【山形県河北町谷地】冷たい肉蕎麦の故郷を訪ねる
カテゴリー: 外食:蕎麦
前記事で東仙台にある冷たい肉そば専門店をご紹介しましたが、妙に上品に感じて違和感も覚えました。肉そば発祥の地であるかほく(河北町)を店名にされているので、原点に近いとは思うのですが。。。残念ながら、今まで河北町の肉そばを食べたことがありませんでした。隣接する東根市、天童市、西川町などではさんざん食べてきたのですが、もっと野趣のある力強い蕎麦だった記憶があります。まず蕎麦がもっと黒い田舎蕎麦でつゆももっと濃い甘辛味だったはずです。元祖はこのように上品なのか、それとも仙台人向けにモディファイしているのか、居ても立っても居られなくなり、峠を越えて調査してきました。^^
ここで山形の肉そばについて、少し触れておきましょう。河北町のHPによりますと、その昔、居酒屋というものがなく、蕎麦屋がその代わりをしていたそうな。馬肉の煮込みで酒を呑み、〆に板そばを食べるのが河北町の旦那衆の定番だったとか。ある時、残った煮汁に蕎麦を入れてみたら、なんということでしょう。いまだかつて経験したことのない味わいになっているではありませんか。
そこで、蕎麦屋さんも改良を加え、そばが伸びにくいように冷たいつゆを張ったそうです。ただ、大戦が近づくと、馬は軍用に徴用され、馬肉も手に入らなくなったため、鶏肉に替えてみたところ、これがまたイケた。お客の評判も良く、戦後は鶏肉を使った肉そばが定着し、現在に至っています。河北町は人口2万人弱の小さな町ですが、谷地地区を中心に肉そばを食べさせるお店が20軒ほどあります。今回はその中でも一世紀近く創業を続けてきた二つの老舗の暖簾を潜りました。そのために朝食を抜いて立ち向かいます。^^
さて、気になる調査結果ですが、最初に二大老舗の一つ一寸亭本店(ちょっとてい)さんを訪問しました。大正5(1916)年の創業、元祖冷たい肉蕎麦のお店です。
開店の11時少し前には着いたのですが、既に待合席には10人ほどが座ってます。上の写真は食べ終わって出てきた11時20分頃の状況ですが、駐車場は満車、待合席は埋まって、立ちの行列まで出来ていました。しかも県外ナンバーが目立ちます。恐るべし、一寸亭。。。
入店すると、店主が小気味よく座席を捌いていきます。おすすめメニューの他にも献立は意外に多く、ソースカツ丼やラーメン類もありましたよ。
でも脇目も振らず、無心に冷たい肉そば(並)650円をオーダー致します。大盛りを頼む方も多かったですね。さすが麺食い王国、山形。^^
さっそく運ばれてきました本場河北町谷地の冷たい肉そばです。
外見は近隣市町のものとほとんど差がありません。ただ、葱の周囲に固まりかけた鶏脂を発見。麺量は200g位でしょうか。そんなに多くは感じません。副菜はつぼ漬け風の大根でした。なお、テーブル上の薬味は一味唐辛子でした。
鶏肉はやや薄めですが、親鶏ですのでコリコリとした食感で、噛むほどに旨味が溢れてきます。
ももと胸を取り合わせて5枚でした。期待していたほど多くはありませんね。
そして、蕎麦ですが、やはり、色黒の田舎蕎麦でした。
かなり硬めでよく噛む必要があります。太さもそれほど太くなく、食べやすい中太ですね。
一寸亭さんの肉そばの最大の特徴はこの脂でしょうね。
敢えて浮かせているといった感じです。ラーメンで言えば醤油味こってり系?? 少なくとも周辺市町も含めて冷たい肉そば界では、断トツのこってり加減ですね。スープ自体はがっちりダシが利いていて、味付けもメリハリが付いていますが、決してこってりではなく、飲めるくらいのスッキリなのですが、水面を漂う半流動体の脂がスープの間に立ちはだかります。100円増しのおろし肉そばというのもあり、結構出ていましたね。脂のくどさをスッキリさせるのでしょうけど、なんかおかしいな。かつては脂も貴重な栄養だったのでしょうね。
さて、1軒目の一寸亭さんをクリアーし、次の老舗に向かいますが、若い頃と違って連食は応えます。それに、通常の肉そばは740Kcalくらいはありますが、あの肉そばはもっとハイカロリーでしょう。スープを飲み干してはいませんが、700Kcalは摂取したはずです。そこで、町内を5000歩程歩いて200Kcal消費、その後、温泉に小一時間浸かって240Kcal、合わせて440Kcalほど消費させました。^^
