震災の前年に逝去された恩師の別荘が福島県のいわき市にあります。奥様が時々来て、管理されているのですが、以前より食器を処分するので取りに来てほしいと言われておりました。我が家は東日本大震災で3割くらいの食器を失ったので大変有り難く、図々しくも頂きに上がりました。その際、名物女将のいる割烹が近くにあるので、お昼をご馳走すると仰いました。じぇじぇ、食器を頂いた上に割烹でランチなんか飛んでもございませんと尻込みしたのですが、震災以降、庶民価格の献立も出すようになったとのことです。
その割烹は一平さんと言います。夏はウニ、冬はアンコウで名を成した有名店です。
歩くうにって何だろうと思ったら、要するに活ウニのことで殻を開けた後もしばらくは棘を動かしてうごめくからなんでしょうね。
暖簾を潜ると和風庭園の通路となり、手水鉢には水が滴り落ちています。
料亭や割烹なんぞはそうそう来られる処ではありませんので、緊張感が走ります。^^
通されたのは宴会でもするような大広間。でも、座卓やテーブル席が並べてありました。
高齢者で畳に座るのが困難な方もいらっしゃるのでこの配慮は優しいですね。
本来、ランチでも3,000円以上する割烹ですが、震災以降に出すようになった鰹あぶり重はセットで800円です。
それにしても安いですね。副菜やコーヒーも付くようですし、その辺の食堂と変わらないお値段です。
最初に緑の豆腐にダシの利いた餡がかけられて登場します。こういうところが料理屋さんですね。
葛で固めた抹茶豆腐かと思ったら、モロに豆腐でした。抹茶入り豆腐かな。。。
豆腐を食べ終わったところにタイミングよく、鰹あぶり重が出されます。
炙った鰹をご飯に乗せただけではありません。イクラやフカヒレなどの高級食材も惜しみなく使われています。炙った鰹にドレッシングのようなものを塗してありますね。
漬け物は大根の梅酢漬けと小茄子にいわき名産の紫蘇巻きです。
福島県の紫蘇巻きは腹帯のように巻くのですね。塩漬けした大根を拍子木に切って、同じく塩漬けされた青紫蘇の葉で巻いてあります。単にしそ巻きと言いますと宮城ではクルミ味噌を巻いて揚げた物を指しますね。
奥様が私のために煮魚も頼んで下さいました。これはサメガレイの煮付けです。宮城ではホンダガレイと呼びます。
味付けは割烹にしてはかなり甘め、お客筋の好みなんでしょうか。食後にはコーヒーまで付いて、充実の800円でした。ただし、追加の煮魚は900円でした。
食事の後半、女将の長谷川雅子さんがそばに座られて福島第一原発事故による放射性物質汚染の悲惨さをお話になりました。一平さんはウニやアンコウなど、いわきに水揚げされる前浜物を料理して提供してきましたが、現在、福島県では安全が確保された軟体動物のごく一部を試験操業する以外、漁業は全面的に規制されています。それがいつまで続くのか全く先が見えておりません。名物のアンコウも青森県から、ウニは北海道から仕入れているそうです。いわきの観光にも尽力されてきた長谷川さんは本当に悔しそうでした。
目の前に広がる広大な海の恵みが何年にも亘り、利用することが出来ないのが福島の現実です。それに、現在でも汚染された地下水が毎日、何百トンも海に流れ込んでいます。事故から2年以上経過した先月から、観測用井戸のセシウム、トリチウム、ストロンチウムが急上昇しているのは溶解した炉心がメルトアウトして、水脈に達したからではないでしょうか。でも、それだったら大規模な水蒸気爆発が起きますよね。厚い湛水層でなければ、爆発も起きないのでしょうか。。。
一体、原発敷地内の地下で何が起こっているのでしょうか。この辺の合理的な説明を電力もマスコミも規制委員会も保安院もしてくれていないように思います。事故により国土のみならず、貴重な資源までが汚染され、その補償で支払われる金額や果てしなく続く事故処理に掛かる経費を考えると、原発は決して安い発電方法とは思えないんですけど。。。不信だらけの原発がこの国では、これからも稼働していくのですね。やっぱ、日米原子力協定の縛りなのかな。
割烹一平
・所在地 :福島県いわき市小名浜字下町75
・電 話 :0246-54-3311/0120-54-3316
・営業時間 :11:00~20:00(日~15:00、祝~19:00)
・定休日 :月曜日、年末年始
・駐車場 :あり