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秋の酒肴 サンマの辛味漬け

カテゴリー: 料理:買い魚

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 前記事に続きまして、走りのサンマでもう一品作ります。学生時代、先輩の実家が九十九里でイワシ巻き網漁業を営んでいたので、夏には泊まり込みでよくアルバイトに行っていました。その時、郷土料理のカタクチイワシ胡麻漬け辛味漬けをご馳走になったのですが、これが忘れられない味となりました。胡麻漬けの方は新鮮なカタクチでしか出来ない味わいですが、辛味漬けサンマでも出来るのではないかと試してみました。


 最初に刺身同様に三枚に下ろしますが、手っ取り早いのがこの方法。肋骨をすき取る手間が要りません。
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 まず、肛門の辺りから背骨まで包丁を入れ、背骨に沿って鰓蓋まで滑らせます。そこから手で首を折り、皮を尾の方へ引き剥きます。皮が鰭の付け根で引っ掛かりやすいので、最初に鰭を切り落としておいた方が良いかも知れません。実際は内臓や血でドロドロになりますので、洗ってから写真を撮っています。^^


 頭と内臓、皮を取り去ったサンマはさっと水で洗ってから三枚に下ろせば、刺身用のフィレの出来上がり。
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 このまま、薄く切って刺身で食べたいところですが、ぐっと堪えて先に進みます。^^

 
 ここで辛味漬けの漬けダレを作ります。サンマ1尾分に対し、味醂と日本酒を各大さじ1杯を煮切ります。
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 そのまま口に入る漬けダレですので、アルコールの苦味を吹っ飛ばしておきます。この煮切り作業は日本料理をやっているなぁという実感が湧きますね。^^ まだ熱いうちに同じく大さじ1杯の醤油を加えて、冷まします。


 幅1cmくらいの斜め切りにしたサンマの身をこの漬けダレに漬け込むのですが、七味唐辛子を少し多めに振り入れます。
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 カタクチイワシと違ってかなり脂が多いので、辛味も抑えられます。辛過ぎるかな。。。というくらいにしておきます。漬け込み時間は半日から1日。もっと早く食べたい場合は醤油を増量させて下さい。


 味も馴染んだ頃合いで頂きましょう。
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 甘辛ダレに使ったサンマの身と七味唐辛子の辛味、風味が合わさり、佳き肴へと醸成しました。


 前記事のサンマ一本海苔巻きと一緒に走りのサンマを堪能します。
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 これらの料理には日本酒以外、まず合わないでしょう。是非、お好みの冷酒を準備して味わいましょう。


 これからサンマの本格的なシーズンに入ります。最近、サンマの漁獲量もやや減少傾向にあり、今年もあまり芳しくない予報です。今年のサンマは走りの時期からがたっぷりで焼いても刺身でも美味しく頂けますが、〆サンマにはなりにくいかも知れませんね。それはそれ、11月に金華山沖を南下するまでたっぷりサンマを楽しみましょう。

 最後に魚種別EPADHAの含有量ランキングを示しましたが、価格の面からもサンマは如何にヘルシーで、利用しやすい魚かよくわかりますね。ω-3脂肪酸であるEPADHAの効能は今さらですが、最近は以下の二つとされています。

  ◆中性脂肪を減らす
  ◆血小板凝集を抑える

 つまり、動脈硬化を押さえ、脳梗塞や心筋梗塞を予防する働きがあります。この季節は新鮮なサンマ、シーズンが過ぎたらブリやサバ、さらには手軽なサバ缶やイワシ缶、そして、たまにマグロやウナギと食べ繋いでいくことが大切ですね。食べ物は特効薬ではありませんので、習慣的に青魚を多く食べるようにしていきましょう。

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 DHA+EPA辞典「DHA/EPAを多く含む魚ランキング」


 
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2016/09/19(月) 05:00 | trackback(0) | comment(0)

豪快 秋刀魚の一本海苔巻き

カテゴリー: 料理:買い魚

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 秋到来!サンマの季節がやってまいりました。これから秋も深まるにつれて漁場も南下し、鮮度も良くなり、しかも安くなるという宮城のサンマファンにとっては最高の季節。あれこれ、やってみたい料理もありますが、ただの塩焼きや刺身は今更ご紹介するまでではないのでちょっと変わったサンア料理二品を二回にわたってお送りします。



