(20)総 括・・・韓国食文化について愚考する。

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 今まで19編に亘って、韓国で食べてきた物をご紹介致してきましたが、これでも、韓国食文化のほんの一部を垣間見たに過ぎません。それに、一口に韓国料理と言っても、日本と同様、中国や欧米などの影響も加わり、多種多様な食生活を送っているのが実態のようです。

 
 ご承知のように韓国は三方を海に囲まれた半島国家であり、島国日本と同様、海産物が料理にふんだんに取り入れられます。方や、大陸ともつながっていますので、遊牧・牧畜文化も流れ込んでいますので、日本より肉食の度合いは高くなります。


 主食ですが、今は韓国全域でご飯(米)が食べられていますが、かつては半島の南部でしか栽培出来ず、北方では粉食・雑穀食だったようです。麺類に関しては日本と同様、早い段階で中国より伝わってきていますので、冷麺だけではなく、素麺や饂飩(うどん)、中華麺など多様な麺料理が見られました。


 1週間程度のショートステイで韓国食文化について語るのは大それたことですので、自分が感じた韓国料理の特徴を思い出しながら書き出してみたいと思います。体系付けて整理するほど材料もありませんので、感想の羅列になると思いますが、ご容赦願います。




■ 基本的には唐辛子と胡麻油とニンニクは不可欠
kanbutu14.jpg 韓国料理は辛いという印象がありますが、辛さの素となる唐辛子は豊臣秀吉が持ち込んだとされており、それ以前の韓国料理は辛くなかったそうです。ですから、歴史の古い宮廷料理には、確かに辛くないものも多いのですが、その流れをくむ韓定食には唐辛子を使った辛い料理も含まれます。
 韓国では料理に関して、陰陽五行説の五味五色五行を基礎としていますので、辛みの他に甘味、塩味、苦味、酸味もバランスよく組み立てられます。逆に言うと、日本料理より辛みについては他の味覚と同等に組み込んであるのかも知れません。風味という点では、多く使われるのが胡麻油とニンニクです。韓式海苔巻きであるキムパブにはご飯に胡麻油が混ぜ込まれ、表面にも塗られています。主食にまで使うということはよほど好きなんだなと思ってしまいます。ニンニクも毎食と言っていいくらい出されるキムチを始め、多くの料理に使われています。刺身にサンチュと一緒にニンニクスライスが出てきた時には驚きました。日本でもカツオの土佐造りはニンニクで食べることもありますが、韓国ではヒラメやタイのような白身の魚しか刺身で食べないのです。これでは繊細な白身の味わいが消し飛んでしまうでしょう。
 ただ、ニンニクや唐辛子のような体に喝の入る食べ物を毎日のように食べているのですから、スタミナやパワーでは現代の日本人は敵わないかも知れません。日本では草食系男子などという気合いの入らない人種も出てきたようですし・・・。^^




■ 刺激的な味を好む
hono19.jpg 唐辛子を使ったものが多い韓国料理ですが、韓国の方々は子供の頃から食べているので、すっかり慣れているそうです。ですが、辛さに鈍感になっているのではなく、辛さという刺激が快感になっているようです。日本に留学していたある先生は毎日、日本の食事だと辛さという刺激が足りなくて禁断症状が出たそうです。そんな時は、スーパーの見切り価格になったキムチをたくさん買ってきて頬張ったそうです。このちょっとサデスティックな味覚が辛さ嗜好の原点なのかも知れません。
 そういう見方をすると、あのアンモニア臭でむせ返り、涙も出てくるホンオ・フェ(関連記事)も美味の追求ではなく、刺激の要求から来るものとして理解できます。夏の暑さを克服するのに、ホンオ・フェの刺激を使って苦痛の後の爽快感を得ているのではないでしょうか。日本人も暑い時に敢えて熱い物を食べて大汗をかき、食後の涼を楽しむこともありますよね。それにしても、韓国では日本の激辛の部類に相当する料理も普通に出されます。いくら慣れているとは言え、胃袋や下の口は大丈夫なのかと心配になってしまいます。^^


 


