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山形在来作物勉強の旅(2/4)よみがえりのレシピ

カテゴリー: 紹介:生鮮食材

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 蕎麦処山形翁(前記事)さんで腹を満たしたご一行様は、山形在来作物のドキュメンタリー、よみがえりのレシピ上演会場である山形国際交流プラザ 山形ビッグウイングへと向かいます。車中でワインも飲んだけど、雪中行軍と寒風ですっかり醒めました。^^ これから、山形の伝統野菜をしっかり勉強します。




 よみがえりのレシピ。まだ、30歳を超えたばかりの若い渡辺監督が2010年から撮影を始め、2年がかりで完成させたドキュメンタリーです。
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 正直、この時点までは山形県の伝統野菜の消費拡大と観光を狙ったPR映画で、いま、人気のアル・ケッチャーノの奥田シェフがそれらをご馳走にして、さらに購買意欲をそそるのだろうという下衆な予測もありました。ですが、見事に裏切られました。^^


 アメリカのような大量消費型社会になってしまった日本。買い物は車で量販店、ワンスットップで済む便利さにすっかり慣らされてしまいました。いつでも季節に関わりなく、多種多様な食品が安定した価格で並んでいる背景には、生産者への負担があることを忘れてはなりません。


 一次産業の産物でも工場製品のように定時定質定量定(低)価格での納品が要求されます。それに対応するための品種改良も進められ、収量が多く、見栄えが良く、保存性が高い品種が栽培の主役になっていきました。その影で古くから地元で愛されて伝承されてきた在来作物が姿を消して行ったのです。農家も売れるものを作らなければ、生きていけませんし。。。




 この映画は単なる在来作物の掘り起こしではなく、伝承、すなわち代々、伝えていくことの大切さを縦軸にしています。
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 全国的に有名になっただだちゃ豆もってのほかをはじめ、大変レアな外内島(とのじま)キュウリ甚五右ヱ門芋軟白雪菜。。。などなどが四季折々の農作業とともに紹介されます。そして、共通するのは「」。現代では、農家の方も種子メーカーから購入することも普通でしょうけど、かつては自分でを確保しなければならないのです。ましては地域に細々と伝わる在来作物の確保も大切な農作業だったことに気付かされます。  
 

 渡辺監督は野菜の「」に視点を置いて、世代交代というの伝承と作物の栽培という文化の伝承を融合させています。それを高齢者の過酷な作業と子供たちの楽しげな体験学習を織り交ぜながら世代を超えた縦軸を表現したかったのでしょう。それと、この映画の特徴は、、、です。弾ける火や折られた茎が効果音かと思うほどにクリアーで耳に響くのです。

 



 杉を伐採した後の斜面をお盆の頃に焼いて、短期間で収穫できるカブを栽培する庄内独自の焼畑農法
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 現在でも、漬物とされる温海カブは有名だけど、それから派生した藤沢カブ宝谷カブは知りませんでした。焼畑の作業は危険が伴うので高度な技術と知識が必要でしょうね。これはマニュアルだけで伝わる代物ではありません。地面を焼くことによって、病原微生物もなくなり、草木灰からの栄養で無農薬無施肥の自然農法が可能となるのですね。



 
 さて、この映画のタイトルはよみがえりのレシピです。料理が主役のように思えますが、奥田シェフは山大の江頭准教とともに助演男優でした。春日じゃありませんからね。トゥース!^^
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 奥田シェフアル・ケッチャーノは、鶴岡市にあるイタリアンのリストランテだけど、山形在来作物とイタリアンというマッチングは決して奇をてらったわけではありません。奥田シェフは鶴岡出身でもあり、早くから在来作物を料理に取り入れてきました。この映画で紹介される野菜たちが郷土料理として登場したらどうだったでしょう。NHKの小さな旅みたいに地方のノスタルジーを高揚させただけで終わってしまったかも知れません。




 アル・ケッチャーノの料理として華やかに登場する山形在来作物
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 現代人にも受け入れやすいイタリアンという舞台に、一見ミスマッチな伝統野菜を登場させたことで、現代の食卓にも繋がる可能性を高めることに成功しています。暗くなりがちな地方の習俗・伝統ドキュメンタリーに時々、日差しが差し込むようにイタリアンの逸品が紹介されます。在来作物の生産者の方々がアル・ケッチャーノに招待され、自分たちの育てた野菜のまた違った美味しさに驚いています。



 
 上映終了後に渡辺監督がご挨拶と制作意図を説明されました。お若いのに思慮深そうな面立ちですねぇ。憧れます。^^
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 制作の意図を掻い摘んでご紹介しますと、「何百年も伝承されてきた在来作物は生きた文化財である。社会の高度成長に適応できず、忘れ去られてしまったが、現在、価値観が多様化し、貴重な地域資源としても見直され始めている。地域の在来作物がよみがえり、地域社会の絆が深まることは食と農業の問題解決の処方箋(レシピ)となろう」。よみがえりのレシピは料理のレシピではなく、忘れ去られて行く物たちを蘇らせるための処方箋だったのです。




 渡辺監督が生まれた山形の庄内地方はみちのくで今、一番輝いている地域ではないでしょうか。今年、クラゲで有名な加茂水族館を舞台としたラブストーリーも製作される運びともなっています。藤沢周平の小説が数々映画化された背景にもこの地の説明できない魅力があるからでしょう。

 一方、気候や資源にも恵まれた宮城県ですが、食材でも観光でも、メンタルな面での呼びかけはどうも未熟なように思えてしまいます。数々の観光名所や杜の都仙台を有し、みちのくの玄関を標榜する宮城ですが、黙ってても人が来るメリットが逆に感性に訴える表現力の発達を少し遅らせたのかも知れません。いま、庄内から学ぶ物は多いような気がしてなりません。

 
 

 この映画、仙台上映が決まりました。4月13日~4月26日、木町通のフォーラム仙台です。近くなりましたら、下記のHPで詳しいお知らせがあるでしょう。

 

 フォーラム仙台 http://forum-movie.net/sendai/

・所在地   :仙台市青葉区木町通2-1-33
・電 話   : 022-728-7866

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2013/03/05(火) 05:00 | trackback(0) | comment(4)
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