イタリアの焼きパスタTestaroliを試食
カテゴリー: 料理:麺類
イタリアからたくさんの食材が届きました。話が長くなりますが、今年は支倉常長を団長とした慶長遣欧使節団派遣からちょうど400年目に当たる節目の年です。実は出航の2年前に伊達藩を巨大津波が襲って甚大な被害をもたらしました。その復興のためにメキシコとの貿易を取り付けることが派遣の目的だったという説もあるのです。当時のメキシコの宗主国はスペインであり、スペインを動かすためにはイタリアのローマ法王の口添えが必要になったのです。そこで、結果的に慶長遣欧使節団の最終目的地はイタリアのローマになったのでした。
この400年を経た不思議な符合に心が動いた伊達な末裔たちがいま、イタリアやスペインとの新たな交流を図るために民間ベースで精力的な活動を繰り広げています(ミヤゲーゼ)。イタリアに嫁いだ二人の有能な女性をキーステーションにあらゆる人脈を使って文化交流を進めています。私は食文化の交流というジャンルで陰ながらお手伝いさせて頂いております。
話を戻しますが、これらの食材は4月に訪伊した日本からの使節団が持ち帰った物やイタリア在住の彼女たちの帰国土産だったのです。今回はこれらを皆様にお披露目する前に、ミヤゲーゼの首謀者?の一人ぶんたろうさん夫妻をお呼びして料理手法確認のためのプチ試食会を開催しました。
届いたイタリア食材はどれも懐かしい物ばかりでしたが、全く見慣れないものも含まれてました。この二つの巨大な円盤ですが、直径は40cm、厚さは約3mmです。
これはTestaroli(テスタローリ)と呼ばれるクレープのように焼いたパスタです。古代ローマ時代からあった最も古いパスタとされています。主な産地はトスカーナ州の北西部からジェノバが州都のリグーリア州になります。私はかつて、留学生で来ていたイタリア人を訪ねてイタリアを旅したことがありましたが、主にベネチア周辺やローマ、サルディニアだったので、この北西イタリアの名産に巡り会わなかったのでしょう。それにしても、ペスト・ジェノベーゼは日本にも普及しているのに、この焼きパスタはまだあまり知られていないようですね。
ぶんたろうさん夫妻との拙宅での会食はお互いの子供が小さい時以来ですから、20年ぶりくらいになるでしょうか。Testaroliの試食とは言え、せっかくですから、腕によりをかけます。
お互い子育てに忙しかった時代は落ち着いてお客様を食事に誘うこともそうそう出来ませんでした。TestaroliをPrimopiattoとして、一応、イタリアンのフルコースにしてみます。
Aperitivoにはイタリアのレモンリキュールを炭酸水で割ってお出しします。これは亡くなったイタリア通の恩師に頂いたものでした。
この瓶のデザインが洒落ているでしょ。イタリアの国の形をしているのです。爪先上方のサルディニア島はさすがにないですけどね。
まずは夕暮れのデッキで軽く食前酒を飲みながら昔話。
この季節、蚊が多くなりますので、素肌には虫除けシートを塗り付けております。お互いまだ、子供がいなかった頃、一緒に岩手山にキャンプに行ったのは良いのですが、夜中にカゲロウだったかトビゲラだったかの大群に襲われて酷い目に遭ったことを思い出し大笑い。^^
さて、室内に入り、ワインで乾杯です。当方でもキアンティを用意していましたが、ぶんたろうさんもルフィーノを持ってきてくれました。これも不思議な符合ですね。^^
この4脚のワイングラス、実は4半世紀前にぶんたろうさんが我が家で4人で吞むためにと下さったものだったです。大震災で多くの食器は失いましたが、このワイングラスは奇跡的に残りました。それが、このような形で使うことが出来て感無量です。
Antipasto mistoですが、定番の生ハムや焼き野菜も盛り込んでいますがちょっと工夫もしています。
上の写真、右手前のサラミから時計回りで、生ハムの桃巻き、緑オリーブとゴルゴンゾーラ。下の写真、右手前の生ハムのホワイトアスパラ巻きから同じく時計回りで油ガレイと小エビをポレンタ衣で揚げたフリット、焼き野菜はバルサミコと醤油の詰めで頂きます。そして、中央のグラスですが、次で説明致します。
実はこれは気仙沼のあじ蔵さんが創作したメカジキとメバチの刺身サラダです(関連記事)。
マヨネーズも使っていますので、フォカッチャやクラッカーにも合うと思い、Antipastoに加えてみました。なんだか、これが一番気に入られたようで、ちょっと微妙。^^
