ツブ貝(ヒメエゾボラ)の食べ方
カテゴリー: 料理:貝類
近所のスーパーで活ツブ貝が一盛り300円で売ってましたので、晩酌用に買って来ました。普通ツブといいますと、巻貝の総称なので、春の磯で採れる小型のレイシガイやクボガイなどもツブとしてよく食べられています(関連記事)が、底引き網やカゴなどで漁獲される中型のエゾバイ科の巻貝類もツブとして流通します。
宮城では数種類の中型ツブが食べられていますが、最も量的に多いのがこのヒメエゾボラです。
県外からの陸送物でない限り、ツブ貝といいますと、このヒメエゾボラであることが多いですね。小型のホラガイのような形をしており、殻の色は焦げ茶色からベージュまで変異がありますが、どれもヒメエゾボラでした。宮城では、アワビツブと呼ばれる巻貝もありますが、あれはモズソガイといいまして、エゾボラの仲間とは異なります。
さて、このツブはまず最初に茹でてしまいます。海水程度の食塩水をツブが浸るように注ぎます。
この時、決して煮立てたお湯から茹でないで下さい。殻から身が抜けにくくなりますので常温の食塩水から茹で始めます。五右衛門の釜茹でのようで可愛そうですが、どうせ食べるのなら美味しく食べてあげたいので。なお、刺身で食べる時は金槌か木槌で殻を割って、身を取り出します。慣れた方ですと、アイスピックで生きたまま身を引き出すことができます。
沸騰しましたら、中火にして蓋を被せ、7~8分茹でます。小さめのツブなら5分でいいでしょう。
蓋をしますと吹きこぼれやすいので火加減をして下さい。なお、写真の鍋は絶対噴きこぼれない山本鍋です。安心して目を離せますので重宝しています。
茹で上がったツブはそのまま身を引き出してパクつくのが一番美味しい食べ方です。
とぐろを巻いた内臓の先端まできれいに取り出すのは、ちょっとしたコツが要ります。蓋の付いている硬い筋肉にフォークを刺して、引き出しながら左手で持った貝殻を反時計回りに回していきます。内臓の先端まできっちり抜けるとちょっとした喜びを感じますね。^^ 途中で切れるとブルーが入りますが・・・。
基本的にツブの身は全部食べられますが、最近、唾液腺による軽い中毒が問題視されています。左から内蔵、唾液腺、筋肉の部分です。
エゾボラの仲間の多くは肉食性で、餌となる生物を唾液腺に含まれるテトラミンで麻痺させます。この唾液腺を人が多く食べると目眩などの神経障害が起きる場合があります。死に至ることはないそうですが、以前、恐い思いをしたことがあります。茹でツブを丸ごと10個ほど食べて運転していましたら、突然、視界が歪んで見えるようになり、慌てて車を止めて2時間くらい休んだことがありました。目が勝手に寄り目になっていくような感じです。
かつて、北の漁村では、酒の回りを増幅させるために、このツブを食べてから貴重な酒を飲んだという嘘か本当かわからない話も伝わっていますが、あえて目眩を起こす必要もないので、取り除いて食べた方が無難です。子供だったら少量でも効いてしまう危険性もありますしね。
取り除き方は簡単で、筋肉と内臓を切り離し、筋肉側を包丁で開くと白くてもろい小豆粒から大豆ほどの大きさの塊が左右に入っていますので、取り除いて下さい。
なお、象の鼻のような器官は筋肉ですので食べても大丈夫です。それと内臓ですが、これもまた、美味しいのですが、エゾボラ類は死んだ魚も食べており、様々な物質が蓄積している可能性があります。あまり大量には食べない方がよいでしょう。年に何度も食べるものではないので、私は食べてますけど・・・。
アップで見ますとこんな感じです。少し皺も見えますね。北海道ではあぶらと呼んでいます。
硬さはあぶらと呼ばれるように牛脂のような感じです。脆くぽろぽろと崩れますので、引き出すより筋肉に切れ目を入れて取り除いた方が無難です。ちなみに、この唾液腺に含まれるテトラミンは煮ても焼いても消えません。
細君や娘はとぐろを巻いたツブの内臓が苦手なので、筋肉部分を使ってエスカルゴ風に作って上げました。
唾液腺を取った筋肉だけを小口に切り、塩、おろしニンニク、刻みパセリをよく揉み込んだら、オリーブオイルをかけ回して、殻に詰め戻します。180℃のオーブンで10分ほど焼けば出来上がりです。
本場のエスカルゴですとバターを使いますが、イタリア風にオリーブオイルでも美味しいですよ。
先にボイルしてありますので、オーブンで焼きすぎると実が硬くなります。表面がほんの少し焦げる程度結構です。パン粉は振らない方がツブの食感を素直に楽しめるような気がします。
もう1品、韓国の居酒屋メニュー、コルベンイムッチムです。コルベンイはツメタイガイ等の巻貝で、ムッチムは和え物です。
薄切りにした茹でツブを人参、長葱、梨の千切りと酢コチュジャン(醤油、砂糖、擂り胡麻、大蒜、胡椒も加えました)で和えます。サンチュと茹でた素麺を添えて頂きます。
食べる時はこんな感じで混ぜ合わせます。まるでピビンネンミョンみたいですね。
これは韓国の酒の肴として定番の一品です。イカで作ることもあるそうですよ。
和食でもう1品です。伝統的な酢味噌和えです。ホッとする美味しさです。
白味噌と練り芥子を濃いめのダシ汁少量で伸ばして酢と砂糖で調味し、小口に切ったツブを和えます。茹でたセリを添えました。
最近、このような食材の食べ方や知識が伝承しなくなっており、茹でツブを食べて目眩を感じ、病院に駆け込む人もいるようです。爺さん婆さんと暮らしていれば、このような知識も伝承されるのでしょうけど、核家族の時代には自分で勉強するしかありませんね。それとツブの酔いも以前は問題にはならなかったのに、食品の信頼がぐらついた近年、我々消費者も少し過敏になったのかも知れません。魚屋さんに聞いたのですが、最近はアサリの中に小さな蟹がいたり、ワカメに穴が開いていたり、ホヤの中からゼリー状の塊が出てきてもクレームが付くそうです。どれもごく自然な現象なんですけどね。


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