隠れ茶寮で恩師の三回忌
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今年(2012)、最後の記事となりました。
この1年、ご閲覧、コメント頂いた皆様ありがとうございました。
なお、今年4月、父が他界しましたので、新年のご挨拶は
ご遠慮申し上げます。
さて、今月初めのことですが、恩師の三回忌のために久々に上京しました。お寺での仏事のあとは茶人なら憧れの大橋茶寮さんで会食となりました。
私もはるか昔、裏千家をホンの少しかじった事はことはありましたが、今はもう10分も正座が出来ません。正式な茶事懐石だったらどうしようと、内心ブルーになっています。茶事までの食事にも作法がありますが、全く覚えておりません。
ところで、こちらの大橋茶寮さんは港区虎ノ門の高層ビルに囲まれた谷間でひっそりと隠れるように日本の伝統を守り抜いております。
後ろにそびえ立つのは今年8月に完成したアークヒルズ仙石山森タワー。このミスマッチは現代日本の中で埋もれつつも脈々と継承される伝統文化の力強さを象徴しているようです。
腰掛待合とその近くに真っ赤に熾きた炭たっぷりの火鉢が冷えた客を暖でお迎えしてくれています。玄関の石畳には打ち水がなされ、おもてなしの心が伝わります。
和服の女性が丁寧なご挨拶をされましたが、ご当主の大橋宗乃さんだったのでしょうか。大橋さんはかつてこちらで裏千家の道場をされていた14代淡々斉宗匠のお弟子さんです。敷地内にある茶室守貧庵は2006年に有形文化財に登録されました。まさに大都会に残されたお宝的存在なのです。
長い廊下を巡って案内されたのは市松模様の襖が印象的な桂離宮を模したお部屋でした。
私の心配は外れました。茶事懐石ではなく会席料理での会食でした。緊張がスーっと抜けていきます。あぐらも許され、必要な方には椅子も用意してくれました。
献立表はなかったので、記憶を辿りながらご紹介します。まず、先付です。つまり会席でいう前菜のことですね。
手前から時計回りでお多福豆の甘露煮、鶏松風、公魚串焼き、帆立黄身焼き、鮑道明寺揚げ、茸和物柚釜、煎り銀杏。。。だったと思います。本当に細部にまで神経が行き届いております。
椀物は胡麻豆腐に一寸大根と雲丹が乗せられています。
胡麻豆腐が実に滑らかです。すましのなんと上品なこと。
向付は平目の昆布締め二杯酢。部屋の照明はかなり落としてありますので、時々ピンボケですがお許しを。
平目には菊花と柔らかいとんぶりのようなものが乗せられていましたが、何だかわかりませんでした。水前寺海苔の細々かなぁ。
鉢肴は鰤の照り焼きでした。織部の緑が照り焼きの焦げ茶とマッチしてます。
当然ながら、天然の寒鰤でしょうね。脂もほどよく乗って良い具合。
強肴は身欠鰊と里芋の煮物。
青物と天には紅葉麸が。鰊が実に柔らかく戻されていて、口の中でほろけます。
止め肴は柿膾でした。これもピンボケですがご容赦。
柿の甘みが酸味を和らげています。みちのくでもよく見られる膾ですが、なんとも垢抜けています。
ここで食事です。お決まりのご飯と止め椀、香の物です。
止め椀は普通味噌汁ですね。具には生麩でした。
正直に言いますとここまでに4合くらい呑んでいます。給仕される和服の女性が呑ませ上手なのです。^^ 周りの殿方もだんだん雄弁になっています。恩師のこと、科学のこと、政治のこと、原発のこと。。。皆様の熱き想いが語られます。
水菓子は林檎のコンポート。会席料理ではなんと呼ぶのでしょか。蜜煮?
添えてあるのはヨーグルトなので後口もさっぱり。
最後の濃茶には豌豆が入った餅が付きました。
餅は羽二重のように柔らかですが、甘さは控えめです。まったりとした濃茶が会食の最後を締めくくります。
都会のオアシスのような大橋茶寮、決して敷居は高いわけではなく、温かいもてなしの心に溢れております。本格的な茶寮でこんなにくつろげるなんて、全く想定外でした。これも恩師の奥様が参列者のことを考え、作法にあまりきつく縛られない会席料理にして下さったからです。そういえば、茶碗や袱紗もまだ取ってあったはずです。本当に久々に茶道の真似事でもしてみましょうかね。^^