焼き鯖そうめんを作る
カテゴリー: 料理:麺類
この料理は焼き鯖そうめんと言いますが、そうめんのこのような食べ方はみちのくではあまり知られていませんね。そうめんは熱い夏にさっぱり食べるものとの認識が強いのですが、そうめん発祥地に近い滋賀県の長浜地域では、このような汁気がなく濃い味のそうめんが定着しています。(先日、天草地方でも魚の煮汁で素麺を食べるとTVで紹介されていました。)
琵琶湖の北東岸に位置する長浜は古くから京と北陸、関東を結ぶ交通の要所であり、秀吉が長浜城を築いたことでも有名ですね。この長浜、若狭湾からも近く、京にも運ばれた焼き鯖が古くから利用されていたものと思われます。これを煮付けてさらに保存性を高めたものに同じく保存食であり、調理の簡便なそうめんを組み合わせたのが焼き鯖そうめんとされています。農繁期の食事としても重宝されていたのでしょう。現代では専門店もあるくらいで日常的な惣菜から高級郷土料理に昇格しています。^^
先日、恩師の奥様より奈良県の三輪手延素麺を頂きました。木箱入りの蔵出古品です。
子供の頃、神戸に住んでいましたので、播州素麺の揖保乃糸はよく食べていました。今年亡くなった父親が大きな木箱で買ってくるものですから、夏の日曜の昼飯は大概そうめんで、ハッキリ言って食傷気味でした。三輪地方は日本の素麺発祥の地とされており、素麺にも気品が漂います。この素麺はJAS規格である麺の太さ1.3mmよりさらに細く、約1mmでした。
さっそく、焼き鯖そうめんを作るべく、生のサバを仕入れてきました。塩と紙で〆て生臭みを取り除きます。
例年ですと今頃は仙台湾の奥にもサバがやってきて、ジギングで釣れるのですが、今年は群れがはるか沖合を通過しているようです。後で煮付けますので、塩で味を付ける必要はありません。紙の吸水力も使って数時間脱水します。脱水中は冷蔵庫に保管することもお忘れなく。
前処理が終わったサバを1人前ずつに切って、焼き上げます。
このまま食べるのではありませんので、完全に芯まで火が通らなくても大丈夫です。表面に美味しそうな焼き色が付けばよいのです。
焼き上げたサバは醤油、酒、味醂、きび糖を併せた煮汁を水で薄めてから煮始めます。
生姜の薄切りも加えて香り付けもしています。小一時間は煮ますのでそれを見越して薄めた汁で煮るのです。最後に付け合せの万願寺唐辛子、焼き茄子、エリンギなどを炊き合わせます。長浜の焼き鯖そうめんのサバは、もっと煮込んで甘露煮のような状態になります。
サバが炊き上がりましたら、そうめんを茹で上げます。端を糸で縛ってからくっつかないように熱湯に振り入れます。
これは見栄えと食べやすさの工夫ですね。特に焼き鯖そうめんは汁けが少なく、固まりやすいので、こうすることで箸で取り易くもなります。
2分ほどで硬めに茹でたそうめんは直ちに冷水に放し、ぬめりを落として水気を切ります。
先ほどの焼き鯖の煮汁でさっと炊いて温まったらすぐに取り上げます。そうめんは伸びやすいので少し急いで事を進めます。
煮汁から取り上げたそうめんは熱いうちに麺の束を整えて、ここで初めて結束部を切り離します。
この時、プロは麺列にねじりを入れたり、流水のように美しく整えますが、もたもたしていますと伸びますので、さっさと中央部の下に箸を刺し入れ皿に盛り付けましょう。^^
先ほどの焼き鯖と添え物も合せ盛って完成です。天盛りの薬味は青葱の他、茗荷や大葉などお好きなものをどうぞ。
本場長浜では、これをご飯のおかずにして食べたりもするのでかなり濃いめの味付けです。どう食べるかによりますので、そうめんを煮汁に浸す前に味を調節して下さい。
ほっくりほぐれる煮付けた焼き鯖とそうめんを一緒に口に運びますとこの料理の真価に気付かれると思います。
粉山椒も使ってみましたが、これもまたベストマッチでした。
そうめんと言いますと、冷たいつけ汁ですするか、吸い物やお葛かけに入れるのが東日本の定番ですが、日本には様々な食べ方があるものです。沖縄のソーミンチャンプルーも今でこそ珍しくもありませんが、初めて沖縄で食べた時、なるほどねぇと感心したものです。これだけの情報化社会になっても、秘密のケンミンSHOWを見ていて驚くこともたびたび。やはり旅はいつの時代でも大切ですね。^^
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