■ フェ(刺身)は活魚に限る
keburu9.jpg 韓国も日本に並ぶ刺身文化の国です。ただ、決定的に違うのは、韓国人は活きた魚しか刺身で食べないことです。従って、市場や料理店で活魚にしにくいマグロやカツオなどの刺身は日本系の回転寿司店くらいでしか見かけませんでした。サバを活かして刺身で食べさせる店(関連記事)は統営市にありましたが、極めて希な事例です。ですので、韓国で刺身と言えばヒラメやタイ、クロソイなどの白身がほとんどです。
 何でだろうと考えたのですが、冷凍冷蔵技術が発達する以前の名残ではないかと思うのです。要するに死んだ魚は腐敗が進むので生で食べるなという戒めみたいなものがあったのではないでしょうか。そこで、活かしておきやすい沿岸魚だけが刺身の対象となったのだろうと考えました。ただ、コールドチェーンも発達した現在においても活魚しか刺身で食べないのはやはり深く染みついた食習慣なんでしょうね。
 ただ、白身の魚の場合、〆た当日より1日冷蔵して寝かせた方が旨味が出てくるのですが、韓国ではその美味しさより、こりこりとした歯応えを優先するようです。それに刺身も焼き肉と同じように、サムジャン(合わせ唐辛子味噌)やニンニクスライスを乗せてサンチュやケンニプ(エゴマの葉)で包んで食べますので、繊細な白身の味は分かりにくいでしょう。魚ではありませんが、活タコの刺身であるサン・ナクチ(関連記事)は、日本で言えば白魚の躍り食いに通じます。このような活きている物を食べるのが韓国の刺身であり、晴れの日の御馳走なんでしょうね。




■ 魚は余すところなく利用する

kanbutu6.jpg これは日本でも見習いたいことですが、魚の利用の仕方に無駄がありません。外で刺身を食べる場合、活魚の1尾買いになりますが、刺身のを取った後はアラもメウンタンと呼ばれる唐辛子の効いたスープで味わいます。日本ではアラ汁という別の一品になりますが、韓国では大抵刺身とアラ汁が同じ材料のセットになります。もちろん日本でも、タラなどは1尾買いして、身は料理に、アラは鍋にする地域もありますが、ほとんどの家庭では切り身か出来合いの刺身を購入することの方が多くなってますね。スーパーや魚市場から出る膨大なアラは大部分が廃棄物やフィッシュミールにされているのではないでしょうか。
 韓国の市場で驚いたのですが、数ある乾物の中にタラの頭だけの干物が山となって売られていました(関連記事)。日本語の分かるお店の方に伺うと、これはダシ用として売られているとのことでした。また、タラの胃袋はあの有名なチャンジャとして辛い和え物になります。全体食という言葉もありますが、可能な限り無駄を出さないように魚を食べ尽くすことはいつの時代でも尊重されるべき習慣だと思いますね。





■ 黒が好き

midodok5.jpg 韓国の市場や商店街を歩いていますと、日本よりビビッドなカラーがよく目に付きます。特にピンクやオレンジの文字が使われた看板が多いようです。確かに女性の服装にもその傾向があり、伝統的な衣装はともかく、現代の普段着は日本より鮮やかな彩りが多いように感じました。かと思うと黒も好きなようで、何か特別の意味があるようです。日本でも礼服は黒ですしね。
 衣装はともかく、魚市場の活魚水槽を覗いてみると、これまた、黒っぽい魚が多いのです。クロダイやクロソイにマハタやヒラメ、たまたま韓国沿岸で捕れ、刺身として人気のある魚が黒かったのかも知れませんが、養殖のマダイも黒っぽいのです。養殖のマダイは水面近くで育つのでどうしても日焼けしやすいのですが、日本ではシートをかけて天然魚のピンク色に近づけようと努力しています。日本人にとって鯛のピンクは特別な思いがあるからですが、韓国では無頓着というよりむしろ黒い魚を好んでいるようにすら感じました。日本ではご祝儀の席に黒い魚は嫌われますが、韓国ではどうなんでしょうね。

 




