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みやぎ水産の日 海の幸料理教室 2016.11 【牡蠣】

カテゴリー: 料理:貝類

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 毎月第3水曜日はみやぎ水産の日。毎月、この日の夜にメルパルク仙台におきまして海の幸料理教室を開催しております。11月のお薦めはこれからどんどん美味しくなる牡蠣です。今回は牡蠣殻開けも習得して3品を作ります。


 
 この料理教室はただ単に料理を習うだけではなく、毎月、取り上げる水産物の漁業・養殖の原理や歴史、生物学なども勉強します。
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 特に今回は牡蠣殻開けに必要な体の構造について詳しく説明しています。貝柱(閉殻筋)の位置が殻の外側からでもわかることが殻開けの必要条件になります。



 牡蠣の貝殻はカップのような左殻と平らなのような右殻から成ります。右下の写真のように殻を開けると薄いがよくわかります。
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 中にはどっちがカップでどっちがか悩むような牡蠣もありますが、市販されている殻付き牡蠣は形の良いものを選んで販売されていますので、大体わかります。



 牡蠣の殻を開けるのに宮城の牡蠣養殖業者はこのような専用のカキ剥きナイフを使います。
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 好みもありますが、宮城県の養殖業者はT型を使う人が多いように思います。それは殻の開け方に関係します。T型は手の平で壁を押すように腕と刃が一直線になり、強い力で押すことが出来ます。一方、I型は手首をやや曲げて刃を刺すような手付きになります。わかりにくいですね。以下に開け方の実際とナイフの使い方を解説します。


【開殻 その①】
 まず、あまり力の要らないオイスターバーなどでの開け方で、形の良い殻付き牡蠣に適しています。ナイフはI型を使うことが多いです。
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 牡蠣の殻は硬いのですが、先端部は薄いので、そこを破壊して刃を挿入します。ただ、この開け方は刃の延長上に殻を持つ手がありますので正面突破の際に力を入れ過ぎて、刃が殻から外れると怪我をすることがあります。慣れるまでは、先端部を上から破壊して、穴が開いたら刃を挿入し直すようにしましょう。

 どの開け方でも牡蠣を持つ方の手にはグローブを装着して下さい。牡蠣殻のエッジで手を切ることがあります。


 
 刃を挿入したら平らなに沿って奥に進み貝柱に当たったら、殻との接着部を切るというより剥がすような感じで刃先を振ります。
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 慣れるとわかりますが、貝柱は上手く刃を使うと外れるのです。貝柱も可食部ですから、殻に残すと勿体ないのです。



 引き続いてを外し、カップ側に着いた貝柱を外します。
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 この時も切るのではなく、殻から外すように刃先を殻を密着させて数回振ります。貝殻片を出さないように身を外せれば、下側の貝柱を外した状態で殻内水とともに、そのままハーフシェルで出せますが、身と殻を一度、塩水で洗い、再び身を殻に戻した方が安全です。



【開殻 その②】
 上記の開け方は先端部を破壊する際にリスクが伴います。初心者の方には先端部ペンチニッパーで切るこちらの方法をお勧めします。
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 これですと時間は掛かりますが、安全に先端部に穴を開けることができます。



 そこから牡蠣剥きナイフを挿入させますが、穴を広げればテーブルナイフでも貝柱を外せます。
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 この際くれぐれもフルーツナイフやペティナイフのように鋭利な刃物は使わないで下さい。



 蓋側貝柱が外せれば、後は同様にカップ側も外します。
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 テーブルナイフだと幅が広く、どうしても殻内での動きが多少鈍くなりますね。これから自宅で牡蠣を剥いてオイスターパーティーをやりたいなと思い始めましたら、牡蠣剥きナイフを1本買いましょう。^^



【開殻 その③】

 さて、これまでは殻の形の良い一粒牡蠣に適した剥き方でしたが、養殖業者はあらゆる形の牡蠣も素早く剝かなければなりません。そのため、宮城ではこのような開け方がプロ仕様です。
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 殻の先端からのアプローチではなく、側面から挿入します。貝柱までの距離は短くなりますが、殻に厚みのある部分を突破しますので、力が要ります。そこでT型ナイフの方が有利になるのです。

 刃先はに水平にではなく、上からカップの内縁を添うように挿入し、貝柱に接近させます。従って、刃の延長上に殻を持つ手がないので万が一、刃先が殻から外れても怪我をするリスクが小さくなります。



