旧友山女魚(ヤマメ)との再会
カテゴリー: 料理:釣り魚
海辺で悲惨な光景を目にしながら働いていますと、自由な時間には森やせせらぎを見て過ごしたくなります。先日、大川せせらぎ公園をご紹介しましたが(関係記事)、清流を見ているうちにかつてのめり込んでいた渓流釣りの記憶がもりもりと湧き上がってきました。ここ10数年は仙台湾での海釣りばかりやっていましたが、それ以前はバリバリの渓流釣り師だったのです。
現在の海の状況ですが、海底の瓦礫回収は着々と行われているものの、細かな破片までは引き揚げることが出来ません。浅場の海底にはまだまだ破片やゴミが堆積しており、安心して海釣りを楽しめる環境にはありません。それに、未だに行方不明の方々が本県だけでも5000人ほどおり、今でも週に4~5体のご遺体が回収されております。さらに、これからのシーズンは南風が卓越し、常磐沖を北上する黒潮の分流が仙台湾にも入り込んできます。これらのことから、とても海釣りをする気にはなれず、しばらく自粛しようと思っていたところでした。
このような事情もあり、しばらくはヤマメを主体とした渓流釣りで癒されたいと思います。三陸沿岸は山が迫っていますので海から数キロも遡れば、もう渓流の世界が展開します。上の写真の流れは気仙沼大川のとある支流です。大川に限らず、 ほとんどの河川には内水面漁業権が設定され、遊漁券が必要となりますが、この支流のように漁業権が張られていない河川も存在します。先週末、寮でもう1泊し、早朝、渓流釣りを楽しんでから帰宅することにしました。
物置の片隅に眠っていたかつての愛竿を探し出し、久しぶりに繊細な渓流用の仕掛けを作りました。長いブランクの間にこのような細かな作業がすっかり辛くなっていました。加齢による目のピント調節力の低下ですね。いわゆる老眼ですね。^^
私の仕掛けは天井糸1mに道糸O.6号を1~1.5m。マス針6号の上20cmにカミツブシ錘3号~BBを水勢によって使い分けます。水面の30cmほど上に蛍光色の毛糸の房が来るように調節して目印とします。このところの雨で河川水量は申し分ないのですが、やや濁りが強くなっています。かつての経験からしますと、カフェラッテのような濁りだと釣りにならないのですが、薄濁りは渓流魚の警戒心も弱まり、最高のコンディションとなることが多いのです。そして、濁りの入った時の特効餌はキジ(ミミズ)なのです。よく使われるカゲロウやトビケラの幼虫である川虫より、濁りが入りますと視認性の良いキジに軍配があがります。さて、緊張の第1投、当たりが取れるでしょうか。
久しぶりの渓流で石につまづいたり、仕掛けを木々に絡ませたり、最初はドジの連続。目印が安定して水面上を走るまでにずいぶん時間が掛かりました。10投ほど流して掛かってきたのがこの魚です。
これはアブラハヤと言います。なんでも貪欲に食らいついてくる魚で渓流釣りの外道の代表選手ですね。ハヤ(ウグイ)はよく食べられますが、これを食べる人はあまりいません。
その後、何尾かのアブラハヤに遊んでもらった後にそれまでとまるで違う鋭い当たりが竿を引き込みます。やりました、15年ぶりのヤマメとの再会です。
昔の恋人に出会ったような感動すら覚えます。でも、すっかり変わってしまったのはこちらだけ。ヤマメは以前のままの美しい容姿でいてくれました。ヤマメ釣りの魅力は狙った流れに仕掛けを上手く乗せて、ここぞと予測した位置で当たりが出た時の喜びにあります。一投一投が仮説検証の作業なのです。それに何と言っても、このヤマメの美しさ、山女魚と書くのも頷けます。淡いピンクのメタリックボディーに、青みがかったパーマークの配列が実に魅惑的です。ただ、このヤマメは15cm程度の小型魚です。まだまだ、竿を満月に絞り込むサイズではありません。
それからもポツポツとチビヤマメが釣れてきましたが、そろそろ、納竿かなと思った矢先、強い引きで胸を高鳴らせたのがこのヤマメ。
22cmほどですが、肉付きも良く均整のとれた体格のヤマメです。やはり、ヤマメはサケの仲間であるサクラマスの河川型だけあって精悍な顔つきです。