■ 肉と梨
bibimba9.jpg 今回の訪韓では肉料理を食べる回数が余り多くはありませんでした。ですが、骨付きカルビやユッケなどの壷は押さえておきました。焼き肉の味付けは、日本の韓国系レストランでも食べていましたので、あまり大きな違いを感じなかったのですが、甘味が何故か爽やかなのです。三温糖かキビ糖でも使ったようにスッとした甘味を感じました。慶尚南道の晋州市でユッケを食べた時(関連記事)、下に千切りの梨が敷いてあり、これと混ぜ合わせて食べるのですが、この梨の甘味が肉に良く合い、しかもスッキリしていました。もしかすると、肉の下味にも摺り下ろした梨を使うのかも知れません。またいつか、韓国を訪れる機会があれば、今度は肉料理を中心に食べ歩いて味付けの秘訣を見極めてみたいものです。






■ サンチュやケンニプで巻くのは一長一短
keburu11.jpg 韓国で肉料理や魚料理を食べると例外なく、山のようなサンチュとケンニプ(エゴマの葉)が出されます。これに唐辛子味噌であるサムジャンやニンニクスライスが日本の薬味のような感じで付いてきます。要するに焼き肉でも蒲焼きでも刺身でも、何でも葉っぱに包んで食べるのです。これは豚バラや牛カルビのような脂の多い肉を食べる時には脂のくどさを和らげてくれますし、栄養学的なバランスの面からも評価されます。また、葉菜類を同時に食べれば血糖値の上昇を抑えてくれたり、便秘になりにくいなどの効能もあります。
 しかし、何度も書いていますが、繊細な味わいを持つ白身の刺身までこの食べ方をしてしまいますと味が分からないのです。サンチュはともかくケンニプはかなり香りが強い葉っぱですし、サムジャンの濃い味とニンニクの香りが前面に出てどんな魚でも同じ味になってしまいます。
 まずまず、好みの問題もありますから、どっちが良いとかは申しませんが、ただ、上記の効能を考えると、日本でも肉料理の時にはこの葉菜類の手巻きを取り入れる価値がありますね。子供の頃から、こういう食べ方で野菜を大量に摂れば、偏食の大人も減るでしょう。






■ 麺類の嗜好性は日本と同じ

karubi15.jpg 韓国で麺類というと、どうしてもネンミョン(冷麺)を連想してしまいますね。ネンミョンは蕎麦粉を使うのですが、日本のように少量のつなぎで伸ばして細く切るという形には発展しないで、多めの澱粉を混ぜて、お湯に突き出すという製麺法になりました。それと、日本では蕎麦自体を味わうために少量のツユで食べるざるそばがありますが、このようなスタイルの麺料理はないみたいです。韓国の麺類はネンミョンだけではありませんでした。行ってみて驚いたのですが、小麦粉で打つうどんのようなカルグクスなんてのもありました。もちろん、日本から伝わったであろう蕎麦やうどんもあり、日本名がそのまま使われていることもあります。ただ、日本のラーメンのような中華麺は中国から伝わったのではなく、日本のインスタントラーメンがラミョンと呼ばれて普及しています。皆様もご存知のように農心の辛ラーメンは韓国のインスタントラーメンですね。ただ、生麺のラミョンはまだあまり認知されていないようでした。
 麺類つながりで、餃子ですが韓国にもありました。ただ、マンドゥ(饅頭)と呼んでいるところから、かなり古い時代に中国から伝わったものと思われます。日本にも饅頭という食べ物が伝わったのは遣隋使、遣唐使の時代ですが、その後、菓子としてだけ発達しました。日本の餃子は神戸や横浜の中国料理店からより、満州引揚者が現地の餃子を日本で再現したのが普及したらしいですね。






■ 韓国人もかなり飲兵衛
nezake13.jpg 今回の訪韓はショートステイでしたが、夜は大体お酒が入りました。地元の方々と席を共にすることもあり、お酒の話題も多かったです。伺った範囲では、韓国の方は日本人の晩酌のように日々、一定量を楽しむというより決めた日にとことん飲むことが多いとか。飲む時は夜通し飲むこともあるらしいですね。で、よく飲む酒は、マッコリではなく、ソジュ(焼酎)がメイン。それも韓国ではお湯割とか、水割りとかの習慣がなく、ストレートでやっつけるそうです。さすがに現代の韓国の方々には、25度のソジュのストレートは強すぎるようで近年、19.5度の物が主流となったそうです。日本でも売られているチャミスルなんかも19.5度ですよね。あの360ml瓶が韓国焼酎のスタンダードで、どこの料理屋さんでも、皆様あれを召し上がっていましたね。僅か360mlですから、どんどん空になり、あの小瓶がテーブルに立ち並ぶのです。
 もちろん、メクチュ(ビール)もありますが、爆弾酒(ウイスキーのビール割り)やソメッ(ソジュのメクチュ割り)が人気です。私も人のことは言えませんが、早く酔うことの方が優先されるようです。







