イタリア人でも食べられる田楽と草香麺
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今回の記事は内容が複雑です。で、結論から申しますと、イタリア人が食べられる田楽と非常食に成り得る草香麺料理の開発です。現在、NPO法人ファイブ・ブリッジさんを中心に、慶長遣欧使節団出航からジャスト400年を記念して、宮城(伊達)とイタリアとの新たな交流を模索しています。
東日本大震災の翌年にはイタリア北部地震が発生して、17名が亡くなっています。イタリアと日本は一緒に戦争に負けただけではなく、地震国・火山国としても類似性が高いのです。それに両国民とも麺食人であり米食人ですしね。^^
私は食文化の交流という側面から、この活動に参加させて頂いていますが、当面のテーマは二つ。
① 宮城の特産である笹蒲鉾や揚げ蒲鉾(薩摩揚げ)をイタリア人に食べてもらうこと(関連記事)。
② 非常食と成り得る茹でる必要がない草香麺をイタリアにも普及させること(関連記事)。
これらのことをイタリアにお住いの日本人の方々と、FaceBookやスカイプミーティングを通じて煮詰めています。5月中旬にはメンバーの一部がイタリアのイベントに参加します。その際、①・②の試作品を持参してもらいます。今回の記事は、その試食会の報告です。会場は三越南の居酒屋なかなかさんですが、こんな我が儘を聞いてくれるのもこのお店ぐらいしかないでしょうね。
蒲鉾類については、ダシで炊いた伝統的おでんをイタリア人に食べさせたいのが、私の正直な願望ですが、多くの食材を持ち込んだり、現地で材料を集めるのが大変です。そのような事情から、第一弾として味噌田楽ということになってきたのですが、イタリア人は甘味をデザートと認識しますので日本の田楽味噌は通用しないのではないかという懸念もあり、イタリア人でも食べられる田楽サルサの検討が始まりました。
試食会の前にイタリアで市販されている各種サルサと田楽の相性をチェックしておきました。
用意しましたのは、BLACK PESTO(黒リーブのサルサ)とPESTO Genovese(ジェノバ名産バジリコのサルサ)で、これらを茹でた揚げ蒲鉾、豆腐、蒟蒻、小蕪で試します。
感想ですが、このような感じです。あくまで日本人の感覚ですが。。。
食材\サルサ | BLACK PESTO | PESTO Genovese |
揚げ蒲鉾 | △ | ○ |
豆 腐 | △ | △ |
蒟 蒻 | × | × |
小 蕪 | △ | △ |
揚げ蒲鉾はしっかりした味がついているので、あまりソースに左右されません。油も使われていますので、爽やかなバジリコの風味のGenoveseとも合いますね。困ったのは蒟蒻、ソースを弾き返す感じで口の中でソースだけが直ぐになくなります。下味がなくただ、茹でただけなので、後半が味気ない。蒟蒻はイタリア人好みのブロードでよく味を染ませておくか、日本の練り味噌のようにまつわり付くサルサが適しているようです。
豆腐と小蕪は自身の味が淡泊なのでPESTO類との馴染みも良いのですが、なにか、物足りません。むしろ、もっとナッツ類を多く含むコッテリとしPESTOだと合うかも知れません。でも、日本人の味覚で判断していますからねぇ。やはり、早くイタリア人の評価も頂かないと駄目でしょう。
田楽サルサの一つとして、オリーブとケッパーとアンチョビーのサルサを前回の反省を踏まえて改良しています。
このソース、酸味が効いてパンチがあるのですが、脂の多い肉や油を使った料理には絶大ですが、淡白な田楽には少し強く感じました。そこで、オリーブやケッパーの酸味を水出ししてから使いました。さらに、玉葱と大蒜少々を加えて攪拌してから、粉チーズ、アンチョビー、蜂蜜を加えて円かにします。
ここで登場するのが秘密兵器。イタリアで密かなブームの食用酵母フレークです。