  貝柱に達しましたら、上記の手法と同じく刃先で貝柱を剥がすように外します。
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 カップ側貝柱が離れましたら、身が付いたままのカップから外します。


 
 身をめくり貝柱を見ながら、やはり同様に接着部を外していきます。
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 奇麗に殻から貝柱が外れると身持ちが良いものです。この開け方は多少力が要りますが、どのような形の牡蠣でも短時間で身を取り出せるので、宮城のカキ養殖業者の方々に定着しています。



 たとえプロが剝いたとしても数をこなす場合には貝殻片が混入したり、貝柱に付着したままになったりもしますので、剥き身は塩水で洗います。
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 一粒ずつ丁寧に汚れや貝殻片を取り除き、笊で水気を切ります。現在、各浜の牡蠣処理場も再建されて、衛生的な環境で剥き牡蠣が生産されています。剥いた牡蠣の身も濾過された海水で洗浄されていますので、昔のように大根おろしまで使って洗う必要はありませんが、貝柱に貝殻が付着していることもありますので、剥き身を買った場合でも一粒ずつ軽く塩水で洗いましょう。


 
 さて、今回のお料理ですが、最初に牡蠣の中華風スープを作ります。
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 鶏ガラスープで白菜や長葱を煮ていきます。柔らかくなったところで牡蠣の身を加えます。生姜の千切りも加えています。



 濃厚な牡蠣のスープは体が温まります。器によそってからスープ春雨も投入しました。
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 味付けは塩と日本酒のみ。最後に五香粉胡麻油を振って風味付けをしました。



 
こちらは牡蠣ご飯を炊く準備です。
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 最初に牡蠣の剥き身を醤油、日本酒、味醂で炊いておきます。醤油の分量は米一合に対して大さじ1杯になります。



 今回は牡蠣も一緒に炊き込んで、ご飯へ旨味を十分に移しました。
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 牡蠣は炊き込んでも硬くならないのでこの炊き方が出来ますが、ホッキガイ等は下煮した身を後から炊きあがったご飯に混ぜ込んだ方が良いでしょう。



 三つ葉を天盛りして出来上がりです。
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 柚子皮の擂りおろしを振ってもよいでしょう。今回は餅米を20%混ぜ込みましたので、もっちりとした食感も楽しめます。



 続いて、こちらは焼き牡蠣ですが、豪華なハーブソースを使ったオイスター・ロックフェラーというアメリカの焼き牡蠣です。
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 茹でたホウレンソウ、パセリ、青葱などの微塵切りにパルメザンチーズ、マスタード、オリーブオイルなどを混ぜ合わせ、殻に乗せた身の上に被せてから焼き上げます。最後にパン粉を振るのを忘れてしまいました。^^


 レモンを添えて完成です。
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 この料理、ニューオリンズの創業100余年のアントワーヌズ(Antoine's)というレストランで創製された料理で、大富豪のロックフェラーが好きでよく食べに来たわけではありません。豪華なソースを使ったので肖った命名です。



 さて、食卓に運んで試食です。鮮度抜群の牡蠣を堪能して下さい。
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 自分で作った牡蠣料理です。美味しさも一入(ひとしお)でしょう。



 毎月、河北TBCカルチャーセンターで第三水曜日の夜に開催されるみやぎ水産の日海の幸料理教室いつからでも参加できます。単なる料理教室ではなく、その月のお薦め水産物をあらゆる角度から勉強もします。実質2時間ですが、中身の濃い料理教室ですので、是非、お問い合わせくださいませ。



【お問い合わせ・申し込み】  

 河北TBCカルチャーセンター http://www.culture-ktc.co.jp/kouza/shoku.html

 【メルパルク教室】
  〒983-0852 宮城県仙台市宮城野区榴岡5丁目6-51 メルパルクSENDAI 3F
  電話 022-792-8123/FAX 022-792-8124
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2016/11/28(月) 05:00 | trackback(0) | comment(0)

レモングラスの鉢上げからのトム・カー・ガイ

カテゴリー: 料理:肉・卵・乳

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 これはタイ料理の鶏のココナッツミルク煮(トム・カー・ガイ)です。タイ料理を決定付けるのは、ナンプラーやココナッツミルクも然ることながら、個性的なハーブにあると言えるでしょう。それらが欠けるとどうしても紛い物感が出てしまいます。

 特にタクライ(レモングラス)バイマックル(コブミカン)パクチー(コリアンダー)カー(ガランクル;タイの生姜)などは必須のハーブや香辛野菜と言えるでしょう。これらは常備しておきたいところですが、南国の植物をみちのくで栽培するのは苦労が要ります。