■ 食わせ倒しが美徳
tonyonsaba7.jpg 今回の韓国滞在で驚かされたのは、前菜といいますか、メインの肉や魚の料理が出てくる前の料理の多さです。これはなんとサービスで、この多さがお店の評価にもつながるそうです。この前菜、韓国語でパンチャンと言いまして、日本人がそれをまともに食べたら、メインに影響が出ます。これは韓国人でも同じらしく、残すのが当たり前だそうです。提供する側ももちろん、それはわかっています。つまり、お客を食べ切れないくらいのご馳走で持て成すことが美徳だった時代の風習がまだ残っているようです。

  
   この毎日、残されるパンチャン、、、どうなるのでしょうか。当然ながら上記のように食べ物を無駄にしない韓国の方々ですから、再利用します。いわゆる使い回しですね。韓国で入ったあるお店では、我ら日本人が辛い惣菜にあまり手を付けないと見るやすぐに下げてしまいました。箸を付ける前の料理だったら、再利用も仕方がないかなと思うのですが、中にはそうではない物も多々あるはずです。食べ物を無駄にしない勿体無い精神は大切ですが、外食の場合は感染性疾病の媒体になる危険性があります。

  日本でも船場吉兆がこの使い回しと産地偽装で廃業に追い込まれたことはまだ記憶に新しいと思います。ただ韓国のパンチャンと決定的に違うのは、船場吉兆は客からお金を取って提供した料理を他のお客から再度お金を取って食べさせている点です。まだ儲けられるのに捨てるのは勿体無いということでしょう。韓国の場合は、メインの料金に含まれているのかも知れませんが、原則的には無料の提供です。でも、上記のように公衆衛生上の観点からもタダだから使い回しても良いということにはなりませんね。

  日本でこの使い回し問題が大きくなった2008年、韓国にも飛び火して、その実態をテレビ各局が相次いで放映し、独自の調査で80%の飲食店が行っていたことが明るみに出ました。これを受けて全国組織の韓国飲食業中央会が食べ残し再利用の撤廃を宣言するに至っています。さらに、翌年、韓国政府は厳しい処罰を盛り込んだ改正食品衛生法を施行し、使い回しの慣行廃絶を図っています。今回の訪韓でもテーブルに並びきれないほどのパンチャンを出す飲食店は多々見られ、その結果、法を遵守していれば、食べ残しは捨てられているはずです。この不合理をなくすためには、やはり、食べる側も食べ切れる量のパンチャンで満足する感覚を養う必要がありそうです。もしくは、バイキング形式の提供も良いのではないでしょうか。いずれにしましても、長い歴史の中で習慣化した韓国のパンチャン、そう簡単にはなくせないでしょうね。そして、この習慣がある限り、飲食店は使い回しの衝動との戦いを続けることになるはずです。


          

2009/03/20(金) 05:00 | trackback(0) | comment(2)
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風写

URL | [ 編集 ] 2010/06/13(日) 08:22:15

お疲れさまでした。
とても参考になる内容の濃いレポート、ありがとうございます。

また行かにゃならんですね。

偶然ですが大学の同級生が、GWに一人旅してきたソウル食い倒れツアーが、彼のブログにアップされています。参考まで。
http://plaza.rakuten.co.jp/islander2006

サエモン

URL | [ 編集 ] 2010/06/13(日) 10:08:55

 風写さん ありがとうございます。

 予想通り思いついた事や書き忘れたことの
羅列になってしまいました。体系付けた理論に
するにはあと10回以上は通わないと駄目でしょう。

 お友達の一人旅見てきましたが、なんと、
今回の訪韓で狙っていながら、食べる機会に
恵まれなかったカンジャンケジャン、マンドゥ、ソルロンタン
がレポートされていました。また、行けたら、この3品から
食べ始めます。^^











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