本当に美しい。河原にしゃがみ込んで、しばし見惚れてしまいます。
今日はヤマメの姿を拝むのが目的だったので、ウエストクリール(渓流用ビク)は持って来ませんでした。でも、このヤマメだけはどうしてもキープしたくて、急いで車に戻り、コンビニで氷を買って冷やしながら帰路に付きます。
帰宅後、さっそく、久々のヤマメの調理にかかります。美味しく頂くために、まずは畑と相談。
葉菜類やハーブ達も出揃ってきましたので、緑たっぷりの料理に仕上げたいと思います。ちょっと変わったハーブパン粉焼きをご紹介しましょう
。
鱗と内臓を除き、綺麗に掃除したヤマメは、軽く塩をしてフライパンでさっと焦げ目を付けます。
後からオーブンで焼きますので、皮目に香ばしさが付けば良いのです。皮が剥がれないように慎重に扱いましょう。
パン粉に微塵切りにしたイタリアンパセリを混ぜ込んでからマヨネーズ少々で練り上げてしっとりとさせます。これをヤマメの胴部に貼り付けます。180℃位に熱したオーブンで15分ほどで焼き上げます。
通常のパン粉焼きですと、振り掛ける程度なのですが、これは衣のようにしっかりと覆います。ヤマメの腹にはタイムの枝を3本ほど入れ、周りにローズマリーを散らします。ローズマリーは香りが強いので腹に入れますとこの香りが支配的になってしまいます。マヨネーズの油分がヤマメをしっとりと焼いてくれます。
緑たっぷりの夏の渓流をイメージして盛り付けました。
フレッシュサラダは朝摘みのサニーレタス、サンチュ、ルッコラ、赤軸ホウレンソウに新玉葱のスライスを加えています。ドレッシング変わりにバジリコペーストを垂らしています。バジリコももう利用できる大きさに育っています。バジリコペーストはジェノベーゼに使うペスト(ピストゥ)ではなく、擂り鉢で塩とニンニクを擂り合わせ、微塵切りのバジリコを加えてさらに擂り、オリーブオイルで伸ばしたものです。
ヤマメのパン粉衣にもバジリコペーストをパーマークのイメージで垂らします。
あまり、使いますと塩辛くなりますので、要注意です。
コントルノ替わりにサフランのリゾットを添えました。
緑に黄金色が輝いて、野生の森に輝く宮殿がそびえ立っている感じです。^^
このサフラン、昨年の11月上旬に摘み取って乾燥させていました。
ご存じのようにスパイスのサフランは真っ赤な雄しべを一つ一つ摘んで乾したものです。一つの花から3本(根元は繋がっている)しか取れず、乾燥させると糸屑のようになりますので、大変な貴重なスパイスです。1g作るのに100本位必要です。現在、サフラン1gで1000円位しますが、かつては金と同じく値段だったとか。乾燥サフランを10本ほどぬるま湯に浸しておきますと黄金色の色素が抽出されます。
サフラン抽出液で色付けしたスープで生米を炊いていきます。炊くと言うより茹でるか煮るですね。具としてエビ、イカ、アサリを軽く塩茹でし、仕上げ間際に加えます。
粘りが出やすい日本の米でリゾットを作るのには、少し工夫が要ります。裏技も種々あるのですが、それはまたの機会にご紹介します。
ほぼ15年ぶりの渓流釣りリバイバルですが、昔取った杵柄ならぬ昔振った渓流竿で体は何とか覚えていてくれたようです。まだ、風景を楽しみながら渓流を辿るほどのゆとりはありませんが、とりあえず、餌を一定の水深に流す技術は回復しました。水の流れを読んで魚のいそうなポイントに仕掛けを流し、全神経を目印の動きに集中させる緊張感はよいものです。釣れるに越したことはないのですが、緑や水の流れを眺め、流れの和音を聞き入るのもまた渓流釣りの楽しみです。これから、夏場はクモの巣も多くなり、アブも飛び回るのですが、渓流魚の魚体もどんどん大きくなり、終漁間際の晩夏には尺近い大物とのやりとりも楽しめます。再燃してしまった渓流釣り、海が落ち着くまでもう少し腕を磨いてみたいと思います。
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