アゴだしで煮物と冷やし肉そば
カテゴリー: 料理:水産加工品
先日、 anegoさんから大変ありがたい物を頂戴いたしました。みちのくの太平洋側では珍しいアゴの焼き干し と庄内名産の孟宗の缶詰です。嬉しいですねぇ。こういう、その土地ならでは食材をその土地ご出身の方に頂くとなぜか旅の情緒も一緒に頂いたような気になります。
アゴとはトビウオのことで、北九州や中国地方を中心にした日本海側でよく素干しや焼き干しが作られています。でも、これは山形の飛島のじゃないかな。
カタクチイワシの煮干しと違って、苦味や魚臭さが強くなく、上品な味わいとなります。雑煮や汁物だけではなく、麺類とよく合うのでラーメンスープにも使われますね。
庄内と言えば、妄想竹の筍。郷土料理、妄想汁は庄内ならではの筍の食べ方です。
庄内では筍の缶詰造りも盛んで、家庭で作った筍の水煮を缶詰してくれるサービスもあるそうです。
さて、この二つの食材。私に与えられた課題ですね。これらを使って、山形らしい料理に挑戦してみましょう。その前にまず、アゴでだしを取ります。
頂いたのは焼き干しのアゴですが、使う前に軽く炙って香ばしさを引き立てます。
これをダシ袋に入れて擂り粉木などで軽く叩きます。こうしますとダシを無駄なく引き出すことが出来ます。このアゴは一つが大体30gでしたので、1リットルのダシが取れますが、本日は濃い目に1.5リットルで2尾(60g)使います。
炙って砕いた焼き干しアゴは必ず水から煮出していきます。
沸騰の手前位を維持して、アクを取りながら煮出していきますと、このような黄金色のダシが取れます。実に香ばしい。そのままぐいぐい飲めます。
このアゴだしを使って筍をじっくり煮含めます。
醤油、味醂、日本酒をだしに加え、コトコトと炊いていきます。あまり色が濃くならないように醤油は少し薄めの方がよいでしょう。
アゴだしで炊いた庄内産孟宗筍の煮物です。
畑のナスやオクラ、厚揚げもアゴだしでそれぞれ別々に炊きました。初夏の生鮮の筍ではありませんから、筍特有の香りは薄れていますが、部分部分で異なる食感は十分楽しめます。アゴだしの上品な味が筍の芯まで染みています。
さて、次は何を作るのでしょうか。唐突に鶏手羽を煮始めます。
これは少量の鶏がらスープを作る時によくやる手法です。手羽は手羽先と手羽中に切り分けておきます。手羽先は出刃包丁の峯で叩き、骨を砕いておきます。手羽5本で汁麺2杯分のスープが取れます。香り付けに長葱と生姜だけを加えています。
これでアゴだしと鶏のスープが揃いました。
手羽中は身が崩れる前に取り出し、残った手羽先だけでさらに煮出してダシを抽出します。手羽中はもちろん料理して頂きます。
ここで、アゴだしカップ2杯に濃い目の醤油と味醂を加えた調味液で鶏もも肉1枚、先ほどの手羽中、それに筍の薄切りを炊いていきます。
筍は味が染みやすいので頃合いを見て取り出します。鶏は少し締まるくらいまで煮含めます。そして、この煮汁が大切な役目を果たします。
先ほどのアゴだしと鶏手羽スープを合わせて、上の煮汁で調味します。醤油や塩で味を調整したら冷水でがっつり冷やしておきます。
そうです。ラーメンで言うWスープですね。でも、今日はラーメンではありません。もう、お分かりですね。山形の夏の涼味と言えば・・・・。
はい、ここでそばを打ちます。大きなそば打ち台がないので、いくつかに分割して伸ばします。
慣れない場合は、このように小さく四角に伸ばした方がこの後が楽ですね。
当て木を使わず、生地をカッターで切るように裁っていくのが裁ちそばの技法です。
これは時間がかかりますが、初めてでも失敗が少ないですね。
少し慣れてくれば、畳み込んで切り込んでいきます。
このくらいの田舎そばの太さなら当て木なしでも簡単に打てます。それにしても、細打ちの見事なそばを打てる職人さんは本当に尊敬いたします。このような太打ちしか出来ないくせに、美味い不味いを語っているのが恥ずかしくなります。
挽き立てではありませんが、打ち立て茹で立てのそばで作りました山形名物冷やし肉そばです。山形で肉そばと言えば、鶏のことですね。
煮染めたもも肉の薄切りと手羽中、筍も合わせて盛り込んだ贅沢な肉そばです。
これはご馳走なので夕餉にしました。具の鶏肉をつまみながら冷酒を1杯、2杯、・・・・。^^
アゴだしを異なる料理に使って味わいます。筍も薄味の煮物とメンマのように煮付けた二通りの味わいを楽しみます。
がっつり冷水で〆た太い田舎そばなのでそう簡単には伸びません。
そば粉が二番粉くらいの白さだったので色白の田舎そばになりました。正確には太打ちの藪かなぁ。アゴだしと鶏のWスープも深い味わいながらすっきりと仕上がりました。暑い日には嬉しいご馳走です。
おまけですが、アゴのだし殻で作った酢の物です。
アゴのだし殻を齧ってみると結構美味い。ただ、まだまだ硬いので、さらに茹でてから骨を取り除き、甘酢に半日漬けておきました。これとキュウリの塩揉みを三杯酢で合わせたものです。子供の頃、関西で炙ったハモ皮の酢の物をよく食べさせられました。アゴには脂気こそありませんがこのような雰囲気でしたね。
もう一つおまけ。最近、そば屋さんで流行りの揚げそばがきです。
そば粉とアゴだしが余ったので、翌日、作ってみました。そば粉を弱火で練って、頃合いを見て濡らしたスプーンで形成し、揚げ油に落とします。濃いめの味を付けたアゴだしを張りました。
anegoさんから頂いたアゴの焼き干しと筍の缶詰でたっぷり楽しむことが出来ました。みちのくの太平洋側だと鰹節とカタクチの煮干しが主流で、アゴが登場することはほとんどありません。でも、山を越えると、西日本から北前船を通じて運ばれてきた食習慣が見られます。宮城も古くから都との繋がりがありましたが、大量の物資が北上したのはやはり日本海側ですね。港町酒田や隣接する鶴岡には近畿や北九州に共通する食べ物もあります。少しこの視点で庄内の食べ物を探求してみたくなってきました。
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