 レモングラスはもう20年近く栽培していますが、この季節に鉢上げをして室内で冬越しをします。
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 夏の間に大きく育った株を鉢に入るサイズに分けて植え付け、葉の部分を切り取ります。室内で場所を取りますので。


 鉢に入り切らなかった部分が毎年の収穫になります。
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 根元の部分は冷凍、葉の部分は乾燥させて保存します。


 我が家ではパクチーは自生しています。
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 もう何年も前から、毎年、こぼれ種が勝手に発芽して世代交代を繰り返しています。まだ小さいですが、間引きを兼ねて利用しています。


 今年から仲間に加わったコブミカンの苗。
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 瓢箪のようなと言いますか、砂時計のような葉が特徴的です。これは露地ではなく、周年、室内での鉢植えとします。

 
 余談ですが、この苗も一緒に購入しました。種なしスダチの2年生です。
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 これは来年の春に露地植えに移行させて越冬に挑戦してみます。早くスダチが使いたい放題に実ってくれると嬉しいのですが。。。


 それでは、我が家のハーブを使ってさっそくトム・カー・ガイを作ってみます。
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 材料は鶏もも肉、ココナッツミルク、ナンプラーに適当な野菜とハーブ類です。

 
 ハーブはレモングラスバイマックルパクチーカーがないので日本の生姜
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 辛味付けの唐辛子と酸味付けの柚子の実。柚子はライムの代わりです。

 
 最初にココナッツミルク 2/3缶を水で薄めてハーブ類を煮て香りを移します。
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 レモングラスは根元を叩いて潰しておきました。貴重なバイマックルも香りが出やすいように切り目を入れてあります。ココナッツミルクは少し残しておいて、仕上げに加えると香りが活きます。


 具材となる材料は適宜に切っておきます。
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 柚子酢も絞っておきます。フクロタケなんかを使うと本物っぽくなるのですが、シメジで代用。

 
 具材を香りを移したココナッツミルクで炊いていきます。
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 仕上げにナンプラーと柚子酢で味を調え、残しておいたココナッツミルクを加えれば完成です。

 
 器に盛ってパクチーを天盛りします。
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 実に良い香りです。タイ料理は複合された深い味と香りが魅力ですね。これをご飯にかけても美味しいのです。



 毎年、レモングラスの鉢上げからしばらくはタイ料理を楽しみます。今年からコブミカンも仲間に加わわりましたので、また一段と本場の香りに近づくことができ、嬉しくて堪りません。コブミカンを早く大きく育て、葉っぱをたっぷり使ったゲンキョウワーン(グリーンカレー)を作ってみたいものです。
2016/11/24(木) 05:00 | trackback(0) | comment(0)

小粋ナ独酌・対酌ノスゝメ その③ 最終

カテゴリー: 未分類

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 3回シリーズで開催して参りました晩酌塾“小粋ナ独酌・対酌ノスゝメ”、いよいよ最終回です。今回は江戸時代後期、庶民が食を楽しみ始めた頃の料理を再現しながら、当時の食文化を垣間見ます。会場は色々と我儘を聞いて下さっている仙台は立町のKaffeTomteさんです。なお、今回も写真は受講生の皆様からお借りしました。ありがとうございます。m(..)m




 食に関する日本の書籍は平安時代からありますが、当初は祭事の細則や包丁式家の秘伝書などでした。
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 その後、江戸時代に入ると流派を超えた料理の実用書や本朝食鑑のような専門的な食の事典も出版されます。さらに時代が下り、天明の頃になると農村部は飢饉で苦しんでいるのですが、上方や江戸では、食を楽しむ読み物や旅のグルメガイドなども著されるようになりました。

 私は以前より、食育に対して食楽という概念を確立しようと温めてきました。決して食道楽や食通のことではなく、食材の背景にも習熟して、その持ち味を活かした料理の創製を楽しむものです。その点からしますと、まだ、海外の料理に染まり切っていない江戸期の惣菜は食材の持ち味を活かしたものが多く、大変、参考になります。


 食楽の典型とも言える百珍本は連鎖反応のように僅か3年の間に7冊も発行されました。
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 百珍本とは特定の食材を取り上げ、その料理法を百種類以上紹介する実用書というより読み物です。中には記載されているレシピ通りでは決して再現できないものも紛れており、面白さを狙っていることがわかります。豆腐百珍が引き金となり、鯛、大根、卵、海鰻(鱧)と続き、少し間をおいて、蒟蒻や甘藷(薩摩芋)などの百珍本が出版されています。