続いて、Insalataですが、これにイタリアからやってきた乾燥海藻を使ってみます。
これは日本にも近縁種が分布しますダルスという海藻です。あまり海藻を食べないヨーロッパや北米でもサラダなどに使われています。これは乾燥品なので生のプリプリカリカリした食感はありませんが、海外ではこの乾燥品が好まれているようです。
今日はダルスに菜園のキュウリ、プチトマト、かきちしゃ(サンチュ)やイタリアンパセリ等にパプリカ、空心菜の芽、紫玉葱を合わせています。
ドレッシングは人参ベースで、各自が取り分けてからかけてもらいます。
さて、続いてPrimopiattoですが、本日の主役であるTestaroliです。適当な大きさに切ってから熱湯に2分ほど浸します。
意外としっかり硬く、強い歯応えがあります。クレープを想像してたら大きく外されました。南部藩の蕎麦かっけや伊達藩のハットとも似ています。
リグーリア州で定番のペスト・ジェノベーゼ(バジルペースト)で頂いてみます。
面白い食感ですね。いわゆる硬質小麦デュラムセモリナを使ったパスタとは違うカテゴリーですね。中力粉ぐらいの感じでしょうか。
ペスト・ジェノベーゼは菜園のバジルが絶好調なので、お披露目会本番の分も合わせて作っておきました。
いつもは松の実の代わりにカシューナッツを使うのですが、今回はマカダミアナッツを使ってみましたが、これが佳い感じに出来上がりました。写真には写っていませんが勿論、パルメジャーノの粉末も加えております。
次に本日のScondpiattoですが、Polpo(真蛸)をトマトソースでじっくり煮込みました。ちょっぴりアラビアータにしてあります。
日本料理の柔らか煮の技法も取り入れ、最初に炭酸水と薄い醤油で小一時間煮てから、トマトソースでさらに1時間煮ております。トマトソースにはイタリアから届いたアンチョビーもたっぷり使っております。
Contrno代わりにPolenta(ポレンタ)を添えてみました。
Polentaはいわば、トウモロコシの粗挽き粉で作った蕎麦がきだと思って下さい。イタリア北部での食事にはよく登場しましたね。皆様、慣れないせいか、反応が今一。これでもスープやバター、ミルクも使ってイタリアのポレンタより数段美味しく出来ているのですがねぇ。。。(TT)
タコのトマトソースが残っていますので、即興でTestaroliを焼いてみました。直感で薄力粉に片栗粉を加えたら似るのではないかと思い2割ほど混合しました。
フライパンを使いましたが、厚手の鍋や焙烙のようなものでじっくり弱火で焼けば、全体的に一様な焦げ目が付くのかも知れません。実際、イタリアではテストと言われるテラコッタの浅鍋(現在は鋳鉄製)で蓋をして焼いているそうです。 茹でずにそのまま使いましたが、かなり似てますね。ソースとの相性もバッチリ。蕎麦粉も使ってみたりすると面白いかも知れません。和製Testaroli完成の日もそう遠くはないと思います。^^
この後、Dolcheでジェラートにクッキーとブルーベリージャムを混ぜてサイダーを回しかけた物をお出ししましたが、その頃にはワインもほぼ二人で3本空け、さらにスピリッツにも手を出し始めており、完全に出来上がって撮影を失念してしまいました。^^
ミラノのTomokoさん、Midoriさん、そして運び屋を務めた志津編集長、ありがとうございました。トスカーナやリグーリアの伝統パスタTestaroliの特性が何となく把握できたように思えます。今まで日本に普及しなかったのは、乾燥パスタほどの保存性がなかったからでしょうね。クレープのように短時間で焼ければ普及したのでしょうけど、どうもじっくり時間をかけて焼く物のようです。近年になって、今回のような真空パックが使われるようになって、Testaroliも世界に向けて旅立ち始めたのでしょう。
いずれにしましても、Testaroliはみちのくの蕎麦かっけやハットに繋がるものであり、逆に言うと日本在来のこのようなパスタをイタリアのソースで食べてもイケル可能性があることもわかりました。
実は昨晩、七夕で賑わうの仙台のど真ん中でTestaroliのお披露目が行われました。会場は三越南の我らのたまり場「なかなか」を借り切っての開催でした。
イタリアから運んで下さった志津さんもこれは初めて食べたとのこと。15人で1枚だったので、ジェノヴァ風に馬鈴薯やインゲンで増量しましたが、評判は良かったですね。県内のイタリア料理店でも扱ってくれないでしょうか。。。