岩手遍路と題しておきながら、進路を内陸部へ向けています。お遍路は本来、四国の辺地(海岸線)を巡り歩くものですが、今回の岩手遍路では陸前高田から海沿いに北上し、釜石から遠野へと西進します。目指す先は遠野市立博物館。でも、民話の世界に浸るためにやってきたのではないのです。
現在、遠野市立博物館では、文化財を救え!~東日本大震災と文化財レスキュー~と題して企画展示をやっているのです。
5月に石巻市雄勝へ支援に行った際(関連記事)、法務局の方々が、ドロドロになった文書を丁寧に復元している作業を見て感銘いたしました。この展示では文書だけではなく、生物標本の復元も扱っているとのことで、大変関心があったのです。瓦礫の下から回収した泥まみれの標本をどうやって復元するのでしょうか。貝殻や魚類標本でしたら、よく洗って乾燥または液浸すればよいのでしょうが、昆虫や剥製は手強いでしょうね。
これは実演ではなく、パネルですが、濡れた文書はキッチンペーパーに挟んで脱水されます。
確かグレードの高い古文書は、この後、フリーズドライで復元する様子をテレビでやってましたね。いずれにしましても濡れた文書は、カビとの戦いで一刻も早い処置が必要です。
期待した生物標本ですが、オオムラサキの復元標本が1点展示されていただけでした。
修復方法についても解説がなく、ちょっと、残念でした。でも、全国の博物館が三陸沿岸の文化財を救うため、懸命に努力されていることは大変有り難いことです。心より御礼申し上げます。
文化財レスキューの展示は予想より少なく、15分ほどで見終わってしまいました。少し、習俗展示の方にも巡ってみましょう。関心事はもちろん食文化です。^^
これはかつての遠野の食事です。左の膳が晴れの食事で右の膳が褻(け)の食事です。晴れはもちろん晴れの日の晴れで儀式全般も指すようです。けは日常と言うことになりますが、展示物を見ますと一汁二菜のようです。こんな料理が食べられるレストランが館内にあっても良さそうです。けの食事の方は、オプションで惣菜を追加できるようにすれば、良いのではないでしょうか。
こちらはかつて遠野で食べられていた魚です。樹脂製のイミテーションですが、大変よく出来ています。
内陸部なので鮮魚は冬場に運ばれ、タラやドンコ、ナメタガレイなど冬の魚が主体となります。イワシやカレイの干物などはもう少し気温が高い季節でも運べたのでしょう。遠野は漁港がある釜石や大船渡からは直線距離で40Kmほどですが、途中、険しい峠もあり輸送は楽ではなかったはずです。
食べ物の展示を見ていましたら、おなかが空いてきました。以前から行ってみたかったちょっと変わった蕎麦屋さんを訪ねます。
遠野の市街地から国道283号を少し釜石方面に戻ったところにあります。現代和風な佇まいで何屋さんかちょっと見当が付きませんね。
看板には遠野そばと中華そばの店とあり、バリバリの生蕎麦専門店ではありません。
でも、生蕎麦も中華そばも自家製麺で、特に生蕎麦は遠野産の玄そばを1分間に16回転以下で挽いているそうです。店名のばんがりとは思い切りということで、左下のキャラクターは店主の阿部勝司さんがモデルのカツシ君だそうですが、ご主人はこんなスネ夫みたいな感じではなく、もっと恰幅の良い優しそうなおじさんでした。^^
地元の方は中華そばとのセット物を頼まれるようです。中華そばも美味しそうですが、何だか今日は無性に暮坪かぶで蕎麦を食べたいのです。
この季節、蕎麦も暮坪かぶも一年で一番保存期間が長くなる時期で不利なことは承知なのですが、暮坪かぶも土中保存で辛みは失せていないとのことでしたのでお願いしました。暮坪はカブなのですが、蕎麦の薬味として使えるくらいの辛みがあります。
これが暮坪ざる800円になります。
山葵や葱は使わず、おろした暮坪かぶで頂きます。
暮坪かぶはやや粗めに擂り下ろしてあります。
大根のように水分がなく、ボソッとしています。一口食べると辛み大根と同じ鼻に来る刺激が広がります。久々に味わうこの辛み、以前の記憶が蘇ります。そうだ、3年前にもこの季節に来て、暮坪そばを食べたんだっけ。
副菜にはフキの煮物とキュウリとキャベツの浅漬け。
この辺が同じ田舎そばでも山形系とは違いますね。山形の漬け物山盛り、きくらげの浸し物も豪快で好きなんですが。
蕎麦は藪と田舎の中間くらいの色合いです。二八か外一くらいでしょうか。
間もなく新蕎麦という季節ですから、香りはあまり感じられません。
これこれ、これがやりたかったのです。
蕎麦に暮坪かぶをちょと乗せて、つゆを落ちないよう注意を払います。田舎蕎麦ですからつゆは薄め、たっぷり付けてすすり込みます。
残ったつゆに暮坪かぶを入れて、蕎麦湯を注いで頂きます。
構図を考えているうちに危うく溢れてしまうところでした。^^
さて、食後は少し花巻方面に走ったところにあります道の駅風の丘に立ち寄ります。大きなダウンウインド・マグナス型風車が目印です。
この辺りは寒風と呼ばれるくらい風の強い地域とのこと。駅名を寒風の丘しますと、冬は誰も来なくなりそうなので風の丘にしたそうです。風の丘ですとナウシカにも通じるようなメルヘンチックになりますね。
この後、旅も続くので見るだけのつもりでしたが、ちょっと気になるコーナーを発見。
全ての酪農商品に多田克彦と書いてあります。誰だろう。。。多田克彦って。花畑牧場の田中義剛みたいなタレントでしょうか。調べてみますと、(有)多田自然農場を経営する社長のことで、牧場経営だけではなく、アイスクリームやチーズケーキなどの洋菓子や豆腐や納豆などの加工食品の製造販売もやっているその世界では有名な人物らしいです。詳しくは多田自然農場のHPをご覧下さい。
とても気になったので、あまり甘くなさそうなこれを試してみることに。
チーズプリン(180円)ですって。こだわり自然農場のチーズプリン。相当期待できそうです。
あらま、これは凄い。レアチーズケーキとプリンの中間体ですね。
もう少し甘さを控えた方が上品かなとも思いますが、私は平均的な甘味嗜好の持ち主ではありませんから、これでいいのでしょう。プリンの滑らかさとチーズケーキの濃厚なモッタリ感の両方が楽しめます。
岩手遍路の二番目の目的地である遠野で食べた暮坪そば、実はこれが始めてではありません。3年前にも釜石から遠野経由で盛岡に旅したことがありましたが、やはり、暮坪かぶでざるそばを食べています(関連記事)。その時、暮坪の魅力に憑かれ自分でも栽培してみたく、種を購入したのでした。
この時、一緒に旅した友人は、私よりかなり後になって菜園を始めましたが、几帳面な性格で雑草一本も残さず丁寧に抜き取り、庭園のような畑を作っています。この暮坪かぶの種を二人で分け合って栽培に挑戦したのでした。ですが、仙台平野で育てた暮坪かぶは結局、特有の辛味が出せませんでした。このことは次の記事に関連しますので覚えておいて下さい。
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