 さて、今回の第一品目は、料理伊呂波包丁という安永二年(1773)に刊行された料理総合実用書に記載のあった前菜で、大根と林檎の胡麻山椒和えです。
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 中央には口直しに新物の生海苔山葵酢浸しを添えました。胡麻と山椒の組み合わせは和食としては珍しいと思います。大根は薄味で下煮をしてさっと焙ってから擂った黒胡麻と粉山椒で和えています。林檎は白胡麻を使いました。同じ胡麻でも風味は異なりますので、その対比も楽しんで頂こうという意匠です。


 本日のお酒はご覧の通り。
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 料理に合わせて、亀岡の阿部酒店さんが厳選して下さっています。




 この晩酌塾は江戸期の料理の再現だけではなく、その精神的背景にも探りを入れます。
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 江戸っ子の心意気はで成り立ってます。野暮は嫌われます。本来は上方で茶道や華道に精通している様子を粋(すい)と呼んでいたようですが、江戸に伝わり、庶民が江戸なりの精神美として(いき)を作り出しました。

 でも、を貫くのはそれなりに苦労も要り、息抜きも必要でしょう。少し緩い小粋くらいが肩肘張らず実践できそうです。特に単純美は現代でも見習うべき価値観だと思います。




 と言えば、池波正太郎の時代小説、鬼平犯科帳の長谷川平蔵ですね。二代目中村吉右衛門さんが良い味を出しています。
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 シリーズの中で兇賊という話がありますが、その中で加賀やという居酒屋で平蔵が名物の芋酒芋膾に舌鼓を打つシーンがありますが、料理番組さながらのシーンが印象的です。こちらをご覧ください。


 そして、まず、芋酒。トロ―リ温かで冬にぴったし。精力剤として呑まれていたとも。。。
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 鬼平犯科帳通りの作り方は山芋を賽の目に切って、熱湯に通し、擂り鉢で酒とともに擂っていくとあるのですが、熱湯に通す意味が分かりません。湯通し程度では中まで加熱されませんし、表面のぬめりを取ったとしても中からまた出て来ます。それに角切りの山芋を擂り潰すのは難儀です。普通におろし金か擂り鉢の内側で擂り下し、その後、酒とともに練り上げれば良いと思います。いずれにせよ、練り上げた芋酒はお燗で頂きます。


 こちらは芋膾ですが、里芋で作っています。
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 蒸かした里芋の上に酢締めの魚を乗せ、合わせ酢を掛け回したものです。天盛りは針生姜。添えは平田赤ねぎの甘酢漬け。シャリを里芋に替えた寿司のようにも見えますが、やはり膾ですね。面白い料理です。



 さて、江戸期の晩酌の華は何んと言っても小鍋立てです。
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 小鍋立ては自ずと独酌か対酌になります。3人以上になりますと宴になり様相が変わりますね。一人手酌で鍋を突きながら物を想ったり、差しつ差されつでしんみり話すのも好いものです。毎度毎度パーティーでは楽しくても自分磨きにはなりません。


 今回は奈良に飛鳥時代から伝わる飛鳥鍋にしました。
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 元来、ヤギの乳で作ったらしいのですが、現在では牛乳で代用します。メインの具にはこれから旬を迎える牡蠣を使いました。牡蠣とミルクは出会いですが、この鍋が江戸で食べられていたかは不明です。


 江戸期の晩酌から学ぶものは多いのですが、百珍本などの料理が普段食べられていたとは思えません。
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 江戸時代後期に実際に庶民が食べていた惣菜を知るには見立番付が役立ちます。見立番付とは相撲の番付表を真似して、様々な物のランキングを楽しむものです。その中に惣菜の番付がありました。200種類くらいが記載されており、魚類方と精進方に分かれています。精進方の大関は八杯豆腐、魚類方はめざしいわしとあります。


 この八杯豆腐が気になって作り方を調べましたら、醤油1、酒1、だし6の合計8で豆腐を炊いた物でした。
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 この調味液で同量の豆腐を炊きますと、塩分1%ほどの好適塩分に仕上がります。レシピを覚える先人の知恵ですね。煮汁にとろみを付けて戻してやると冬は体が温まります。天盛りは大根おろしと七味唐辛子。


