大震災以来、初めての海釣りです。昨年の今頃はとても海で楽しむなどいう気にもなれませんでした。生産者の方々が懸命に瓦礫回収に精を出しているのに海で遊ぶなんぞとてもとても・・・。それに、あらゆる恐怖感も残っていました。ともあれ、梅雨の合間の晴れた日に海で久々にリフレッシュしてみました。
前夜、埃ににまみれた道具箱を物置から出してきて、久しぶりに仕掛け作りを始めます。
しばらく作っていない間に指先の動きがすっかり鈍くなっているなぁ。これも加齢だろうか。明日は近場でイシモチ狙い、それにハゼも釣れているらしい。慣らしには丁度いい対象です。
さて、当日、第1投目から本当にイシモチが釣れてきました。これは幸先がいいぞ。
これは俗にイシモチと言いますが、正式にはニベです。仙台湾にはもう一種ニベ科のシログチという魚がいますが、少し深い泥底で釣れます。ニベ科の魚は頭に耳石と呼ばれる大きな平衡器官を持っているので、俗にイシモチと言われるのです。結石ではありませんよ。^^
今日は絶好調です。1時間もしないうちにもうこんなに。グゥーグゥーの大合唱です。
ニベ科の魚のもう一つの特徴は発達した浮袋を使って鳴くことです。先週、大雨が降り、海の濁りもまだ残っているため、夜行性のニベが活発なのでしょう。もうこれ以上釣っても食べ切れません。他の釣りに切り替えます。
松島湾内に戻ってマハゼの状況を探索しましょう。それにしても良い天気。永ちゃんの「時間よ止まれ」が聞こえてきそう。^^
マハゼは松島湾では満2歳で産卵し寿命を全うします。産卵期は丁度、大震災のあった春先から始まりますので、昨年生まれが無事か気掛かりだったのです。
潮止まりの時間帯ながらも、ポツポツ釣れてきます。ずいぶん型も良くなってます。帰って全長を測定しますと平均で16cmもありました。
6月下旬にハゼを狙うことはほとんどなく、過去のデータもあまりないのですが、10年ほど前にはこの時期、平均で14.5cmでしたからずいぶん速い成長です。もしかすると松島湾全体では少なくなっているのでないでしょうか。
これが本日の釣果です。イシモチ7尾にマハゼ10尾です。一番大きなイシモチは全長29.6cm。渓流釣りで言う泣き尺(ギリギリで尺に足らず)ですね。
ハゼも悪コンディションの中を粘ってかろうじてツ抜け(10尾以上)できました。今日は大きなイシモチを刺身にして、ちょっと早いけどハゼ天を味わいます。
イシモチは少し薄めの削ぎ造りにしました。白身ですが、薄造りに向く魚ではありません。
ケンも飾りではなく食べやすいようにいつもより細めに切っています。イシモチは塩焼きにしますと身も締まって味も深まるのですが、刺身は今一物足りなさを感じます。昆布〆にすると良さそうですが、今日は醤油に手を加えます。
酒と塩で湯がいたイシモチの肝を塩麹と山葵で擂り合わせ、そこへ煮切り酒と醤油を加えて伸ばして行きます。
この肝醤油で淡白な身を包みますと、グッと輝いてくるのです。細めに切ったケンも、刺身でくるんで頂きます。
これはお楽しみの余禄です。上はイシモチの真子と白子の煮付け、下は刺身の端切れの肝醤油和えです。
イシモチの産卵は夏です。これから急速に生殖腺が発達します。擂鉢にへばり付いた肝醤油は刺身の端切れを利用してともに活かします。
小型のハゼは江戸前天ネタのメゴチのように松葉に下します。
油に投げ入れますと人の字のように広がりますが、丁寧に尾を持って入れて行きますと背開きのようにくっ付いて揚ります。まだ小さいので尾鰭の大きさに対して身の長さがありませんね。
小さいながらも立派にハゼ天の風情です。
緑の添えはイシモチの紫蘇巻揚げです。これも美味しかった。イシモチの素直な身は天ぷらにも合いますね。ハゼ天は正直言いますと、まだ肉質が少々水っぽく、今一でした。やはりハゼはお盆を過ぎた頃の20cm近くに成長したものを食べるべきですね。
毎日、海辺で働いているのですが、釣りをしたのは1年半ぶりです。昨年、あれだけ牙を剥いた海ですが、それ以前、半世紀も付き合ってきた奴なので見限ることはできません。
ただ、心の片隅に影を落とすのはやはり放射性物質。私は農水省のHPを時々眺め、水産物の検査結果を常に把握するようにしています。流通に乗っている魚は基準値より低く抑えられており安全なのですが、自分で釣った魚を食べるにはリアルタイムな検査結果を知っておいた方がよいでしょう。
もし、釣れた魚が仮に100ベクレルを超えていたとしても、月に2~3回数百グラム食べる分には何の問題もありません。もちろん、妊婦さんや子供に薦めるつもりはありませんが、私はもう再生産の予定はありませんし、死亡原因として想定されるものが他にいくつもあります。^^
それにつけても、福島海域でタコや貝類が不検出となり、漁が再開できる見通しが立ったのは実に嬉しい限りです。