鶴岡から新潟に向けて南下していますが、村上市の三面川(みおもてがわ)ではサケ増殖の歴史と加工品の勉強をします。我が国のサケ増殖事業はほとんどが明治期以降に欧米の技術を導入して始められていますが、三面川では藩政期に藩の事業として進められているところが凄いのです。サケの産卵生態や回帰性なども熟知して、資源培養の技術を構築していました。そして、独特のサケの塩蔵加工法を普及させ、冷凍保存が出来ない時代に一年中サケを賞味していたのでした。
あいにくの雨ですが、左の改修中の建物がサケ博物館であるイヨボヤ会館。正面がサケの加工品販売やサケ料理を提供するサーモンハウスです。
イヨボヤとはサケのことですが、この地方独特の言い方ですね。古くからサケが親しまれてきた証です。
イヨボヤ会館はエントランスからすぐにシアターに続きます。
村上の自然や習俗とともにサケ増殖の歴史やサケの生態について美しい映像で解説されます。
館内に再現された稚魚飼育水槽。こんなところで遭遇するとは。。。なんか仕事で来たような感じ。^^
近年はアルミ水槽も普及していますね。サケの稚魚は放流までこの水槽で育成されます。
地下のトンネルのような廊下を進みますと、次々とサケの映像が飛び出します。
かなり長い通路なので一体どこへ行くのだろうと不安になります。
どうやら突き当りは三面川の川辺のようです。
川底を覗けるガラス窓がいくつもあります。豪雨が降ったためかお客さんはほとんどいません。まだ、サケが遡上してこないからかも知れません。
そうなんです。この窓は三面川に造成した種川というサケの繁殖河川を覗けるのです。
残念ながらサケの遡上期はまだ先なので、サケの姿はありませんでしたが、アユやウグイが元気に泳ぎ回っていました。10月に入れば、この窓からサケの産卵が観察できるのでしょう。
館内にはサケの文化に関する展示もありました。
サケの皮で帽子やジャケットまで作られるのですね。。。
見学を終わってちょうどお昼になりましたので、お隣のサーモンハウスでランチです。
サーモンハウスの2階ははらこ茶屋という食堂です。様々なサケ料理があります。
こちらはサケのタレカツ丼です。
タレカツ丼は新潟名物でソースではなくヒレカツにそばつゆのような醤油ベースのタレがかかります。これは豚肉をサケに置き換えたタレカツ丼になります。
大きな切り身が3枚も乗っかっております。
ソースと違って優しい味付けなので、見た目よりもスイスイ入ります。
こちらは鮭御膳。サケ料理が4品付いています。
主食がサケのような感じです。^^
サケのフライの上にはキスのフライまで。
どちらも衣がさっくりとして身がふんわり。
サケの味噌漬け焼きです。
昔ながらのホッとする味わいです。これだけでご飯2膳が食べられそう。^^
ちょっとピントが甘いですが、サケのすり身の煮物とサケの南蛮漬けです。
様々に形を変えてサケが登場してきます。
デザートの牛乳寒天寄せ。
ブルーベリーのジャムがアクセント。普通に美味しかったです。^^
さて、サーモンハウスを後にして村上の市街地を走り、塩引き・鮭加工品の専門店を訪れます。
味匠喜っ川さんです。喜っ川さんの喜は正しくは七を品のように三つ重ねた文字です。元々は酒蔵だったようです。今では鮭の酒びたしで有名ですね。2010年にはJR東日本大人の休日倶楽部のCMで吉永小百合さんがここで撮影されていますね。
蔵の中に入りますと夥しい数のサケの塩引きが天井から下げられています。
あまりの迫力に圧倒されてしまいます。サケの腹は二カ所を開き、中央部は繋げてあります。こうすることによって、鉛筆くらいの棒2本で腹を開いて乾燥を促せます。まさに知恵ですね。
この村上の塩引きは独特の気候により生み出されるもので、乾燥がこれ以上強いと北海道の鮭トバのようになり、湿度が高いと黴が生えてしまうそうで村上でしかできない特産品なのです。昨年のサケは間もなく1年を経過しますが、常温で保存が可能なのです。
店内には塩引き以外の鮭加工品もたくさん販売されています。
郷土料理の鮭こかわ煮とスライスされた塩引きを購入しました。
こちらは自宅に戻ってからの画像ですが、塩引きは酒に浸して、こかわ煮は吸い物にしました。
鮭の酒びたしは酒漬けではなく、食べる少し前に日本酒を振り掛けておきます。硬さと塩味が和らぎ、美味さが倍増します。酒は新潟県阿賀町の麒麟山。本醸造ながら品格のある淡麗辛口は食中酒として最適です。
気になるこかわ煮ですが、鮭のすり身に皮やイクラを練り込んだものらしいです。
細かな皮は散見されますが、イクラはたまに欠片が見つかります。
村上には100種類を超える鮭料理があるそうで、鮭食文化の街として脚光を浴びています。村上の気候風土の中で発酵して生まれる塩引きをはじめ、骨や内臓、エラにいたるまで使う鮭料理の数々。鮭を愛し、育て、無駄なく利用するこの文化。日本が忘れかけている大切な精神です。資源の乏しい日本でこそ、このような食材を利用し尽くす文化を継承していくことが存続の鍵になるでしょう。大量消費文化は日本には合いません。ホテルのパーティーの食べ残しやコンビニ、回転寿司で放棄される食品の多さにはこの国の行く末を案じざるを得ません。
イヨボヤ会館
・所在地 :新潟県村上市塩町13-34
・電 話 :0254-52-7117
・開館時間 :9:00~16:30
・閉館日 :12月28日~1月4日
・駐車場 :あり
サーモンハウスはらこ茶屋
・所在地 :新潟県村上市塩町13-34
・電 話 :0254-52-1990
・営業時間 :11:30~15:00/17:00~22:00
・定休日 :無休
・駐車場 :あり
味匠 喜っ川
・所在地 :新潟県村上市大町1-20
・電 話 :0254-53-2213
・営業時間 :9:00~18:00
・定休日 :元旦
・駐車場 :あり