イタリアのMidoriさんに送って頂きました。そのまま、食べると納豆のような香りと仄かな苦味があるのですが、料理に加えますと、味に深みが増してきます。
事前に出来上がった改良サルサに加えて対照区と比較します。
よく混ぜて口にしますと、圧倒的大差で酵母フレーク入りの勝ち。この味をイタリア人が好むということは今後の料理開発に極めて重要な情報です。
早速、手短なもので改良サルサとの相性をチェックしてみます。
揚げ蒲鉾との相性は過日のシオーモな夜でチェックしており、今回はその反省を踏まえて作ってますのでチェックしなくても大丈夫でしょう。前記の市販のイタリアンサルサ同様、蒟蒻はサルサを弾き返します。酸味を押させて円やかになり、酵母フレークでコクも出したのですが、茹でただけの豆腐やキノコのような淡泊な味の食材には、どうも口の中で味わいがぼんやりするのです。段々、不安になってきます。
こちらは草香麺用のアラビアータソースを作っています。これにももちろん酵母フレークをコソーリ使います。^^
辛みもただの唐辛子ではなく、旨味を伴ったかんずりを使っています。この他にコトルのひゃく料理長には冷製用のソースをお願いしており、アジアンテイストとして冷やし中華風や上海焼きそば風の調味料や具材も準備しています。
さて、試食会当日。皆様がお集まりになる前になかなかさんの2階へ食材を運び込みます。
2階は淡い赤を基調にした空間で12席ほどでしょうか。若いご主人の父上は陶器類に精通した方とのことで、センスの良い食器を揃えていらっしゃいます。今回は図々しくも使わさせて頂きます。
様々に取り揃えられた田楽のネタ。揚げ蒲鉾はぶんたろうさんの会社の製品です。
これらを皆さまに和・伊各種のサルサで試して頂きます。今回はイタリア人を招くことが出来ませんでしたが、イタリアの大学を出て、現在、翻訳・通訳の他にイタリア語とイタリア料理を教えておられるNorika先生が参加して下さいました。イタリアに精通した先生の感想がおでん・田楽のイタリア普及にとって重要な鍵になるでしょう。これにつきましては、最後に取りまとめて記載します。
今回も色々組み合わせてみましたが、ますます不安が高まります。
お湯だけで温めた田楽ですので、味の付いていない食品はイタリア系サルサでは味わいがぼんやりします。かといって、日本の田楽味噌では料理に砂糖を使わないイタリア人には、たぶん受け入れられないでしょう。
ただ、世界で人気のTERIYAKIソースはイタリア人も好むらしいのです。甘味が強いこの醤油味が受け入れられるのは、このソースを肉に付けながら焼くことで香ばしさ(メイラード反応による香気成分の生成)が加わり、さらに肉の脂が上手くまとめてくれるからではないでしょうか。
私の友人のイタリア人も、日本では味噌汁は飲めないのに、味噌ラーメンは大好物なのです。味噌や醤油でもニンニクや油が加わると受け入れられるのです。これをヒントにひゃく料理長にはレモン味噌、ねの吉さんからはクリチ味噌などをご提供頂いてチェックしています。両方とも抜群に美味しいのですが、やはりイタリア人による評価を急ぐ必要がありますね。今回の訪伊チームにはこれらを持参してもらい、現地で試して頂きます。
続いて水で戻る草香麺ですが、取扱会社ユームさんの佐藤さんと手戸さんが自ら持参して下さいました。ありがとうございます。
これは最近、日本と同様、地震が活発化しているイタリアでも日常食、非常食として普及するものと期待しています。
用意してきた冷製用のソースや炒め麺で試します。
ひゃく料理長の用意されたカッペリーニを想定したタコとトマトのソースは秀逸でした。仕上げにバジルのソースを一垂らしすることで、非常食ではなくご馳走の部類にランクインです。炒め麺類も調理に水を使わないので燃料消費も抑えられて、寒い季節の非常食にイタリアでも受けるでしょう。
市販のパスタ用レトルトソースでも試してみましたが、十分美味しく食べられました。
