本日はお持て成しの日です。朝早く起きて、畑で野菜を摘み取り、冷めても良い料理から作り始め、テーブルセッティングが完了したのが、ゲストをお迎えする10分前。毎回ですが、想定以上に時間がかかってしまいます。この日は晴れて暑くなる予想、ランチタイムから始めてゆっくりと休日の午後を楽しめそうです。
料理の仕上げをしている間にゲストにはデッキの木陰で食前酒代わりのビールを楽しんで頂きます。
冷やしたハイネッケンや青島ビールなどの小瓶を並べてお好きなものをセルフで呑んで頂きます。
突出し3点セットはトルティージャ、小エビのアヒージョ、スペイン風の酢だこです。
トルティージャは一口サイズに切ってあります。アヒージョは小エビをニンニク風味のオリーブオイルで炒めました。酢だこもニンニクを利かせた甘酢に黒オリーブとともに漬けています。
本日のゲストは大名マークさんご夫妻です。震災前に完成したウッドデッキを使って頂く初めてのお客様です。
大名マークさん達のお住まいは津波によって大規模半壊しました。床上浸水で泥が部屋中に入り込み、専門の業者によるクリーニングが必要だそです。それに、お二人の車が2台とも流されたとのこと。震災以来、なかなかお会いできず、何もしてあげられなかったので、せめてものご慰労の宴です。今日は地震も津波も忘れて大いに語り合いましょう。
室内のテーブルに着きまして、いよいよ開宴です。まず、インサラータは自家栽培野菜にゴルゴンゾーラのドレッシングを添えました。
材料の野菜はプチトマト以外はすべて朝、畑で摘み取っています。赤軸ホウレンソウ、壬生菜、サニーレタス、掻きちしゃ(サンチュ)、ルッコラにサヤエンドウなどを盛り込みました。ゴルゴンゾーラのドレッシングはかなり癖がありますが、気に入って頂けたようでホッとしました。
ゴルゴンゾーラは刺激的な味わいが癖になるイタリアのブルーチーズです。
辛みと酸味と塩辛さでワインがどんどん進みます。これはドレッシング向きの溶けやすいドルチェタイプですが、辛味の強いピカンテの方が好みです。
ここで大名マークさんがお持ち下さった純米吟醸栗駒山を開封。
純米ですが爽やかな甘みが料理とよく合ってくれます。奥さまはワイン党なので、こちらは男二人で頂きました。^^
日本酒に最適な肴も用意しております。今年は3回目の漬け込みの身欠きにしんの山椒漬けです。 会津を代表する郷土料理ですね。
毎年これを漬けるのを楽しみにしており、木の芽が柔らかいうちは何度も仕込みます。作り方はこちらにありますが、身欠き鰊の脂と山椒の香りが効いた酢醤油が口の中で溶け合って、これに日本酒が追いかけると、もう、日本人に生まれて良かったなぁと実感してしまいます。^^
これはちょっと贅沢に山椒漬けをさっと炙っています。
味醂干しのような甘味は一切なく、すっきりと酸味が効いた焼き物ですが、滴る脂が酸味を円やかに包みます。
ここで、震災直後にはずいぶんお世話になったホットプレートを持ち出して、お相手をさせて頂きながらの調理に移ります。
筍と山芋のガーリックオイル炒めバルサミコ醤油(右)と里芋の焼きコロッケ(左)です。前者はこのあと、バルサミコ醤油をジャーッとかけて仕上げます。後者は本日初めての試みで、茹でて潰した里芋の中に味醂醤油で味付けした鶏ひき肉を射込み、平らに均してじっくり焼き上げたものです。中の鶏にしっかり味が付いていますので、そのまま頂きます。ねっとりとした里芋がジャガイモとはまるで違うコロッケになりました。揚げていませんが、表面はカリッカリ。
こちらは朝からじっくり煮込んだトムカーガイです。タイ式鶏のココナッツミルク煮ですね。
菜園で栽培しているレモングラスをたっぷり入れて風味を移しました。先月、頂いた筍も水煮にしてとってありましたのでたっぷり使います。沈んでいますが、鶏の手羽元も1時間以上煮込んでいますので、骨がスッと抜けるくらいの柔らかさになってます。
これはご存じチャプチェです。宴の途中でささっと作りました。
細切り牛肉だけはニンニク味醂醤油で下味を付けておきました。それと調味液として、醤油、酒、コチュジャン、オイスターソースを混合したもので仕上げます。
これを摘み立てのサンチュで巻きながら頂きます。
このサンチュは実に丈夫で、葉を掻き取っても次々出てきます。本当に追われるように食べています。掻きちしゃという和名で江戸時代より利用されてきた葉菜なのですが、韓国ブームでサンチュとしてリバイバルしたのは皮肉です。
滅多に作らないドルチェですが、即席ティラミスです。後方は前出のゴルゴンゾーラ。
最近、マスカルポーネがスーパーでも買えるようになりましたので、スポンジにエスプレッソを染ませ、その上に盛り込み、ココアを振っています。3分で出来る甘味を抑えた大人のティラミスです。
すっかり、話に夢中になり、辺りは夕闇となりました。それでも電燈を点けずに宵闇を楽しみます。庭の緑が消えて漆黒となり、空に星が輝き始めるまでの移ろいを楽しむのが大好きなので、大名マークさんご夫妻にも押し付けてしまいました。大名マークさんは何か落ち着かないようで、そわそわしていましたね。申し訳ありませんでした。これに懲りずに、花火の時にでもまたいらして下さい。この翌日、私は三陸沿岸の被災地に戻りました。実はお二人にはその壮行もして頂いたのでした。楽しいひと時、本当にありがとうございました。
コメントの投稿