大根おろしをたっぷり使ったみぞれ鍋は溶け出した雪のようで、私にとっては早春のイメージです。今日はちょっと贅沢にキチジとマダラを使ったみぞれ鍋なんですが、ダシもこれらの魚から取っています。それともう一つのトピックスはこの大根おろし、ただの大根おろしではありません。よく見ますと、ちょっと粒が粗いでしょ。そうなんです、秘密兵器でおろしました。^^
じゃ~ん、これが秘密兵器の鬼おろしです。以前から気になっていた料理器具です。
北関東地方の郷土料理でしもつかれというのがあります。新巻鮭の頭、野菜屑、大豆を大根おろしと酒粕で煮た余り物料理のような惣菜なのですが、これに入れる大根おろしをこの鬼おろしで作るのです。
見て下さい、この凶暴な歯を。まるで鮫の歯のように次から次にと生えてくる感じですね。これで噛まれたら痛いだろうな・・・って、噛むわきゃないべ。^^
昔ながらの竹細工なのですが、実にしっかり作ってあります。これで鬼もおろせるという意味ではなく、普通のおろし板より剛胆で険しいから鬼としたのでしょう。鬼ヤンマ、鬼オコゼ、鬼ヒトデなどと同じ意味合いなんだと思います。
今日のメインは大根と魚。セリと餅もよく合いますよ。この他に白菜やネギ、豆腐も用意しています。
大根は毎年12月初冬に畑に囲っておくのですが(関連記事)、まだまだ、シャキッとしてしており、春までは十分持ちます。みぞれ鍋にはだいたい2本は使います。
鬼おろしで大根を下ろしていくのですが、けっこう力が要りますね。あまり押し付けないで滑るようにシャッシャッとおろすのが正しいのかも知れません。
大根が小さくなると指を痛めそうで危険です。最後の欠片は包丁で叩き潰して使いました。大根には厚切りポテトチップスのような波形ができます。なぜか痛そうですね。^^
続いて、もう一つの主役、キチジとマダラです。キチジは大晦日の年取り魚に買った一部を冷凍しておきました。
三枚に下ろして、フィレーとカマは鍋の具とし、中落ちや頭はダシに使います。キチジの鱗は丹念に取り去りましょう。かなり大きいので残っていますと喉に貼り付き、せっかくのご馳走が興醒めします。
中落ちと頭を魚焼きコンロで焼くのですが、極力焦げないように超弱火で時間をかけて焼き上げます。
ダシに焦げ臭みが移りますので、焦げた所は取り除きます。オーブンでじっくり焼いてもよいのですが、かなり蒸気が出ますので、途中で何度か換気する必要があります。
焼いた中落ちと頭は酒を20%位加えたお湯でダシ昆布とともに煮ていきます。
決してグラグラ沸騰させずにコトコトと20分ほど炊けばOKです。重ねたガーゼで漉してから使います。
魚は一口大に切っておきます。しゃぶしゃぶではないので、少し厚めです。
セリは4~5cmに、柚子は皮を千切りにして最後に散らします。
ダシに大根おろしを加え、塩で味を整えます。少し強めでちょうどよいくらいにです。醤油は白醤油なら少々使えますが、通常の醤油ではみぞれ鍋ではなく、泥鍋になってしまいますね。^^
魚の下には、白菜、ネギ、豆腐も沈んでいます。魚を沈めますと回収する時に身が崩れますので、水面で監視しながら加熱します。^^
キチジとマダラのダシががっつり利いたみぞれが美味しいのです。これで北の魚の女王キチジと旬のマダラが炊かれるのですからまずいはずがありません。
普通の大根おろしでは、この強いダシに対抗できないでしょう。煮込んでも、大根の粒が残って、それにも旨味が染みているのです。これは、鬼おろしの成せる技ですね。
今日は贅沢ついでに、ドメーヌ・ビローシモンのシャブリも空けてしまいました。
ワインはほとんど赤しか飲まない私ですが、みぞれ鍋には無理がありますね。ビローシモンは辛口で酸味もやや強め。ふんわりとしてキチジの脂に溢れた鍋にはこの辛口がピッタリでした。
初めて使った鬼おろし、面白い道具ですね。敢えて粗く摺り下ろすのは、やはり美味しいからなんですね。この粗い大根おろしを使った煮物のバリエーションを楽しんでみたくなりました。北関東のしもつかれが新巻鮭の頭なら、こっちはちょっと伊達に牡蛎や仙台牛でやってみたくなります。美味しくできましたら、ご報告しますね。なお、この鬼おろしにご関心を持たれた方はこちらをご覧下さいませ。
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