 まず最初はこれ。。。何だ塩焼きじゃないか。
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 いえいえ、違います。順を追ってご説明します。鮮度の良いサンマは腹を裂いたり、切れ目を入れて焼いてはなりませぬ。折角、貯め込んだ腹腔内脂肪をみすみす逃してまうことになります。お腹の脂肪が焼くうちにじわじわと肉に移り、しかも水分も逃げにくくなり、ふっくらと仕上がります。



 美味しそうに焼き上がりました。 ぎょぎょっ!! 何だこの脂は。。。@@
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 切れ目を入れないで焼いたにも拘らず、焼き網の下には大量の。まだ、走りのこの時期にこんなにがあるサンマは見たことがありません。でも、この脂、ω-3脂肪酸であるEPADHAが豊富に含まれておりますので、回収して料理に使います。^^



 さて、この後がちょっと大変。焼きサンマの骨と内臓を抜いていきます。
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 上記のようにこのサンマは脂肪たっぷり。身もふわふわに焼き上がりましたので、非常に崩れやすいのです。慎重に背中から開いて、背骨を取り、内臓や肋骨も丁寧に取り去ります。メスとピンセットが欲しいところ。^^



 まだ、何を作っているのかわかりませんね。もう少しです。^^
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 骨や内臓を取り去ったサンマの内側に醤油を塗り、大葉を挟み込みます。



 はい、なんだかわかりましたね。サンマの一本海苔巻きを作っています。
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 サンマの身の崩れそうな所を包帯代わりに大葉で巻いて補強しています。^^



 こんな感じで頭と尾鰭を出して巻き上げます。豪快でしょ。^^
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 サンマがドテラを着込んだようにも見えますね。この料理、実は韓国の済州島の郷土料理なのです。いまではテレビで紹介され韓国中に広まっています。韓国では海苔巻きをキムパッ(海苔・ご飯)と呼んでいますが、その起源は日本の海苔巻きです。それをこのような形に進化させたのは韓国の大胆さなのでしょうか。

 さらに、韓国のサイトでも作り方をリサーチしたのですが、骨を抜くという作業が見当たりません。もしかしたら、焼きサンマをそのまま巻き込むのかも知れません。ますます豪快だなぁ。。。

 韓国式はご飯に胡麻油を混ぜ込みますが、日本人にはそのままのご飯か酢飯の方が合うでしょう。サンマ自体にも脂がありますし、サンマの香りが胡麻油で霞みます。



 こんな感じで涼しげに盛り込んでみました。
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 スダチの酸味がよく合いますので、練り梅を巻き込んでも良いかも知れません。


 これは酒のつまみにもなりますね。サンマとご飯の組み合わせは最高の出会いだと思います。
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 サンマの姿寿司は日本にもありますが、焼きサンマを一本巻いてしまう発想はそうそう出てくるものではありません。




 このサンマ海苔巻き、想定していたよりはるかに美味しい。脂の乗った焼き立てのサンマは扱いが面倒ですが、だからといって、これをサンマの開きで作ったら感動的な味わいにはならないでしょう。美味しいものには手間の掛かるものもあるのです。続いては酒の肴にぴったりのサンマ料理です。次の記事で報告致します。
2016/09/12(月) 05:00 | trackback(0) | comment(3)

【夏の小鍋立て】冷やし葛鶏で一献

カテゴリー: 料理:肉・卵・乳

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 このところ、小粋な晩酌を確立すべく小鍋立て料理を次々考え出しております。鍋料理と言いますとどうしても冬のイメージですよね。温かいものを食べて暖を取ろうというのが鍋料理に期待するところだと思います。ですが、鍋料理に囚われず、卓上調理だと捉えれば、周年稼働の可能性も出て参ります。そこで、あれこれ考えて写真のような火力可変式電熱器に行き着きました。

 本当はお燗機能も備えた長火鉢が憧れなのですが、かつてのように一年中、炭を熾すライフスタイルではないし、密閉度の高い現代の家屋では一酸化炭素中毒も懸念されます。I Hやカートリッジ式ガスの卓上コンロもありなんですが、なんとなく無粋に感じるのは私だけ???