 江戸期の晩酌を整理しますと、小鉢や小皿の前菜で呑み始め、小鍋立てでメインを楽しみ、〆の飯となります。
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 電熱器でも土鍋ご飯が炊けることは実証済です。名飯部類(享和2年;1802)というご飯料理の名著を紐解きますと、汁かけ飯も江戸期には好まれていたことが分かります。




 そこで、浅草海苔ではありませんが、ちょうど今、初海苔のシーズンなので生海苔を使った汁かけ飯で〆にします。
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 生海苔をだし醤油でつゆだくに炊いて、海苔と汁をご飯にかけ、山葵を乗せて頂きます。生海苔の香りが鼻腔に広がります。



 今回はデザートも用意しました。焼き柿です。焼き牡蠣ではありません。^^
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 これも江戸期に存在した菓子。焼くことによりトロリと甘くなり、皮まで食べられます。これに味醂と肉桂をかけています。素朴な甘さがなんとも懐かしい。日本人の甘味の原点は柿ですからね。上白糖に庶民は手が出せませんでしたし。




 今回の晩酌塾3回シリーズを全部受講された6名の方々には皆勤賞として私から薬研堀の七味唐辛子を贈呈させて頂きました。
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 薬研堀は400年近く前に日本橋で創業した七味唐辛子の老舗中の老舗です。現在も浅草で営業されており、通販でこのようなMy七味のケースも買うことができます。七味唐辛子は日本が生んだ世界に誇れるブレンドスパイスですね。




 江戸期の食文化を垣間見て、現代にも取り入れられる考え方や料理を探索して参りました。その結果、単純美を重んじるという概念と小鍋立てに象徴される晩酌スタイルに行き着きます。山海の美味を何種も詰め込んだ寄せ鍋を皆で突くのも楽しいものですが、3種類以内の厳選した具材を小鍋立てにして、一人手酌の独酌や差しつ差されつ対酌で楽しむのも落ち着きのない現代には必要な時間でしょう。


 江戸料理を再現して感じるのは素材の味を残す控えめでシンプルな味付けです。煎り酒煮貫で素材を味わうと現代の味付けが必要以上に濃いことに気付きます。醤油が普及した後でも八杯豆腐のように人間の体液の塩分濃度に近い味付けにしてあります。もちろん冷凍冷蔵保存はできませんので、高塩分の漬物や切込みもあったでしょうが、料理自体の味付けは極めてヘルシーだったようです。


 かといって、現代の食生活を江戸時代に戻したら、体格も貧弱になり寿命も縮小するでしょう。それにそのようなことは不可能です。世界中の料理で構成される現代の食生活ですが、その所々に江戸期の料理を織り込んで当時を偲びながら晩酌を楽しむのは日本人にしかできないことです。江戸庶民の好きな惣菜は見立番付から学べます。これに記載される200種余りの惣菜を1日1品ずつ晩酌のアテにするだけで半年以上も楽しめます。是非、池波正太郎の時代劇でも観ながら、江戸の心意気に浸って、小鍋立てを楽しみましょう。^^
2016/11/21(月) 05:00 | trackback(0) | comment(0)

小粋な葱鮪(ねぎま)の小鍋立て

カテゴリー: 料理:買い魚

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 寒さも日に日に増してきて、小鍋立てが楽しいシーズンになってきました。小粋な鍋物の一つに葱鮪鍋(ねぎまなべ)があります。江戸時代の後期に発生したとされているこの鍋はヅケに向かないの脂身(トロ)を江戸の庶民が有効利用したものということですが、現代では贅沢な料理となってしまいました。

 ところで、近年、焼き鳥で鶏肉と長葱を交互に串に刺して焼いた物も“ねぎま”と呼ぶ店がありますが、成り立ちからすれば、間違ってますね。そもそも(ま)がないじゃありませんか。これではまさにマヌケですね。^^


 仕事の帰り道、スーパーで素晴らしいものを見つけました。
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 メバチの尾柄部の輪切りです。これたったの195円でした。魚市場の競りの際、肉質が見定められるように尾柄部を切って断面を見せるのですが、それを商品としたのでしょう。いずれにしろ、安くマグロを頂けるのですから有難いことです。


 丁寧に皮と骨を外し、肉も刺身サイズに切り分けました。
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 骨と皮はダシとしても使います。この時の注しなければならないのは、マグロの鱗は細かくてかなりしっかり張り付いていますので、丹念に落としておきます。つゆの中に散ったら大変ですからね。


