武田さんちの激旨サバ(前編)
カテゴリー: 料理:買い魚
昨年、牡鹿半島のクロソイ造りの名人、武田さんをご紹介しました(関連記事)。武田さんは配合餌料を使わず、定置網に入るカタクチイワシなどの新鮮な小魚を与え、医薬品も全く使用しない養殖魚づくりに挑戦しています。歩留まりも悪く、コストもかかるので、出荷価格はどうしても他の生産者より高くなってしまいます。従って、現在の不況の日本では売れ行きが心配されるのですが、天然魚以上というその品質が本物志向のホテルのシェフや料理店の親方に認められ、愛顧されています。薄利多売の大衆居酒屋向け商品とは違った生産、経営戦略を取っているわけです。
その武田さんが、「試験的にマサバを畜養してみたので、味を見てくれないか」とクロソイの出荷のついでに届けてくれました。正直に申しますと、クロソイと同じようにいくら天然の小魚で育てても、高度に泳ぎ回るマサバが生簀の中では本来の味にはならないだろうと思いました。ただ、自分で食べて美味しいと思った魚しか作らない武田さんが、あえて食べてみろと持ってきたのですから、きっと自信があるはずです。
マサバの鮮度落ちの速さは、畜養物でも天然物でも同じです。そこは、さすが武田さん、ちゃんと首を折って、神経を断つと同時に血抜き処理もしています(鯖折り)。これで、肉の身割れや内出血が防げ、生臭さも和らぎます。それでは、武田さん自慢の畜養サバにトライしてみましょう。
包丁を入れる前にじっくり観察。綺麗な目をしています。肩から背中にかけての肉付きが素晴らしいですね。
2尾とも全長約40cm、体重約850gです。夏に定置網に入る体重500g位のマサバを生簀の入れて、冬までにこのサイズに育ったそうです。歩留まりは80%位でも体重が1.7倍になっています。
捌いていきますと、包丁に脂がうっすらと乗ります。血抜き効果も効いていて、血が流れ出しません。
内臓を観察しますと、まず肝臓がフォアグラのように真っ白です。それと腸間脂肪がバッチリ詰まってました。人間だったら、メタボリック症候群ですね。^^ これでは、肉も脂がきつすぎるのではないでしょうかと不安になります。
まず、味をダイレクトに判定するため刺身にしてみます。まるで、白身魚のように、身が締まっています。
まだ身が硬直していますので、少し薄めに造ります。血合いの綺麗な身で惚れ惚れします。
刺身の味を邪魔しない山田屋さんの蔵屋敷で味わってみます。
刺身を醤油に浸けた瞬間、ぱぁっと脂が表面を走りました。写真が下手でちょっと分かりにくいかも知れません。肝心の味ですが、想像通り脂肪の乗りは凄まじいです。おそらく脂肪含有率も30%近いかも知れません。でも、これは不自然なことではなく、この時期のサバは条件が良ければそうなりますし、特に北の漁場である八戸前沖のサバはこのくらいの脂肪を持ちます。従いまして、白身のこりっとした食感があるのにトロような味わいなのです。
驚いたことには、その脂が口の中でまつわり付かないのです。サラッとしてスッとなくなっていきます。これくらいの脂の乗りだと3切れも食べれば飽きてくるのですが、食べても食べてもまた食べたくなるのです。佐賀関の関サバもこの時期に食べたことがありますが、やはりこちらの方が水温が低い分、脂の乗りは勝っています。
さすがに刺身だけだと、単調なので胡麻醤油漬けも作ってみました。
いわゆる愛媛のひゅうがや九州のりゅうきゅうですね。作り方はこちらをご覧下さい。胡麻醤油とサバのような青魚との組合せは、なんでこんなに美味しいのでしょう。このまま食べてもご飯に乗せても佳しの逸品です。
武田さんの畜養サバをダイレクトに刺身で試してみましたが、確かに凄い。脂の乗りは仙台湾では天然物より上かも知れません。畜養による運動不足が脂肪含有率を高めていることは間違いないのですが、その脂の質が天然物と全く変わりがありません。これは、やはり定置網に入る小魚だけで育てているためなのでしょう。う~ん、調理意欲が湧いてきました。〆鯖も作って試してみたくなりました。その結果は長くなりますので、次の記事にさせて頂きます。^^
サバのような脂の強い魚を食べる時にはこんな物を一緒に摘むとよいですよ。細君の作った大根の即席漬け柚子風味です。
いわゆる大根の甘酢漬けなのですが、甘味は感じるか感じないギリギリの線で留めています。薄切りの大根に塩をぱらっと振ってしんなりしたら、昆布ダシと酢と砂糖に柚子皮を加えた調味液に浸けますが、酸味は控えめで甘味は前記の通りにします。この辺の味加減は細君でないと出来ません。


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