庭のヨモギでフーチバージューシー
カテゴリー: 料理:山菜・筍・茸
これは蓬(ヨモギ)の若葉ですが、宮城ではモヅグサ(餅草)と呼ばれるようです。香り豊かな草餅(くさもち)は春を強く感じることが出来るので好きなんです。かつて、自分で草餅を作ろうとして図鑑片手に野原に採りに行ったのですが、似たような葉っぱが幾つかあり、どれがヨモギだか、さっぱりわかりませんでした。中には香りが強すぎて、口に入れるのを躊躇うようなヨモギもどきもありました。そこで、山野草専門店から正真正銘のヨモギを買い求め、庭の片隅に植えておいたのが上の写真のヨモギです。年々、増えていき野原に採り行く必要がなくなりました。^^
ヨモギと言いますと、いの一番に草餅が連想されますが、年配の方はお灸に使うもぐさ(艾)の原料であることも知っていると思います。さらに、私の第4の故郷、沖縄(滞在期間が4番目に長い県なので勝手そう呼んでいます。^^)ではヨモギを雑炊や汁物に入れて香りを楽しんでいます。正確に言いますと、沖縄のヨモギはみちのくのとは違って、西日本に自生するニシヨモギという種類です。 これらの料理を沖縄方言でフーチバージューシーと言います。フーチバーとはヨモギの葉っぱという意味ですが、ジューシーはJuicyではなく、たぶん、雑炊が変化したのではないでしょうか。今日は庭のヨモギで懐かしのフーチーバージューシーを作ってみます。
ヨモギの葉っぱは、このように切れ込みが深く、裏側が白色の産毛に覆われます。
野原で悩んだら葉っぱを揉んで臭いを嗅ぎましょう。不快な臭いに感じたら無理して摘まず、容認できる草を採集します。最近、同じヨモギでも場所や大きさによっても香りの強さが変わるのではないかと思い始めています。
フーチバージューシーには二つのタイプがあります。手前の炊き込みご飯タイプと奥の雑炊タイプです。
どちらがメジャーなのかと思って、例によってGoogleの画像検索をかけて200枚ほど流し見してみましたが、炊き込みご飯タイプが107に対し、雑炊タイプが92で、ほぼ同程度に作られているようです。でも、どちらが起源かといいますと、かつての米の貴重さやジューシーの発音などから考えて雑炊タイプが原型で、その後、炊き込みご飯に発展したのではないかと推測しています。現在、炊き込みタイプはコンビニのおにぎりやウチナースバとのセットとしても普及しつつあり、その存在感が益々高まっています。
いつものように前置きが長くなりましたが、まず、炊き込みご飯タイプのフーチバージューシーを作ります。
材料は米3合に対して、ヨモギの葉っぱザル一杯、豚バラ塊200g、人参半分、乾し椎茸3~4枚、ダシ昆布10cm、ダシパック1袋、調味料として濃口醤油と自然塩です。
まず、ダシ取り兼ねて豚バラ肉を茹でていきます。中心までしっかり熱を通して下さい。同時にダシパックと昆布で和風ダシも取っておきます。
これらのダシに戻した椎茸のダシも加えてご飯を炊きますから、贅沢なトリプルスープ炊きになるのです。^^
研いだ米に小さな短冊に切った豚バラ肉、千切りの人参、ダシ昆布、乾し椎茸を加えます。ヨモギは炊き上がりに加えます。
豚肉以外の材料は沖縄の家庭ごとに違うみたいですね。ヒジキを入れたりすることもあるそうです。
具材に続いて米と同量のトリプルスープを加えます。配合は豚:和風:椎茸が5:3:2位でしょうか。
炊き込むうちにさらに豚肉からも旨味が出ますので、和風ダシだけで炊いても構いませんが、豚肉は一旦茹でてから加えますので、豚ダシが取れてしまうのです。調味は醤油で好みの色を決めてから、塩味の不足を自然塩で補います。
ご飯が炊き上がったら、粗く刻んだヨモギをさっくり混ぜ合わせて、少し蒸らします。
最初から炊き込むと香りが吹っ飛んでしまいます。香りの楽しむご飯ですからね。
