妻が入院する少し前のことです。二人で外食するのも最期になるかも知れないからとパリ郊外のレストランにやって来ました。マロニエの葉も散って、パリジェンヌ達もモノトーンのコートを羽織りだした頃でした・・・。 なんちゃって。^^ 看板をよく見ますと、日本語も書いてあります。そうなんです。こちらは利府の住宅地でひっそりと営業しているフランス料理店Maison de France(メゾン・ド・フランス)さんなんです。入院して手術しますとしばらくお粥生活になるでしょうから、景気付けにとレストランにやって来た次第です。
メゾン・ド・フランスさんは利府の住宅地の真っ直中、仙台北部道路しらかし台インターのすぐそばにあります。
看板がなければ、どう見ても普通の住宅です。と言いますか、住宅を改装したのでしょうね。
玄関を開けて、靴を脱ごうとしましたら、ギャルソンならぬ可愛いセルヴァーズ(女性の給仕)さんがお出迎えしてくれました。
コートをクローゼットにしまって頂いて、ダイニングに入りますと、これまた普通の住宅の大きさです。テーブルも全部で二人掛け5卓です。ですが、ガラス越しに見える厨房は本格的なレストラン仕様で家庭のキッチンを少しばかり改装したものとは異なります。ちょっと、気になったのは、足下に冷たい空気が流れることです。厨房の換気扇が強力なためでしょうか。
窓からは向かいの公園が見渡せ、これがまた、日本を感じさせない雰囲気を醸しています。この景色が日本の住宅で埋められていたら興醒めですね。
フランスで修行されたシェフの蔵書が展示してありました。フランス料理の年鑑のようなものでしょうか。
テーブルには美しいお皿が。。。でも、これはすぐに片付けられます。^^
いわゆるWelcome Dishという一種の演出なんでしょうね。
本日はMenuMidi(ミディー)1500円の方のコースを頂きます。
最期の外食かも・・・とか言いながらも財布の紐は固いですね。^^ オードブルとメインは選択式でした。
オーダー致しますと熱々の丸いパンが出てきます。
バターとオリーブオイルが添えられます。周りがパリンパリンなのに中はしっとりふんわり。あまり美味しいので全部食べてしまいそうになりますが、メインのソースを拭き取るために半分は取っておきましょう。^^
上は私が選んだオードブル、じゃが芋のムース黒胡椒添えと下が妻の7種類のきのこ入りタルト(温製)です。
じゃが芋のざらつきを感じさせないふわりとしたムースです。挽き立ての黒胡椒が対照的な刺激を加えます。ポテトチップスが立ててあって、ウサギに見えますね。来年の干支を意識したのでしょうか。^^ きのこのタルトも様々な香りが鼻腔に広がります。
青菜のスープは朝一番で飲みたいような実に優しいお味です。
何種類かの葉菜が使われているようです。ベースのフォンはなんだろう。もしかしたら、野菜だけのダシFond de legumesかも知れません。
さてメインですが、私は魚料理からリゾット入り鮭のパイ包みを選びました。黒のソースが斬新ですね。
パイ生地の中にはリゾットを芯に鮭の身が巻き込んであります。リゾットは炊き込みご飯くらいの硬さがあります。黒のソースの正体は生海苔でした。熱を加えると紫色に変色してしまうので、仕上げにさっと加えたのでしょう。ですので温度も人肌です。
妻は肉料理から仔牛のシェリービネガー煮込みを選びました。
熱を通したレタスに包んで供されます。包んである物を開ける喜びってありますよね。仔牛はとろんとろんに煮込んであって、口でとろけます。ソースで煮た乱切りのゴボウがベストマッチでした。どちらの料理も日本人の食指を伸ばさせる魔力を持ってます。^^
さて、デザートですが、予想より軽めなので安心しました。これなら私でも大丈夫。
ココナッツ入りのプチマドレーヌや生姜の香りのケーキには生姜チップスが刺さっていました。奥の磁器杯には自慢の生プリンです。とろとろで飲む感じですね。それにしても皿に描かれたソースのアート、フランス料理のこういうところはあまり好きじゃないのですが、心は動きますよね。
こちらは入院前の妻へのプレゼント。魅惑のデザートワゴンサービスです。
800円追加になりますが、シェフがワゴンで9種類のデザートをテーブルまで運んできて、目の前で切り分けてくれます。これは女性ならイチコロですね。本来、何品か選ぶのでしょうが、シェフの方から全部を勧めてくれました。^^ ミントやカシスのケーキ、パイやイチジクのタルトなど、見ているだけでお腹が膨れます。栗の渋皮煮も添えてあります。これはマロングラッセを作ろうとして挫折したとの解説付きでしたが、たぶんジョークなんでしょうね。
最後のコーヒーでゆったり昼餐を締めくくります。
窓辺の席だったので公園の枯れ葉が舞うのを眺めていたら、再び、手術の不安が脳裏をかすめました。
入院前の餞(はなむけ)にフレンチのランチとなりましたが、その割に経費をあまりかけないのは妻も私も倹約家だからです。^^ でも、リーズナブルなお値段にも関わらず大変充実したランチでした。私はイタリアやスペインの料理に縁が深いので、フレンチを食べに行くことはほとんどありません。それに現代のフランス料理Nouvelle Cuisineは、皿の上のアートにエネルギーを注ぎ込み過ぎているように思えてならないからです。
たしかに、スペイン料理の野暮ったさよりNouvelle Cuisineのエレガントさの方が日本人を強く魅了するかも知れません。それにはわけがありまして、Nouvelle Cuisineはポール・ボキューズやトロワグロ兄弟たちのような新鋭のシェフ達が、日本で食べた懐石料理にカルチャーショックを受けて古典的なフランス料理を改革していったものだからです。ですから、その盛り付けや演出は日本人の遺伝子にも共鳴するのです。
ですので、懐石料理もそうであるように、見せるための食材や器などにも経費がかかり、非日常的な料理となるのです。しかし、メゾン・ド・フランスさんは、いわゆる自宅レストラン形式でコストを抑え、私たち庶民でも気軽に楽しめる価格でNouvelle Cuisineを提供して下さっています。その努力は高く評価されるべきであり、私たちは食べることでお店を支えてあげるべきですね。車でしか行けない所にありますが、特別な人とクリスマスディナーに如何でしょうか。
Maison de France(メゾン・ド・フランス)
・所在地 :宮城郡利府町しらかし台2-4-7
・電 話 :022-356-5030
・営業時間:11:30~13:30/17:30~20:00 ※予約優先
・定休日 :水曜
・駐車場 :5~6台
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