こちらは温泉施設のひなの湯です。なんと入浴料がたったの250円。いいなぁ山形は。
結構混んでいたので、浴室内の写真はひなの湯のHPよりお借りしました。浸かって休んでお茶飲んで、また浸かって休んでお茶飲んでをゆっくり繰り返します。シャンプーやドライアーなどの装備はありますが、寝っ転がれる畳の部屋は全て有料でした。
さて、お腹も少しこなれたところで、2軒目の老舗、いろは本店さんを訪ねます。こちらも一寸亭さんとほぼ同じ頃の大正9(1920)年創業です。
午後2時頃だったのですが、駐車場はまだ8割方埋まってます。こちらも絶大な人気ですね。いろはさんは本店の他に支店と分店が河北町谷地内にあります。店内では若い女性店員さんがファミレス風の発声で案内してくれました。^^
メニューの構成や値段は一寸亭さんとよく似ていますが、ソースカツ丼のようなご飯ものはないようです。
一寸亭さんと大きく異なるのはきしめんではなくてうどんがあることです。もちろん比較のために冷たい肉そば普通盛650円をお願いします。
これがいろは本店さんの冷たい肉そば(普通盛)です。一寸亭さんより少し鶏肉が多いかな。
脂もさほど目立たず、ごく普通の顔立ちです。鶏と長葱だけのシンプルな具、薬味も一味唐辛子ですね。
鶏肉は肉そばの特徴である硬いけど味のある親鳥です。やはりももと胸を使っており、味付けもしっかりしています。6枚乗ってます。
6枚乗ってますが、一寸亭さんより少し薄くなったような気もします。この鶏は一度加熱して冷やしてから薄切りにしているのでしょうか。生の鶏をこのように切るには冷凍物の半解凍状態でしか出来ないように思います。
蕎麦はもちろん色黒の田舎蕎麦、一寸亭と同じく中太ですが、決定的な違いは縮れが付けてあることです。
ラーメンの縮れ麺のように打った後に揉み込むのでしょうか。当然ながら、麺つゆの絡みはこちらの方がずっと良いですね。
つゆに浮かぶ脂球は透明です。温度も一寸亭さんよりは高めですね。
分厚い固まりかけた脂が浮いていないので、つゆを安心して飲むことが出来ます。味付けは甘味塩味がしっかりしています。
さて、調査結果ですが、今回は冷たい肉蕎麦発祥の地山形県河北町谷地でも特に歴史の深い老舗の2軒で食べて参りました。たった2軒ですが、それぞれの支店分店を含めると、消費される肉そばの多くの割合を占めている思われます。そして元祖の地における肉そばの共通点はこうではないでしょうか。。。
① 麺は中太色黒の田舎蕎麦でかなり硬めに茹でられている。
② つゆはがっつり鶏だしが利いており、醤油ベースの甘辛い味付けである。
③ 具となる肉は老鶏のももと胸を薄切りし、しっかり煮染めてある。
④ つゆの温度はキンキンに冷たいわけではなく、ほんのり冷たい。
⑤ 鶏以外の具は長葱だけ。卓上の薬味は一味唐辛子。
⑥ お値段は普通盛で650円前後。
という点からしますと、東仙台の冷たい肉蕎麦専門店かほくさんの商品は、①の麺は現地よりかなり白くなっており、②のスープのダシや味付けもやや淡泊、③の具材は少な目ですが容認範囲、その他脂の少なさ等からいろは系の肉そばを仙台人に向けに改良されているのではないかという結論に達しました。世界の中国料理や寿司はその国の嗜好によって様々な形に変わって普及しています。それは仕方がないことですが、現代は本場の味を求める人も増えています。そういうお店が地元を離れても経営できると良いのですがねぇ。。。
一寸亭本店
・所在地 :山形県西村山郡河北町谷地所岡2-11-2
・電 話 :0237-72-3733
・営業時間 :11:00~15:00/17:00~19:00
土・日・祝 11:00~19:00
・定休日 :水曜日
・駐車場 :あり
いろは本店
・所在地 :山形県西村山郡河北町谷地中央2-1-15
・電 話 :0237-72-3175
・営業時間 :11:00~18:30(売り切れ次第終了)
・定休日 :木曜日
・駐車場 :あり
温泉施設 ひなの湯
・所在地 :山形県西村山郡河北町谷地字下野269番地
・電 話 :0237-71-0333
・入館時間 :6:00~22:00
・料 金 :大人 250円
・定休日 :第二木曜日
・駐車場 :あり