【保存版】イカの塩辛お薦め二品
カテゴリー: 料理:甲殻・軟体・ほや
冬はスルメイカの腑もパンパンに発達して、塩辛作りに最高です。市販のやたら甘い塩辛ではなく、腑の旨味を堪能できるイカの塩辛を作ってみませんか。家庭で塩辛を作ると生臭くなるから嫌だという方もいらっしゃいますが、ちょっとしたコツがあるのです。今回は柚子の香りの塩辛と韓国のチャンジャ風塩辛の2品を作ります。
まず、スルメイカは鮮度が勝負。せめてこれくらい胴(頭)の部分に赤褐色の色素が残っているものを探して下さい。見つけましたら2杯買い求めます。
イカ同士がくっ付いていた部分は白くなりますが、触れていない部分に色素が残っていれば良いのです。あとは目の透明感や足(腕)の張り等から判断しますが、刺身用となっていれば大丈夫でしょう。
イカはこのように各パーツに下拵えします。
胴は開いて皮を剥き、腑の部分は中身が飛び出さないように付けの少し手前で切り離します。炭袋は取り除いて下さい。足の吸盤にある角質環も丁寧に包丁で取り去ります。
ここからがポイントです。イカの胴や足は軽く尺塩(振り塩)をした後、一昼夜乾します。
こうすることで、イカの肉から生臭い水分が取れ、味も凝縮いたします。ただ、凍結したり雪が降りそうな時は室内で乾して下さい。それと、生で食べるものなので、鳥に突かれたり、糞をかけられたりしないように配慮しましょう。なお、塩は最終的な味を左右しますので、天日干しの天然塩を使って下さい。
一昼夜干しますと表面がすっかり乾きます。
これを焼けば、一夜干しのイカになるわけです。これも市販品と異なり、刺身で食べられるイカで作った一夜干しですから、美味しいですよ。でも、焼かないで塩辛作りに進みましょう。
続いて腑の方の仕事ですが、まんべんなく塩を塗します。
ザルなどの上に置いて生臭い水を切ります。
せっかちな私はさらにキッチンペーパーや和紙などに包んで紙の吸水力も使った合わせ技にします。
いわゆる紙干しの技ですが、このまま一昼夜置きますと、くっ付いた紙を剥がすのが厄介なので頃合いを見て剥がします。滴る水分がなくなれば良いのです。
さらにザルなどに乗せて一昼夜風に当てて乾し上げます。
まるで干し柿のようになってしまって、塩辛になるのかと不安を抱かれる方もいらっしゃると思いますが、これでよいのです。生臭みが抜けて、旨味だけが中に残されています。
乾したイカの胴の部分は拍子木に切り、ゲソやエンペラは別に刻んでおきます。イカ腑の中身だけを擂鉢に取り出します。
2種類の塩辛を作りますので、胴とゲソを分けております。この時期のイカ腑は産地にもよりますが、パプリカでも入れたように赤味が強くなります。脂も多く、これも旨味を上げるのに役立っています。もちろんイカ腑の付け根も刻んで右のゲソに足し込みます。
まずは基本の塩辛ですが、今回は柚子胡椒を少し加えます。
隠し味に味噌も少々使います。もちろん、イカの肉と腑だけで純粋な塩辛を作っても構いません。その場合、塩味は肉にも腑にも付いていますが、足りないと感じる時には塩で加減して下さい。
擂鉢でよく擂ったイカ腑と柚子胡椒と味噌にイカの肉を混ぜ合わせます。
このまま食べても美味しいのですが、毎日、火炎滅菌した箸で掻き混ぜて、3日くらい熟成させた方が塩味もこなれて円みが出てきます。
さて、もう一方のチャンジャ風塩辛を作ります。
チャンジャはマダラの胃袋を薬念(ヤンニョム)に漬け込んだ珍味の雄です。最近、日本の居酒屋でも見かけるようになりました。酒によく合いますからね。タラの胃袋を集めるのは大変なので、ちょっと食感が似ている、イカゲソや頭部の軟骨で作ろうという狙いです。
もちろんイカ腑も使って、日韓合同のチャンジャ風塩辛になります。これは韓国にもありません。サエモンブランドです。^^ 実は塩辛をイカ2杯で作る時、イカ腑をがっちり脱水しますと、2本では少し足りないのです。そこで、胴の方に1本と1/3の腑を使って、残りに薬念を足してチャンジャ風にすると都合が良いのです。食感と味の異なる二つの塩辛が同時に出来るのも楽しいですし。
薬念は韓国の合わせ調味料。焼き肉の下味にも使われます。様々な種類がありますが、私流では、コチュジャン、胡麻油、ニンニク、生姜、長葱、白胡麻、韓国唐辛子を使います。唐辛子は日本の物ですと辛すぎて食べられなくなりますので要注意。左端の猪口は残りのイカ腑です。松の実は仕上げの飾り用。
ニンニク、生姜、長葱は微塵切りにして、その他の材料とともにイカ腑に混ぜ込みます。
味見をして塩味が足りない時は塩か醤油を補います。好みで蜂蜜を加えても良いでしょう。
イカ腑入り薬念にイカゲソを混ぜ合わせます。
やはり、正統塩辛と同じく、毎日掻き混ぜて3日目位から食べ始めます。
5日かけて完成しましたイカの塩辛2品です。柚子風味の方もイカ腑が赤くて食欲をそそります。チャンジャ風は天に松の実を盛って雰囲気を出します。
どちらも味が熟れてよい出来です。(自画自賛^^)柚子風味は胴だけで作っていますので上品な食感です。チャンジャ風はコリコリ、カリカリ様々な歯応えが楽しめて酒の肴にドンピシャリ。ソジュ(焼酎)が呑みたくなってきます。
スルメイカ2杯で全く異なる塩辛を作ってみました。イカの肉も腑もがっつり乾すことで生臭みや余計な水分がなくなり、濃厚でコクのある塩辛が出来るのです。チャンジャ風も薬念にイカ腑を加えており、韓国でも味わえないオリジナルなチャンジャと言いますか塩辛が出来ました。料理はこの創製の喜びがあるから止められません。^^ まだ、しばらくイカ腑も発達していますし、屋外で乾しても鮮度が落ちない気温ですので、是非、塩辛づくりにトライしてみて下さい。 そうそう、自家製は市販品と違ってソルビン酸などの防腐剤を使いませんし、塩分も少ないので冷蔵庫で保存し、1週間くらいで食べ切りましょう。