名残のサンマでぬたを楽しむ
カテゴリー: 料理:釣り魚
今年のサンマの南下は高水温のために遅れて、11月中旬現在でも三陸沖に漁場がありました。でも、もうすでに名残の季節に入っています。サンマの群れも金華山を通り過ぎ、産卵海域である紀伊半島周辺に辿り着くころには体の脂もすっかり消耗し成熟します。この脂の抜けたサンマもそれなりの食べ方があり、なれ寿司や煮干しなどには返って脂が邪魔になるのです。もし刺身で食べるのなら今が最後のチャンスです。ずいぶん刺身も食べたなぁ~という向きにはぬたをお勧めします。酒が進むこと間違いなしです。^^
ぬたの基本は練り味噌です。材料は白味噌、お酒、味醂です。砂糖は万が一甘さが足りない時にだけ使います。
白味噌にも多くの種類があり甘味も異なりますので、分量を数値化するのが難しいのです。一人前のぬたにかける酢味噌は小さじ2杯程度ですが、いちいち少量を作るのは面倒なので、まとめて作っておきます。本日は白味噌を60g、調理用酒大さじ3杯、味醂大さじ1で作り始めます。これで5~6人分は出来ると思います。
まず、酒と味醂を混合して火にかけ煮立ったら、鍋を傾けてアルコール蒸気に火を点けます。
要するに煮切り酒・味醂を作っています。アルコールが残るとどうしても苦味が付きまといますので。酒と味醂の美味さと甘さだけを残すのです。これ、結構楽しい作業です。^^
そこへ白味噌を加えて、よくこなれるようにヘラで掻き混ぜていきます。
底が焦げ付かないように火加減に注意しつつ、艶が出るまで掻き混ぜ続けます。酒味醂と味噌の分量はこの過程で水分を飛ばし、ねっとりするまで煮詰めますので、若干多くても構わないのです。ただ、味醂を入れすぎますと甘味を後から取り除くことは出来ませんので控えめに加減します。逆に甘味が足りないとと感じた時だけ砂糖を加えて調整します。
水分が飛んで艶が出てきたら、火から下ろします。後で醸造酢を加え、具材からも水分が出ますので少し硬めに練り上げます。冷めたら、使う分以外は熱湯で滅菌した瓶で冷蔵保存します。
これを擂り鉢で擂れば、さらに滑らかになりますが、家庭のお惣菜には No problem。今回はサンマなので基本の酢味噌にしてますが、イカやササミなど淡白な素材の場合はこの練味噌に卵黄やダシを加えることもあります。その場合は保存性が低くなりますので、早めに使い切ります。
使う分の練り味噌に小さじで加減しながら酢を練り込みます。
緩すぎますと戻せませんので慎重にトロリとする位の硬さに調製します。
本日は基本の辛子酢味噌(上)の他に、変わり酢味噌を二種作ります。
下の左はおろし生姜と長葱の微塵切りをたっぷり加えた酢味噌です。気仙沼の居酒屋でこれのぬたを食べた時、大変美味しく感じたので自分なりに工夫してみました。下の右は先日、頂いたコトルのひゃくさんの料理をヒントに韮ペーストと胡麻油を加えた中華風の酢味噌です。韮ペーストは茹でた韮の葉先を微塵切りにしてから擂り鉢で擦って作ります。
サンマの切り方もそれぞれの酢味噌の特性に合わせて変えています。
基本の辛子酢味噌には拍子木切り(上)、葱酢味噌には切れ目を入れた斜め切り、韮酢味噌には削ぎ造りの身を和えます。
これは基本の辛子酢味噌です。本来、分葱を使いますが、これは仙台小ねぎです。ワカメも添えるのが一般的。
茹でた葱は何でも酢味噌に合いますので、適宜に使って下さい。
でも、ぬたは和えるのが常道。食べる直前に混ぜ合わせましょう。
和え物は和えてから時間が経つと具材から水分を引き出しますので、必ず和えるのは食べる直前で。
葱酢味噌は最初から和えて供します。
長葱もしんなりしないうちに食卓に運びます。
これ、はまりますよ。青魚は味噌と葱が出会いです。これを一口、温燗を一煽り。口福に浸れるでしょう。^^
最初、胡麻を擦って加えようかとも思ったのですが、味が複雑になり過ぎるのも無粋なので止めました。
さて、ひゃくさんから頂いたヒントにオリジナルな中華風ぬたを創製してみました。
韮ペーストを作った時の茹でた韮の余りも添えています。さて、出来具合は。。。
もちろん食べる時はよく合えてからですね。ビジュアル的にはジェノベーゼにつながるものがあります。
思ったほど韮の香りが感じられませんでした。少し生韮を刻んで入れた方が良さそうです。どうせ中華風にするのなら、ほんのりと五香粉を忍ばせ、唐辛子のピリッと感も加えた方が合いますね。これで大体、完成イメージはつかめました。
名残のサンマも12月上旬位まででしょう。今年の戻りサンマは水温が高いためか、脂も少し落ち気味ですが、ぬたにはかえって向いてます。魚の旬はその土地ごとで最も美味しく感じる時合です。旬の後半戦を名残と言いますが、まさに今が名残のサンマです。漁場が宮城の沖にあるうちに鮮度の良い生サンマをたっぷり楽しんでおきましょう。
これはおまけです。湯がいた青葱を食べやすく巻いて供しています。もちろん辛子酢味噌で頂きます。
実はこれ、熊本県の郷土料理で一文字(ひともじ)グルグルと申します。一文字とは分葱の別称ですね。
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