【新潟県】越後妻有アートトリエンナーレ2012(6/6)
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大地の芸術祭見学最後の日は近場の十日町エリアの山間を巡り、越後川口ICに移動する途中で川西エリアのナカゴグリーンパーク会場でいくつかの作品を見たいと思います。今日も暑い、バテないように水分塩分の補給をしながら頑張ります。最初の目的地は廃校になった旧真田小学校の絵本との木の実の美術館です。
入り口の横に池があり、その中にバッタをデザインした獅子脅しが3匹いました。
バッタの尾の部分にワイヤーが結ばれており、校舎の方へと伸びています。きっと何かを上下運動させるのでしょう。
講堂の天井から吊り下げられた数々のオブジェ。枯れ枝を束ね色とりどりにペイントされてあります。
このうちの幾つかが時折、上下に揺れており、外の獅子脅しと連結されています。
閉校直前の3人の生徒が学校中を飛び回るというストーリーです。
これも山で集めた枯れ枝で作ってあります。
絵本と木の実の美術館というように木の実を使った作品がいくつもあります。
根気のいる仕事ですよね。何千何万という各種の木の実を集めるだけでも大変です。
これは道楽神様という巨大な藁人形。手足を広げて昼寝をしているようです。
地元に道楽神様信仰でもあるのでしょうか。
学校の周囲にも様々な作品が展示してあります。
ぶら下がった竹は備え付けの短い竹で叩くと色々な音を出してくれます。
続いてこちらも廃校になった旧名ヶ山小学校です。アジア写真映像館が開催されています。
旧真田小学校からここまで来るのに細い山道を乗り越えてきました。かつて、こんな立派な小学校に生徒が通って来るくらい人が住んでいたのですね。
体育館には大きなスクリーンに印刷された写真が垂れ幕のように展示してありました。
四季折々の里山の生活を描写しています。最近の印刷技術って凄いのですね。
探検家石川直樹さんのエベレスト登頂の生々しい記録も写真と動画で見ることが出来ました。
吹雪のエベレストの映像はど迫力。暑いのに背筋が寒くなりました。
この会場のすぐそばにひっそりと隠れるように営業しているお蕎麦屋さんがあります。その名はそばや清兵衛さん。
普通の民家に看板を取り付けたような外観。雪国らしく玄関は2階です。
普通の住宅の玄関を入り、店内も民家のお座敷風。
11時半頃だったので、先客は1人だけ。広々とした空間で蕎麦を楽しめそうです。
席に着くとすぐに冷たい麦茶と突出し。山グルミの小鉢は最初から卓上に置いてありました。
この先を期待させる演出ですね。突出しは茄子の素揚げを南蛮酢に浸したもの。蕎麦屋さんではあまり出合うことのない味です。
メニューもシンプル。蕎麦と天ぷらに絞り込んでいます。もちろん蕎麦は越後のへぎそばです。
天ぷらそばセットと盛りそばを1枚のへぎに盛ってもらうことにしました。
これでへぎそば2人前と天ぷら一人分です。
へぎそばの特徴は海藻のフノリをつなぎに使うところとへぎと呼ばれる木の箱に一口ずつ盛られることです。
天ぷらもボリューム満点。一人では多すぎるくらい。
紫蘇巻きエビや季節の野菜で8点ほど盛り込まれています。
へぎそばは江戸前の蕎麦通には評価されにくいのですが、フノリつなぎのためにスコンとした独特の食感となります。
夏は細打ちのへぎそばも佳いものです。サラッとした爽快感がありますね。
スルッとした喉越しも堪りません。
幾らでも食べられそうですが、寒天と同じ成分であるアガロースが練り込まれているのでダイエッターにも良いかも知れません。
そば湯もご覧のとおりドロリと白濁。
何の疑問も持たず、透明なそば湯を出してくる店もありますね。透明なお湯で茹でていますとのアピールかも知れません。実際、ここまでドロリとしたお湯で蕎麦を茹でているわけはないでしょうから、別にそば湯を調製しているのでしょう。
