歴史的にも貴重な組合せを調理する機会に恵まれたことを大変誇りに思います。大袈裟か。^^
やはり、これまでの実験からクリチ味噌ごと一緒に加熱して相乗効果を狙います。
クッキングシートは糖分の焦げ付きを抑制してくれますし、洗い物が楽になります。
渾身の赤魚クリチ味噌漬焼き。七味唐辛子で味のアクセントも忘れません。
味の染み具合、赤魚のホクホクした白身との相性、まずまず秀逸な漬け焼きとなりました。
さらに、マダラとギンザケでも試します。
こちらは、純粋に実験用なので量もなく、草香麺のお披露目会に参加された皆さまにはお出し出来ませんでした。
これにはびっくり仰天。赤魚でも十分美味しいと思ったのですが、マダラとギンザケとの相性はそれを軽く超えました。
厨房で試食していますので、盛り付け写真はないのですが、赤魚の締まった白身より、柔らかく口中で崩れるマダラやギンザケとクリチ味噌の絡み具合が何とも言えないのです。もしかしますと、クリチが洋風な味わいなので、それらと相性の良い、タラやサーモンとの組み合わせに安心感を懐いてしまうのかも知れません。でも、魚の場合は柔らかい身とクリチ味噌の組み合わせが今後、鉄板になりそうな予感がします。
さて、総合考察ですが、漬け床であるクリチ味噌の対象食材への影響って一体何でしょう。おそらく、非発酵系チーズであるねの吉ファームさんのクリチだけに魚や肉を漬け込んでも、然したる変化はないものと推定されます。でも、クリチ味噌の場合は味噌や味醂からの発酵系の旨みや塩味、甘味が対象食材に強く影響します。。。そうすると、クリチが入っていなくても同じ味になるのでしょうか。
最初の魚貝類の実験で、炒めていくうちに水分で漬け床が洗いとされた時、味噌の香りしか感じなかったのはそのためでした。続いて、漬け床共々焼き上げた場合は、クリチと味噌の相乗効果で今までにないマイルドでコクのある焼き物となりました。それに畜肉にもよく合いますし、洋食でもよく使われるタラやサーモンとの相性も驚きの発見でした。クリチに使われている生クリームも関与しているのかも知れません。
これらのことから、クリチ味噌は漬け床というより、炒め味噌のちょっと洋風といった調味料なのかも知れません。美味しいクリチを拭い去って調理するのも勿体ない事です。もちろん漬け込んでから、このような炒め焼きにしたり、野菜と一緒に炒めて、最後に調味料として加えても良いのではないでしょうか。
星野さん、どうでしょう。今回の実験からはこのような結果となりました。もしかすると、スパイスやハーブも加えて肉用と魚貝類用に分けた方が良いのかも知れません。もう、使い切りましたけど、次はクリチ味噌で、ナスやピーマン等の炒め味噌としての適性も探索してみたいですねぇ。
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