 それはともかく、夏向きの小鍋立て創製の一つとして、冷やし葛鶏を紹介します。材料は至ってシンプル。
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 鶏胸肉、キウイ、片栗粉、日本酒と自然塩。それに青みとして適当な青菜。水菜や春菊でも良いし、今回は畑にモロヘイヤが大量に残っているのでそれを。小粋な小鍋立てはシンプルが一番、具材もせいぜい3種類まででしょう。


 まず最初に酒塩を作ります。これは江戸期には垂れ味噌煎り酒と並んでよく使われた調味料です。料理酒(料理用日本酒)の祖先みたいなものでしょう。
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 適当な日本酒に海水程度の塩分濃度(約3%)になるように自然塩を溶かし込みます。かつては主に魚などの下味付けに使われていたとか。今回は2段階で活躍します。


 鶏胸肉は3~4mmの削ぎ切りにしますが、筋繊維の走る方向に直交するように切るのが、加熱しても胸肉を硬くさせない技のその1
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 胸肉の筋繊維は葉っぱの葉脈のように中心線から左右上方へ向けて走りますので、それを頭に入れて切っていきます。


 切った胸肉を酒塩に漬け込みますが、キウイの絞り汁を加えます。これが技のその2
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 胸肉の筋繊維の結合をキウイのプロテアーゼで緩めます。酒自体にも肉を軟らかくする力がありますので効果の上乗せを狙っています。漬け込み時間は30分程度。


 酒塩に漬けた胸肉はキッチンペーパーで水気を拭き取り、片栗粉を入れた袋の中で塗します。
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 余分な粉をはたき落とし、皿に並べます。現代では葛粉の代わりに片栗粉を使っても葛打ちとか葛叩きとか呼んでいるようなので、今回は葛鶏と銘打ってます。


 次に残りの酒塩に大量の氷を入れて材料共々食卓に運びます。
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 この氷酒塩が今回の料理の肝なのです。


 胸肉には軽く塩味が付く程度なので、ポン酢と好みの薬味を揃えます。今回は茗荷と生姜と大葉。
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 いつものようにメインの小鍋立てまでの間に前菜で冷酒を軽くやって気分を盛り上げます。^^

 
 鍋の昆布だしが80℃程度になりましたら、葛打ちした胸肉をそっと沈めます。
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 しゃぶしゃぶではないので、粉を落とさないようにそっとです。鍋底にくっ付かないよう昆布の上で引き揚げを待たせましょう。


 1分ほどで中まで火が通りますのでそっと引き上げて、今度は氷酒塩に沈めます。
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 これにより、べと付いた衣がきゅっと引き締まって固まります。透明な葛の衣でコーティングされるのです。これの喉越しが最高です。


 好きな薬味を乗せてポン酢にちょいと浸けて頂きます。
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 ひんやりツルリで技ありの胸肉もふっくら。これは我ながら夏の逸品だと思います。


 茗荷も大葉も好いのですが、自分の中でのベストマッチはおろし生姜
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 夏にはピリッとした生姜の刺激が爽やかに感じます。

 
 モロヘイヤのしゃぶしゃぶもいけますね。
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 この食べ方、はまりそうです。^^


 さて、最後のお楽しみはダシの利いた葛湯です。葛鶏の片栗粉が徐々に溶け込み、このような葛湯になっています。
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 適度なとろみが付いた上品なスープとなっています。自然塩で味を調え、残ったモロヘイヤや薬味も加えて最後の〆となります。



 夏の暑さの中でもなんとか小鍋立てを楽しめないものかと考えていて思い付いたのが、この冷やし葛鶏でした。江戸期の調味料、酒塩もフルに活用してを楽しむ晩酌に仕上げてみました。これを冬仕様にするとしたら、少し甘味も加えて味醂醤油に漬けてから葛打ちし、温かいままツルリと頂くのも乙ではないでしょうか。小鍋立てシリーズ、まだまだ、続きますよ。^^
2016/09/05(月) 05:00 | trackback(0) | comment(2)
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