先日、岩手県の釜石に用事があり、気仙沼から国道45号を車で北上しました。唐桑から県境を越えて岩手に入りますと、ほどなく、気仙川の河口部に行き着きますが、過去の記憶にある風景とのあまりの違いに声も出ませんでした。ここ陸前高田の被災状況はテレビで何度も伝えられ、だいたいは想像出来ていたのですが、現実ははるかに悲惨でした。写真の壊れたユースホステルのそばにすっかり有名になった一本松が見えますね。
地元では奇跡的に残ったこの老松を復興のシンボルとして、一本松プロジェクトを展開しています。樹齢200年以上の7万本の松林と綺麗な砂浜が2Kmも続いた高田松原を再生させるために頑張っているのです。でも、7万本の松の中でたった1本が残るなんて、何か神懸かり的なものを感じますね。この強い松の遺伝子を受け継いだ苗を育てて徐々に植林していく計画です。
気仙川に架かる仮設橋を渡り、市街地があったエリアに進みますと、すっかり遠くまで見渡せるようになってました。
瓦礫は何カ所かに集められ、巨大な山となってます。あまり高く摘みますと、中の圧力で自然発火するそうです。先日、気仙沼で瓦礫の山の火事騒ぎがあり、現在、24時間体制でパトロールを行っています。国土地理院の浸水範囲概況図を見ますと、陸前高田では津波が気仙川を6Km近く遡ったことがわかります。
上はアパートのようですが、4階まで津波が通り抜けています。下は海と貝のミュージアムですが、やはり内部は大破したようです。
以前はここを通るたび、この洒落た博物館が高田松原を背景に一際目立ったのでした。貝殻の展示だけではなく、コンパクトな水族館としても人気がありました。回収された展示物は文化財レスキューによって復元作業が続けられています。
陸前高田のある広田湾を過ぎると、次は宮城の雄勝湾のように細長い大船渡湾です。やはり湾奥部の被害は甚大でした。
同じリアス式海岸でも、岩手は宮城より山が急峻で平坦部も少ないため、全般的に浸水区域もに小さいのですが、陸前高田と大船渡だけは群を抜いています。大船渡駅近くの地元スーパーマイヤは建物は残りましたが、果たしてここで営業を再開できるのでしょうか。
こちらは大船渡魚市場。上屋の2階まで津波に襲われたようですが、建物はしっかり残っています。
地盤沈下もあったようですが、気仙沼魚市場より早い6月初頭には水揚げが始まりました。水揚げされる魚の大半は宮城の生簀から逃げ出したギンザケで毎日数トン、定置網が復旧しますと十数トンの水揚げが続いております。逃げ出したギンザケは無主物ではなく、遺失物だと思うのですが・・・。ギンザケ養殖業者も紛失届けを出している訳ではありませんが、逸走した家畜は遺失物法の対象となるのです。お互い被災者ですので、事を荒立てても仕方がありませんが、海に生きる者同士ですので八戸のような感謝の表明があってよいと思うのです。
南三陸町以北の国道45号を走っていますと、このような標示をよく目にします。
震災前は気が付かなかったのですが、ある一定の高度になるとこのような津波浸水想定区域から外れる案内があり、また、下がるとここまでがここからという標示になります。宮城県内で注意深く見てみたのですが、今回の大津波の浸水範囲もだいたいこの想定区域と一致していました。
しばらく走って、釜石の魚市場に着きましたら、巨大な貨物船が陸に乗り上げたままになっていました。
釜石魚市場でも地盤沈下による冠水が見られました。現在、ここは使われておらず、1Kmほど湾口よりに離れた新浜町に第2魚市場を応急整備して、8月4日から水揚げが始まりました。3年前、ちょうど同じ頃にここを訪れた時(関係記事)には、サバやスルメイカが何トンも水揚げされていましたが、今年は漁船や定置網の復旧もまだまだで1/10程とのこと。
釜石の楽しみと言えば、呑兵衛横丁。これは3年前に訪れた時の写真です。
同じサイズの電照看板が整然と並んでいますが、どのお店も個性的でした。その時の記事はこちらです。
その跡地です。なんと、お店の下はドブだったのです。
まさにドブ板横丁だったのですね。また、ひとつ、昭和のノスタルジーが消え去りました。
昭和のノスタルジーと言えば、橋上市場。2003(H15)年に45年の歴史を閉じて、釜石駅前にサン・フィッシュ釜石としてオープンしました。
以前のように水産物を主体とした店舗が入っていますが、かつての雰囲気とはまるで異なります。学生時代に何度か訪れ、牛乳瓶に詰まった生ウニを買うのが楽しみでした。もちろん、今でも買えますし、それを食堂に持ち込んで新鮮なウニ丼を楽しむことも出来ます。でも、今日のお昼は訳あって、海鮮ではなく中華なのです。
釜石の隣町、大槌町で人気の中華料理店が津波で流され、ご主人も負傷したのですが、ファンの期待に応えて釜石で復活を果たしたのでした。
そのお店は鳳蘭亭(ほうらんてい)と申しまして、釜石駅から国道238号を西へ約5Km走った野田町にあります。国道に面した喫茶店風なお店なのですぐにわかりました。このお店ちょっと変わってまして、勝手に中に入れません。女性の店員さんに内ドアの外で待つように指示されました。でも、中には空席がいくらでもあるのです。
20分ほど待ってやっと店内に入れてもらいますと、正面の壁に値段の書かれていない献立表がど~んと目に入ります。
でも、テーブルにはちゃんと普通のメニューがありましたのでホッとします。色々気になる献立もあるのですが、初めてのお店なのでお店の看板メニュー、来々麺にしましょう。でも、キム飯は見当が付くのですが、醤肉飯ってなんだろう。あ、それと目立たない小さな黒板に冷やし系の麺類が3品ほどありました。
席に着いてから供されるまでの時間は普通でした。これが来々麺690円。味噌ラーメン風に擂鉢で供されます。
豚の薄切りにキャベツ、もやし、豆腐を炒め合わせた具が乗せられているのですが、粒の揃った上質なナメコが入るのが特徴的です。豆板醤の赤もよいアクセントになってます。味付けはやや甘みが強いのですが、スープと混ざっていくうちに複雑に味変します。スープは最初、ほんのりと魚の香りを感じました。
麺は細打ちの多加水麺で少し縮れがあります。麺にはそれほどこだわりを感じません。
具にナメコが入っているので、食べ進むうちにスープにとろみがついて、麺との絡みも良好です。ボリュームも見た目以上にあり、満足感は得られます。
人気のあるお店だけに、到着したのが平日の12時ちょうどだったにも関わらず、駐車場はほぼ満車でした。最初に30分以上かかりますがよいですかと先制パンチ、それでも折角来たのだからのんびり待ちましたが、食べ終わって店を出たのがほとんど13時でしたので、お急ぎの方は昼時を外された方が賢明でしょう。
鳳蘭亭さんの接客が大槌町時代からこのようだったのか知る由もありません。外ドアと内ドアの間には椅子も用意されているのですが、中には待ちきれず、怒って帰って行く方もおりました。店内は決して満席ではないだけに不思議です。おそらくランチタイムには、1回戦しかお客をこなしていないと思います。もしかしますと、負傷されたご主人がまだ完全には回復しておらず、スピーディに調理をこなすことが出来ないため入店制限をしているのかも知れません。
鳳蘭亭
・所在地 :岩手県釜石市野田町2-14-29
・電 話 :0193-25-2030
・営業時間 :11:30~14:00/17:30~21:00
(ただし、スープがなくなり次第終了)
・定休日 :月曜日
・駐車場 :あり
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