 日本酒を加えた水に昆布とメバチの皮と骨を入れてダシを引きます。
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 アクを取って醤油と塩で味を調えます。澄み切った良いダシが取れました。鮪ダシのねぎま鍋ってなかなか好い感じではありませんか。
 

 食卓に運んで晩酌の開始です。このところ独男なので小鍋立てでの独酌が多いのです。
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 愛用の火力可変式電熱器晩酌塾の会場に置きっぱなしなので仕方なくガスコンロでやってます。この鍋はマグロ焼き葱だけで小粋にやります。けっして、ゴタゴタと具材を入れ込むような無粋なことをしてはなりません。^^


 とは言え、ねぎま鍋だけだと野菜不足なので、前菜に小松菜の胡麻汚し、小松菜の茎とエリンギの芥子醤油漬け、そして鶏ハラミの葱塩焼きです。
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 余談ですが、この鶏ハラミ、牛のハラミは横隔膜ですが、こちらは腹筋とのこと。食感がまるで軟体動物、大型二枚貝の足のような感じ。取り外しにくい部位なのですが、結構見かけるようになったのは、専用のカッターが開発されたのでしょうか。


 自分で仕切る小鍋立て好みの加減に熱を通せるのが楽しいですね。
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 195円とは思えない立派な鍋になってますね。^^


 庭の柚子を取ってきて絞りながら味わっています。ダシ殻になりましたが、メバチの皮もプルプルとした食感で美味かったです。
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 この他、七味唐辛子や練り芥子などでも試してみましたが、それぞれ異なる味わいで楽しめました。


 今回はラッキーなメバチが手に入りましたが、鮮魚コーナーには秋鮭の切り落としがお得な値段で売られています。不揃いな身ですが、丁寧に処理すれば、小鍋立てにして十分楽しむことができます。それに倹約献立でありながら、小粋に食べれば、心も舌も満足することができますよ。
2016/11/16(水) 05:00 | trackback(0) | comment(2)

牡蠣のバルサミコ酢炒め

カテゴリー: 料理:貝類

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 毎月第3水曜日はみやぎ水産の日です。水曜日の水、第3の3を組み合わせて水産の日とさせて頂いております。月ごとにお薦め水産物を選定して食べ方などをご紹介しております。11月はこれからどんどん美味しくなる牡蠣です。宮城は広島と違って、生食用牡蠣の生産が主流ですが、生食用であってももちろん加熱調理にも使えますよ。



 牡蠣はぷっくらと白く膨らんで透明感のないものを選んで下さい。
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 近年は量り売りではなく、ビニールのチューブやトレーに密封された形態で販売されていますが、中のむき身を見ることは出来ます。


 浜でむき身にされた後、洗浄もされていますが、貝柱に殻の欠片が付いていることもありますので、塩水で洗って下さい。
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 塩水の中で軽く揉み洗いしましたら、ザルに上げてよく水気を切って下さい。



 水気を取ったむき身に胡椒を振っておきます。
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 この後、使います調味料はバルサミコ酢醤油白ワイン(または日本酒)です。これらを1:1:2の割合で合わせておきます。


 続いて、むき身に薄力粉を塗します。
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 袋にむき身と薄力粉を入れ、膨らませた状態で口を閉じて振りますと綺麗に塗すことが出来ます。

 

 本日はイタリア風に料理します。まず、オリーブオイルで牡蠣を焼いていきます。
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 この時、掻き回さないで、片面ずつじっくり焼きましょう。

 
 両面こんがりと色付きましたら、合わせ調味料を回しかけます。
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 この後、直ちに牡蠣を取り出し、調味料を煮詰めて濃度を出します。


 牡蠣を皿に盛り付けてから煮詰めた調味液をかけて出来上がり。
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 付け合わせはお好きなものを。こってりしてそうに見えますが、バルサミコ酢の酸味が全体をキリッと引き締めています。


 牡蠣はこれから春に向けてどんどん美味しくなっていきます。酢牡蠣牡蠣フライだけではなく、牡蠣を様々な料理で楽しみましょう。牡蠣グリーンカレーも美味しいですし、牡蠣パエーリャもいけますよ。




 おまけです。牡蠣と言えば、クリームシチューやチャウダーも捨て難いですよね。ミルクとは出会いですからね。
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小鍋立てで牡蠣の飛鳥鍋を作ってみました。昆布だしに牛乳を加え、煮立たないように野菜を煮て、白味噌と塩で味を調えてから牡蠣を加えます。片栗粉でとろみを付けますと冬は体が温まります。
2016/11/10(木) 05:05 | trackback(0) | comment(0)