この そばや清兵衛さんは飛んでもない所にあります。国道253号から入るには事前の知識と高い動体視力が必要です。^^
旧道の下に国道235号のトンネルができ、その合間からアプローチすることになります。その距離約100m、違反ですが、時速80Kmで走っていますとトンネルを出て2秒ちょいで脇道の入り口に達します。前日、ここを通過した時には幟旗を見過ごしました。それと帰りに国道に乗る時も細心の注意が必要です。
さて、昼食後は越後川口ICの方へ移動し、その途上で川西エリアのナカゴグリーンパークに立ち寄ります。
こちらのリゾート施設も会場になってます。この不定形のドームはレインボーハット2012というインスタレーションです。
ドームの内部には水と鏡のプリズムを利用した虹のアートが繰り広げられています。
アイディアですよね。太陽光を水と鏡で分散させ、暗い部分にスペクトルを映し出しています。
この虹は水面が波立つとゆらゆら揺れるのです。
この揺らぎも作品の意匠なんでしょうね。異次元空間に入り込んだように感じます。
最後の見学はアメリカの建築家ジェームズ・タレルの作品、光の館です。
高床式の木造建築のように見えますが、1階部分にも風呂や和室があり、宿泊も可能となっています。
回廊からの眺めも素晴らしい。
信濃川の河岸段丘を眺められます。
この建物の最大の特色はこれ。2階の和室から空が眺められます。
つまり天井に大きな四角い穴が開いているのです。
こうして畳に仰向けに寝て、空を眺めようという趣向です。
流れる雲を眺めながら、畳に寝っ転がれるなんてあまりに素敵です。
でも、雨が降ったらどうなるのでしょう。なんと、スイッチ一つで屋根がスライドしてくるのです。
外観の写真にも写ってますが、3番目の薄い屋根が左右にスライドするのでした。余計な心配ですが、完全な密閉ではないので、埃や虫が入り込んで来ないかなぁ。^^
僅か3日間で駆け回る様に体感してきた大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2012。作品のごく一部を見たに過ぎませんでしたが、自分の中では充実した満足感が得られました。細君に誘われなければ、まず、訪れることはなかった芸術祭、正直、想像以上に素晴らしかったです。過疎化が進む山間部に全世界から人々が訪れるのですから感動的です。廃校になった校舎も有効に利用し、周辺の住民も参加する形で芸術祭が展開しています。地域活性化の取り組みが全国でなされていますが、やるならここまで本気でやらなきゃ効果なしの実例ですね。
ただ、十日町を中心とした越後妻有地区で芸術祭が大成功し、回を増すごとに発展しているのは単なる偶然ではないようです。仕掛け人の感性や技量はもちろんですが、この地区の住民の郷土愛とライフスタイルが大きな要素となっているように思えて仕方がありません。まず、豪雪地帯ではありますが、古くから栄えた織物や着物の街であり、住民の美へのセンスが高く根付いていることです。アートトリエンナーレが始まった2000年以前に建てられた建築物にも芸術性の高いものが多いのです。それに個々の民家も手入れが行き届き、街全体の空気も格調が高いものとなっています。
ほんの入り口を見たに過ぎない大地の芸術祭でしたが、多くのことを学び、体感できました。アートトリエンナーレ2012は9月で閉幕しましたが、常設展示の作品もたくさんありますので是非一度行かれることをお薦めします。詳しくはこちらの公式HPをご覧下さい。宮城からだと車で5時間かかりますが、この時間と労力を省略したい向きは新幹線とほくほく線を使い、十日町でレンタカーを借りるのも良いでしょう。帰りの新幹線では呑めますしね。^^
【バックナンバー】
越後妻有アートトリエンナーレ2012
① 河井継之助と桜飯
② 十日町と居酒屋弥八
③ キナーレとクロステン
④ 農舞台と里山食堂
⑤ 爆笑名画館と魚料理なか田