メカブの芯であれこれ(後編)
カテゴリー: 料理:海藻
メカブとフルーツのスリーショット、こんな光景は日頃、見ることはないでしょうね。^^ 前編(前記事)で知り合いのワカメ養殖業者の方よりメカブの芯の料理法を開発するように頼まれて、悪戦苦闘している状況をお伝えしました。硬くて渋くて通常捨てる部分を何とかしろと言うのですから難問です。よく下茹でしてから塩麹に和えて寝かせたものは美味しかったのですが、佃煮しますと元の硬さに戻ってしまうことがわかりました。コウジカビの何らかの酵素が利いたのかも知れません。酵素と言えばフルーツは酵素の宝庫です。そこで、今回の実験になったわけです。
メカブの耳の部分(成実葉)を切り離しますと硬い芯が残ります。これを何とかして食べるのです。
前編のように一旦下茹でしますが、約20分でまだ少し硬いくらい、30分も茹でますと柔らかくはなるのですが、食感が悪くなります。ですので、茎若布の食感を残しつつ、料理する必要があります。
今回はフルーツの中でも肉を柔らかくする時に効果を発揮するパイナップルとキウイフルーツを使います。本当はパパイン酵素を含むパパイアが有望なんですが、日頃手に入れ難いですしね。
生のパイナップルにはブロメライン、キウイフルーツにはアクチニジンという酵素が含まれて、ともに硬い肉の前処理に使われます。ただ、ワカメのような海藻に有効かどうかはまだ試したことがありません。
まず、それぞれのピュレーを作ります。こういう時に役立つのがハンディーミキサー。少量でも処理できるのでとても便利です。
どちらも美味しそうですね。このまま、ヨーグルトに入れたり、シャーベットにしたくなります。^^
茹で上げたメカブの芯を薄切りにし、3つに区分してパインとキウイを混ぜた区と何もしない区(対照区)を用意しました。
それぞれをラップで覆い、1日冷蔵庫で寝かせます。その後、対照区(無処理)の芯と食べ比べて判定しようという企てです。メカブの芯を前回より強火で茹でたら、一皮むけて白くなりました。^^
そして、1日後。。。
パインとキウイのピュレーに和えたメカブ芯を元の状態のものと食べ比べます。
ピュレーが判定に影響しそうなので、よく洗っています。手前の皿の右がキウイ漬け、左がパイン漬けです。奥の無処理と比べるとどちらも白濁して透明感がなくなっています。早速、食べ比べてみましたが、キウイ漬けは効果なし。しかし、
パイナップルはメカブの芯を柔らかくする
ことが判明しました。パインに含まれるブロメラインが作用したのか、それとも他の成分によるものかよくわかりませんが、パインのピュレーはメカブの芯の軟化にも効果がありました。ただ、ブロメラインの作用だとすると加熱した缶詰のパインでは駄目でしょう。この酵素は熱に弱いのです。生パイナップルも安くなり、今回使ったパインも丸々1個で200円もしませんでしたので、是非、生パインをお使い下さい。
さて、この効果をどう料理に応用するか。ピュレーに醤油や塩を入れただけでは物足りなさそうです。そこで前編同様、塩麹の登場です。
両者を混合すると酵素の働きにどう影響が出るかわからないので、最初にパイナップルのピュレーで和えて寝かし、後から塩麹を調味料として加えることにします。塩麹の複雑で奥の深い味に助けてもらいます。
試行錯誤で完成したメカブ芯の塩麹和えパイン風味です。
塩麹の甘塩っぱい味にパインの酸味が加わり、乙な味わいです。お通しにさっと出したら、きっと話題に花が咲くでしょう。
もちろん、メカブの耳(成実葉)も有難く頂きます。今回は簡単に湯がいてダシ醤油をかけ、長葱の細々を盛っただけです。
メカブもとろろまでに細かくせず、食感も楽しめる大きさに切っています。酒の肴にも丁度いい。^^
大震災の津波でワカメ養殖は壊滅的な被害を受けましたが、ワカメを生産する他県の支援や国の災害復興予算で急速に回復しつつあります。震災直後には、まさかここまで復旧するとは想像も出来ませんでした。なにせ、養殖筏や船も、何もかもがなくなったのですから。浜では震災後の初収穫も順調に続いており、先月末にはボイル塩蔵ワカメの初入札も行われました。ワカメ養殖はカキやホタテより低コストかつ短期間で収入が得られるので、養殖復興のエースなのです。今回は震災前にワカメ養殖をやっていない方々も参入して協力しながら生産しています。今年はまだ量も少ないので少し高めですが、お店で宮城県産ワカメを見かけましたら、復興支援のお心で買って頂けると助かります。m(..)m