出来上がったフーチバージューシー炊き込みご飯タイプです。沖縄方言でクファジューシー(硬いジューシー)とも言います。
豚バラの短冊が入っている所が通常の炊き込みとの違いですね。豚バラの塊が手に入らなかったら、カレー用の角切り肉を刻んでも良いでしょう。このジューシーは豚の脂がご飯を優しく包み込んだ美味さが特徴です。ですから、食べた後には運動が必要ですね。^^
一方、こちらは雑炊タイプのフーチバージューシー。沖縄ではヤファラジューシーとかボロボロージューシーとも呼ばれます。
基本的な材料は同じですが、人参や昆布は入れないことが多いようです。それと味付けは味噌味がメジャーなようです。米から作る時には8倍量のスープで炊き、お冷やご飯で作る時は2~3倍量のスープを使います。やはり、炊き上がりにヨモギを加えた方が香りが楽しめます。最後に溶き卵を加えるところはヤマトンチューの鍋後の雑炊と同じですね。
この沖縄の伝統料理、フーチバージューシーは日本中の方々に広く受け入れられる味でしょう。ヨモギも日本中に自生していますから、まだ葉が柔らかい今のうちに試してみては如何でしょう。沖縄ではヤギ汁にもフーチバーを入れますので、きっと豚汁にも合うのではないでしょうか。
ヨモギの効能も実に多く、発癌抑制、血中コレステロール低下、胃腸強化に冷え性改善、さらにはダイエットにも効果があるそうです。古くからお灸で使われてきた薬草なのでなんとなく納得できますね。もっとヨモギを見直して料理にどんどん利用するべきでしょう。
【 補 足 】
庭のヨモギも本格的に利用すればすぐになくなります。やはり、野生のヨモギを見分ける目が必要と感じてヨモギについて少し勉強しました。キク科キク亜科ヨモギ属の植物は日本に30種類くらいありますが、ごく普通に見られて、比較的葉っぱの形状が似ているのは次の3種類でした。
・オオヨモギ Artemisia. montana (Nakai) Pamp
・ヨモギ Artemisia indica var. maximowiczii
・ニシヨモギ Artemisia indica Willd. var. orientalis
沖縄でフーチバージューシーに使われるニシヨモギは関東以西に分布します。従って、みちのくにはよく似たオオヨモギとヨモギが混在することになります。ですが、有り難いことにこの両者は仮托葉の有無で簡単に見分けられるのです。仮托葉とは、葉の基部に着生する2~3枚の小さな葉のことです。これを目印に野原で手当たり次第、ヨモギらしい草を10枝ほど取ってきました。
ヨモギの区別は葉の付け根の小さな葉、仮托葉の有無です(右2枚)。
左はたぶん、ヤマヨモギやエゾヨモギとも呼ばれるオオヨモギでしょう。右の2枚は葉の形が異なりますが、仮托葉が付いており、ヨモギと思われます。同じヨモギでも葉の形状にかなり変異があるようです。今まで自信を持って、これがヨモギだと決められなかったのは、この変異性が原因だったみたいです。
ただ、オオヨモギもヨモギもみちのくでは区別されることなく、モヅグサ(餅草)として利用されてきましたのでどっちでもよいのでした。臭いの強弱は成長段階や環境によるものだったのでしょう。加熱しますと、かなり香りも弱まりますので、今後は気にしないで摘んでくることが出来そうです。
ちょっと、待てよ。。冒頭の我が家に植えたヨモギの写真をよく見ると、仮托葉が付いてないではありませんか!! これってオオヨモギじゃないですか。山野草専門店でもみちのくでは両者を区別しないのでヨモギなんでしょうか。まぁ、味も香りもあまり差がないようですので、良しとしましょう。^^
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