焼きナマコってご存じですか?
カテゴリー: 料理:甲殻・軟体・ほや
先日、志津川の友人から発泡スチロールの小箱が送られてきました。開けてみるとびっくり、海水に浸ったサツマイモのような物体が収められていました。なんと、それはナマコでした。それも一番値の良い赤ナマコです。少し沈静化したとは言え、近年の中国輸出ブームでナマコもすっかり高級品となりましたので、きっとお歳暮代わりなんでしょう。^^
ナマコも最近の日本人はほとんど食べなくなり、二束三文だったのですが、中国の富裕層の増加と北京オリンピック特需で消費が伸びて、品質が良いとされる日本産に目を向けたようです。それに、日本の食品は安全なので、中国の富裕層では人気があるそうです。危険な食品を輸出して、安全な日本の食品を輸入するというところが、少し腑に落ちませんが、浜はナマコのお陰でにわかに活気付いています。
届いた赤ナマコの背側と腹側です。赤ナマコは最もポピュラーなマナマコの一種で、他に青ナマコと黒ナマコの3型があるとされてきましたが、東北大学の遺伝学的研究でどうやら別種であるらしいことがわかりました。
市場などでよく売られているのは背側が緑褐色の青ナマコで、全身真っ黒な黒ナマコも海ではよく見かけますが、日本人はあまり食べませんし、流通に乗ることもあまりありません。味覚や柔らかさはそれぞれにあまり差がないとされますが、黒は見かけが悪いので人気がないのでしょう。ところが、中国ではこの黒も乾燥海鼠(煎海鼠)として珍重されます。
ナマコはウニやヒトデと同じ棘皮動物ですが、硬い殻はなく、体型も細長くなっています。でも、腹側にはウニやヒトデと同じ吸盤の付いた細い足(管足)があり、岩に貼り付くことができます。送られてきた発泡ケースの底にしっかりと付着していましたので、転げ回らずに輸送されたのでしょう。それを見越して海水と一緒に送ってきた友人はさすがですね。
さて、久々のナマコです。どうやっていただきましょうか。とりあえず、口と肛門側の両端を切り落とします。すると、まん丸に縮まりました。
生でポン酢は外せないし、焼きナマコも美味しいし・・・・。 焼きナマコは浜料理ですが、意外な美味しさですよ。
腹側を開いて、内蔵を取り出します。黒いヒモは泥の詰まった腸ですが、これがかの有名なこのわたです。
ナマコのことを古語でこと呼び、この腸(わた)なのでこのわたなんです。丁寧に泥をしごき取って中を良く洗い、塩辛にした物が日本の三大珍味であるこのわたの製品となります。産卵期が近い初夏ですと、房状の卵巣や精巣が発達していて、これもまた、珍味なのです。これはこのこ(子)と呼ばれ、ヒモにかけて干し、三味線のバチのような形をしたクチコも珍味中の珍味ですね。
中を洗ったナマコは塩を塗し、容器に入れてよく振ります。
こうしますと臭みが消え、多少、柔らかくなります。ただ、表皮が擦り切れるので見てくれは悪くなりますが・・・。あと、茶ぶりと言って煮出したほうじ茶に付ける方法もあります。
前処理が終わったナマコは酢の物用に薄く輪切りにしていきます。半分は焼きナマコ用に残します。
歯に自信があれば、厚く切ってもよいのですが、それでも7~8mm位にしておいた方が無難でしょう。
残りの半分は魚焼きコンロで10分ほど焼きます。両火なら10分、片火なら5分ずつ両面を焼きます。
ナマコは90%以上が水分ですので、どんどん水が出て縮みます。頃合いを見て味醂醤油を塗り、さっと炙れば出来上がりです。
今日はナマコ三昧の晩酌です。ナマコのおろしポン酢と焼きナマコに生のこのわたも添えました。
日本人は昔からナマコを生で食べることがほとんどだったので、現代人の食生活から遠のいたのかも知れません。このように煮たり焼いたりしてして食べる習慣がもっと広まっていれば、現代の食卓にももっと登場していたのではないでしょうか。
ご存じのように、中国や台湾では、日本から輸入した乾燥海鼠(いりこ)を水で数日かけて戻し、炒め物などにして食べています。紅焼海鮮(ホンシャオハイシェン)という料理が特に有名で、以前、二度ほど賞味したことがありましたが、初めての時はナマコがプルンプルンに軟らかく、生のナマコの食感とあまりにかけ離れているのにたまげたものでした。
ほんのちょっぴりですが、このわたです。塩辛ではなく、生のまんまですが、同じ味がします。
初夏のこのこ(卵巣・精巣)も生で食べると美味しいのですが、この時期はまだ萎縮しています。
定番のナマコ酢です。大根おろしを添えて、ポン酢で頂きます。
これが日本人のナマコの食べ方なんですが、この美味しさを知らない人が多くなりました。コリコリとした歯触りと爽やかな磯の香りは日本酒との相性が最高です。
さて、これが本日のメインであります焼きナマコです。一見、生と変わりませんが食感はまるで異なります。
何と言いますか、タコの頭(胴)のような、しなしな噛み応えになります。ナマコの七変化には驚かされますね。ナマコを食べ慣れた漁師さんが焚き火にくべて食べたら美味しかったところから伝わってきた料理だそうです。
現在、ナマコ輸出ブームでナマコの価格も高騰し、乱獲や密漁も横行している状況です。ナマコは乾燥海鼠に加工しますと日本からの輸出時で40,000円/Kg、中国や台湾の市販価格が70,000円/Kgですから、目の色も変わります。確かに日本人が見放していた食材ですが、こんなに美味しいのです。中国人が大枚を叩いてまで欲しがるほどですから、少し見直して日本でも食べようじゃありませんか。ただでさえ、食料自給率が低いと問題になっている昨今です。自国の沿岸の海の幸はいつまでも持続的に利用していきたいですね。
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