気仙沼の郷土料理 あざら
カテゴリー: 料理:買い魚
世の中に酒粕煮という料理が存在しますが、大概、煮込まれる材料は大根だったり、塩鮭だったりします。これが粕汁だともっと広がりを見せて全国に普及していますね。酒処庄内では筍の孟宗汁や真鱈のどんがら汁にも使われたりします。この二品は粕汁と味噌汁のハイブリッドのような味わいで両者の良いとこ取りをしたような佳品です。発酵食品である酒粕と味噌が合わないはずはないですね。
さて、写真のぺっとりした煮物ですが、気仙沼の郷土料理であざらと申します。これにも酒粕と味噌が使われますが、煮込む材料はちょっと異色で春になって酸味が出始めた白菜漬けと同じく塩が回ったメヌケ(アコウ)のアラとなります。どちらも余り物の有効利用なのですが、病み付きになる魔力を秘めています。
材料は乳酸発酵が始まった古漬けの白菜。それにメヌケのアラの塩漬けがなかったので切り身にきつく塩をして二週間ほど置いたもの。調味料として酒粕、味噌、日本酒です。
びりっと塩が利いたメヌケのアラは最近見かけないですね。解凍物ですけど、わざわざメヌケの身に塩をするのですから時代に逆行しますね。でも、塩が回った魚の美味しさもあるのです。
まず、お湯を沸かし、ザク切りにした白菜漬けを炊いて、一旦茹でこぼします。
この下茹で加減も重要なのです。あまり煮てから流しますとせっかくの酸味もなくなってしまいます。茹でる前に食べてみて、臭いや酸味が強くなければ、そのまま使っても構いません。ただ、塩分は水に晒して軽く抜いた方がよいでしょう。
再度、白菜漬けを炊き直し、トロッとしてきましたら、酒粕と味噌を日本酒で溶かして加え、さらに水で塩抜きをしたメヌケの切り身も加えます。
あまり、掻き混ぜないように、でも、焦げ付かないように気長に炊いて、ぺっとりとしてくれば出来上がりです。
白菜漬けの酸味とメヌケの脂が渾然一体となり、それを酒粕と味噌の深い味わいが包み込んでいます。
彩りも白地にメヌケの赤い皮が所々に見え隠れして品の良い景色ですね。余り物料理が起源と言われますが、作りようによっては上品な惣菜にもなり得ます。
気仙沼のソウルフード、あざらですが、最近の若い人はあまり食べないようで、このままでは絶滅危惧料理になってしまうかも知れません。ご飯のおかずとしてはお子ちゃまにはまず受け入れられないでしょうけど、酒を嗜む人であれば、必ず気に入るはずです。近年、メカジキなどで作ることもあるようですが、この料理には塩漬けされた赤魚系の脂もあって身の締まった白身がぴったりです。前記のように、見え隠れする赤い皮もこの料理の価値のうちですので。
【 追 記 】
2週間ぶりに自宅に戻りますと庭のサツキが満開でした。
ツツジが幕を下ろして、サツキのシーズンに入ったのですね。
サツキも凝りだすと小遣いを失います。^^
ただでさえ、多趣味でピーピーしていますので、庭の植栽以上には入り込まないようにしています。