マンボウの友和え 絶品です!!
カテゴリー: 料理:買い魚
気仙沼に来て以来、密かに待ち望んでいることがあります。15年ほど前の初夏に気仙沼で初めて遭遇した時、電撃的な一口惚れをしてしまったのです。それ以来、石巻や塩釜でも探し続けたのですが、ずっと逢えず終いでした。昨年の今頃はとてもそのような状況ではなかったのですが、今年は虎視眈々と鮮魚コーナーを定期パトロールしていました。^^
それはマンボウの友和えです。それもこわたの友和えです。このわたではありません。こわたです。こわだとも言われるこの食材は、マンボウの消化管のことです。たぶん漢字で書けば小腸でしょう。コリコリとした食感が堪らないのです。これをマンボウの肝で和えた友和え(肝合え)にするのです。万人向けなアンコウの友和えよりマニアックな味わいで、すっかり虜になってしまいました。この料理はマンボウが水揚げされる港町ならではの珍味なのです。
こわたの友和えを作るためには、こわたと肝が揃って手に入らなければなりません。マンボウの身と肝が店頭に並ぶことは多いのですが、肝とこわだが揃うことは滅多にありません。このチャンスをずっと待っていました。それが訪れたのは週初めだったので、自宅に持って帰るわけにも行かず、気仙沼の小部屋でさっそく取り掛かります。
マンボウのこわたは太いホースを適当な長さで縦割りにした形で売られています。100g約300円ですから結構よいお値段です。
マンボウくらいの大きさになると腸の太さもハンパない。腸壁の厚さも1cm位あります。これを一口大に切って塩胡椒を塗して串焼きにしても最高の酒の肴になるのですが、長い間待ち焦がれた友和えです。今回はこれに徹しましょう。こわたはマンボウの身と同様、水分が多いので加熱しますと縮みます。100gを2パック買い求めましたが、これでも小鉢1杯分くらいしかできません。
一方、こっちはマンボウの肝(肝臓)です。豆腐半丁くらいの大きさでもたったの50円でした。
マンボウはフグの仲間(フグ目)ですので、身には一滴も脂がありません。その代わり、肝臓にはフォアグラ並みの脂が蓄えられています。これも鮮度落ちが速く、時間が経つと臭いが強くなります。ですから、魚市場周辺にしか出回らないのです。こわたは今年、何回かスーパーで見かけたのですが、この肝はあまり出ないのです。
まずは、こわたを酒を加えた薄い塩水(1%)で湯がきます。サッと熱が通ったら、拍子木に切っておきます。
ぶりんぶりんとした感触が手に伝わってきます。15年ぶりに口にしましたが、この何と表現したらよいのか困ってしまう食感は、強いて言えば、茹でたトリガイやホッキガイの足のような粗い筋繊維を感じる柔らかいイカのような噛み心地なのです。わかりにくいですね。それくらい独特な食感なのですよ。^^
一方、肝は和え衣を作るためにプライパンで炒めます。油を敷かなくても自身の脂でどんどん溶けていきます。
脂が滲み出て、半分くらいになったら、本来は擂り鉢で擂るのですが、気仙沼の小部屋にはそこまでの装備はありません。木ベラで突き崩しながら粗いペースト状にしました。これに砂糖と味噌を加えて味を調えます。この料理は甘味が不可欠です。
この衣でこわたを和えれば完成です。ラー油のようなオレンジ色の脂が全体に回り、非常にコクのある和え衣となってます。
コクのある和え衣に不思議な食感のこわだが組み合わさせれる得も言われぬ妙味となるのです。わぁ~、もう我慢できない。
とり急ぎ、冷や酒を用意して一口。。。。むむむ。。。15年待った甲斐がありましたぁ~。海辺でしか食べられないこの味。感激が込み上げてきます。
アンコウの友和えのような優等生の味ではなく、野暮ったくて少し得体の知れない味が魅力なのです。これは幾らでも酒が飲めますよ。粒々の残った和え衣もなかなか好い感じです。
翌朝、いつもの五穀米ではなく、久々に白飯を炊きました。マンボウの友和えはご飯にも合うのです。
要は油味噌の美味さも兼ね備えておりますので、ご飯にもジャストミートなのです。
15年ぶりに口にしたマンボウの友和え。こんな漁師料理が食べられるのも海辺に住んでいる特権ですね。マンボウの刺身は国分町でも食べられますが、こわたの友和えは気仙沼の民宿か居酒屋に予約しても、よほど運が良くなければ食べることができません。私もマンボウの身が鮮魚コーナーに出始めてから、こわたと肝が揃う日をまだかまだかと待ち続けて、今回の快挙となった次第です。まさに執念の再会、それだけに感動もひと際でした。
おまけですが、こわたはずいぶん価格の変動があるようです。後日、100g100円で買えました。肝はなかったので以下のような料理を作ってみました。こわたのポン酢とガーリック炒め黒胡椒風味です。
この日のこわたはかなり厚みもありましたので、大型魚が水揚げされたのでしょう。すると量も出ますので、価格は下がるようで上記の1/3となってました。この日は気楽にこのような料理で美味しいお酒を楽しみました。サッパリとした こわたポン酢やスペイン料理のようなガーリック炒めと変幻自在なのもこわたの凄さです。