メカブの芯であれこれ(前編)
カテゴリー: 料理:海藻
気仙沼から戻ってみますと、雛人形が飾られていました。我が家のはささやかな一段飾り、パッと出せてサッと片付けられるのがメリットです。^^ 一昨年、娘が東京の大学に進学してから、初めて雛人形が光を浴びます。昨年は妻が介護で里帰り中でもあり、独り暮らしの私はこれの存在すらも忘れていましたし。そして、雛祭りの翌週にあんなことが起ころうとは全く予期せぬことでした。
さて、今日の話題ですが、これです。旬のメカブですね。でも、メカブ料理ではありません。
ワカメ養殖も生産者の方々の懸命の努力で1年のブランクもなく、水揚げを迎えています。知り合いのワカメ養殖業者の方から、初物だから食べろと頂きました。ただし、宿題が言い渡されました。
ワカメの葉っぱ部分の中芯である茎ワカメは柔らかくて様々な料理や加工品に使われますが、根元のメカブの芯は通常、硬くて食べません。これを何とかしろというのです。
勿体ないが口癖の私でもさすがにこの部分は捨てていました。以前も食べようとトライしたことはありますが、硬いし渋いし、ハッキリ言って不味いのです。でも、メカブを加工する際にこの芯が大量に捨てられるそうです。
硬さを和らげるには徹底的に加熱するか、酵素の力を借りてメカブの芯の組織を破壊するのが良さそうです。実験ですから量は少なめで試してみます。
思い付いたのが、塩麹の麹黴が作り出す酵素です。アミラーゼやプロテアーゼの他にワカメの芯を分解する何かの酵素も出していないかと期待したのです。もう一つは通常よりしつこく煮て、ピリ辛の佃煮にしてみようと思い立ちました。佃煮と言いますと黄ザラがよく使われますが、スッキリとさせたいので味醂の甘味に水飴を足して艶を出します。
まずは下茹でですが、納得が行くまで茹で倒します。^^
大体20分茹でて齧ってみたらなんとか行けそうなので岡揚げしました。もう少し、茹でても良かったかなぁ。
これは茹でた芯を薄切りにして人参と塩麹に和えてみようとしているところです。塩麹を漬け床ではなく、和え衣として使います。
塩麹はかなり塩っぱいので多くは使えません。味を見ながら慎重に加えます。よく合えたら、2~3日は寝かせます。この間に麹の力で芯をさらに柔らかくしようという企みですから。塩麹にする前の麹があれば、良かったのですが突然のリクエストで対応できませんでした。
こちらは佃煮ですが、下茹でが長いという以外、通常と作り方はあまり変わりません。
メカブの芯を縦に半分に切ってから、さらに薄く切っていきます。この時点で齧ってみると。少し硬めですが、さらに煮詰めるので何とかなるでしょう。
醤油、味醂、酒を等量合わせ、3倍の水で薄めます。水飴を小さじ1杯と鷹の爪少々加えた調味液で炊いていきます。
煮詰まって、艶が出てきたら出来上がりです。
塩麹和えは狙い通りでした。残滓とされていたメカブの芯がちょっと洒落た珍味に変身です。
塩味が心配でしたが、人参や芯からも水分が出て丁度良いくらいに仕上がっています。和えた時点より心持ち芯も柔らかくなっているようです。これは胸を張って報告できるでしょう。
こちらは佃煮ですが、逆に煮詰める前より硬くなったような気がします。
そうか、塩分や糖分の浸透圧で芯の水分が抜けて硬くなってしまったようです。カリカリした佃煮なっています。歯が丈夫な人なら歯応えを楽しめるかも知れませんが、あまりお薦めできません。やはり、下茹でをさらに徹底して、薄切りにしてから柴漬けや福神漬けにする方が良さそうです。
もちろんメカブの方も美味しく頂きました。生ビンチョウの漬けと海かけ丼にいたしました。
擂った山芋をマグロをかければ山かけですが、メカブのとろろをかけるので海かけです。^^ メカブはさっと湯がいた後、包丁でトントコ刻んで粘りを出します。滑りやすいので要注意。ミキサーでも作れますが、少量ずつやらないと強烈な粘りでモーターに負担をかけます。メカブとろろには薄口醤油で軽く味を付けています。
残滓とされているメカブの芯。かなり手ごわいですが、少し特性が見えてきました。下茹でを30分ぐらいして、繊維を断ち切るように薄切りにし、塩麹和えや各種漬物にするのが良さそうです。佃煮では一旦柔らかくなった芯をまた硬くしてしまうことも判明しました。もしかすると、アクチニジンやパパイン等のフルーツから抽出される酵素を使えば、柔らかくできるかも知れませんが、そこまでやったら、料理ではなく加工の範疇に入ってしまいますね。私はあくまで料理愛好家ですので、薬には手を出しません。^^ でも、キウイやパイナップルの果汁を使って実験してみる価値はありそうです。 で、後編に続きます。