作って持参したアラビアータソースも問題なし。結論として、草香麺はどのような麺料理にもフィットすることがわかりました。まだ、試していませんが、ざるそば風にそばつゆで食べても美味しいとのことでした。イタリアにもレトルトや瓶詰のソース類はあるので、草香麺とセットで常備してもらえればよいでしょうね。大変美味しいし、栄養価も他の麺類よりはるかに高いので、日常的にも利用してもらいたいです。パスタ文化が根付いていて、ヘルシー志向が高まっているイタリアでは、ヒット間違いなし。
最後に、これもイタリアから送って頂いた葉巻風のチョコレート。デザート代わりです。
ミラノのTomokoさん、Midoriさん、ありがとうございました。さすが、イタリアはカカオ佳い産地を押さえていますね。
本日、ご協力頂いたなかなかさんは気の利いた肴や焼き鳥で気軽にお酒を楽しめる居酒屋さんです。
本日は開催趣旨をご理解頂き、イタリアワインをご用意頂きました。最後は月山から持ち込んだお神酒まで飛び出し、いつもの宴会となったことは言うまでもありません。^^
さて、今までの何回かの試食で草香麺は無問題なのですが、イタリア田楽には不安がますます高まります。甘味を使ったレモン味噌や味噌クリチは、日本人としては滅茶苦茶美味しいのですが、イタリア人にはどうでしょう。それとイタリア系のサルサも揚げ蒲鉾や魚貝類には合うのですが、味の淡い食材では、何かピントがずれているような気がしてならないのです。
そんな悶々とした気分の時、Norika先生から大変有難いメールを頂戴いたしました。概略をご紹介させて頂きますと、
・ 日本で日頃食べている「おでん」を「おでん」として紹介するのがやはりベストだと思う。
・ 「おでん」に練り芥子ではなく、いくつかのサルサを添えるのは、オリジナルも味わえるし、味の調整も出来るのでよい。
・ イタリアでも薄塩味の茹で肉に好みのサルサを付けて食べる料理(Rivolito)があり馴染める。
・ ただ、今回はどのサルサも合うような、違うような曖昧な印象。
・ お湯で茹でただけの野菜や蒟蒻にサルサは難しい。
・ 甘い味付けはイタリア料理にはない(料理に砂糖は使わない)。
・ 日本の田楽味噌はたぶん苦手、ただ、肉味噌にしたらいけるかも。
・ 魚貝類にレモンオイルやバジルソースが合うのは当然。これは日本料理ではない。
・ 味噌とチーズの組み合わせは悪くない(甘味が問題か?)。
・ イタリア料理はワインに合うことが前提。
・ 揚げ蒲鉾はオリーブオイルでカリッと炒めて、レモン汁で食べるのが好まれそう。
・ サルサは手作りが一番。瓶詰めは香りが飛んでいる。
これらの貴重なサジェスチョンで、私のモヤモヤがすっかり晴れました。やはり、味の淡い食材は下味と旨味添加が必要。茹で田楽ではなく、伝統的おでんで行くべきなのです。ただ、イタリアから事前情報で昆布などの海藻系の香りは好まれないので、イタリアのブロードか鰹節と鶏ガラベースのスープに薄口醤油と塩で調味した透き通ったツユで炊けば良いのではないでしょか。
今後、イタリアのイベントでは日本から持ち込めるだけのネタ(蒲鉾類や蒟蒻)と現地の野菜や魚貝類でなんとかおでんらしくすることは出来るでしょう。それにハーブを利かせたサルサを何種類か添えて提供するのが良さそうです。
本格的なイタリアでのおでん普及には、水産加工品の対EU輸出が面倒だし、鮮度も低下しますので、現地で作るしかないでしょう。そうすれば、イタリア人にも揚げ立てのすり身の美味しさを提供できるし、その横でパイロット店としておでん居酒屋をやってみるのも面白そうです。なんちゃって日本料理店が多い海外、少しでも日本の本物の美味しさを食べさせてあげたいですしね。
なかなか
・所在地 :仙台市青葉区一番町4-7-7
・電 話 :022-263-7090
・営業時間 :17:00~翌1:00
・定休日 :日曜(日、月連休時は月曜休)
・駐車場 :なし