ビワで杏仁豆腐???
カテゴリー: 料理:野菜・果物
杏仁豆腐はスィーツ苦手な私でも結構美味しく頂ける数少ないデザートの一つなのです。最近は生クリームを使った濃厚こってりタイプが流行っていますが、従来の爽やかなタイプが好みです。ただ、寒天で固めたものよりは口の中でとろけるゼラチン使用のゼリー風がいいかなぁ。杏仁豆腐が好きな理由はあの独特の風味です。変な例えですが、ラジコンヘリの燃料に加えるニトロベンゼンの臭いにも似たちょっと危険な香りです。それと草刈りしてまだ日が経っていない草むらの臭いにも似ていますね。
ご存じの方も多いと思いますが、あの香りは梅や杏の実や種の中身(仁)に含まれるアミグダリンという物質によるものです。このアミグダリン、なかなか覚えられず、時々、阿弥陀Green と発音してしまっている自分に気付くことがあります。^^ それはさておき、このアミグダリン自体には毒性がないのですが、酵素によって加水分解されると最終的に猛毒である青酸を発生するのです。この酵素は未熟な果実に多く含まれることから、青梅は食べるなとされてきたのです。そういえば、梅干しの種の仁も天神様と言って食べるなと戒められていたような記憶がありますが、私は食べていまし種。^^
杏仁豆腐の場合はアンズ(杏)の類の仁を粉末にした杏仁霜と呼ばれる粉末を使って香り付けをしていますが、使われるアミグダリンの量も微量なので全く問題になりません。もっとも、現在の日本では、ほとんどが杏仁と似た香りを持つビターアーモンドのエッセンスを使っています。毎度の事ながら前置きが長くなりましたが、やっと本題です。実はビワも梅や杏と同じくバラ科の植物で種(仁)にはアミグダリンが豊富に含まれているのです。ビワが山のように収穫されていますので、杏仁豆腐ならぬ枇杷仁豆腐を作ってみましょう。
材料はたったこれだけ。ビワと牛乳、蜂蜜、ゼラチンに飾りとして枸杞子(乾燥クコの実)です。
蜂蜜はもちろん砂糖でも結構です。牛乳300mlに対し、ゼラチンは水分量の2~3%ですから6~9g、もちろん少ない方が柔らかく口溶けも良いのですが、切り分けることが難しくなります。ゼラチンは水でふやかし、クコの実も水で戻しておきます。
本日の主役はビワの果肉ではなく、種なのです。
出来上がり300ml程度であれば、数個もあれば十分です。市販のビワは大粒なので、種も2~3個もあればよいでしょう。
ビワの種は包丁で端を少し切り付け、外皮を剥き取ります。
香りが出やすいようにと擂り鉢で潰し始めましたが、これが結構硬くて大変です。最初に包丁で微塵切りにしてから擂ると良いでしょう。
擂り終わったビワの種を牛乳に加えます。
擂り鉢に牛乳を入れて種の粉を無駄なく回収します。この段階ではまだ、加熱していません。これに好みの甘みを付けておいて下さい。
弱火にかけてゆっくりと加熱します。時間をかけた方が風味が牛乳によく移ります。沸騰する手前で固める容器に濾し入れます。
アミグダリンの独特な香りが立ち上ります。香りの移った牛乳が冷めないうちにふやかしたゼラチンを加え、完全に溶けるまでよく攪拌します。常温まで冷めましたら、冷蔵庫でさらに冷やします。
プルリンと良い具合に仕上がりました。味見をしますとあの香りが鼻腔に広がります。
見栄えはあまり良くなりませんが、包丁で切れないくらい柔らかい方が美味しいですね。スプーンですくって盛り付けます。
枇杷仁豆腐にビワの果肉とクコの実、ペパーミントを飾りました。
あまり甘くしたくないので、シロップはかけませんが、その辺はお好みで。
アミグダリンの分解物が青酸だと思うとちょっと食べる時にスリルがありますね。でも、この使い方で中毒になった人はいないようですが、毎日、ビワ種を使い続けるのは止めましょう。一時、アミグダリンは癌に効くとされ、多用されたことがありましたが、現在は否定されています。にもかかわらず、今でもビワ種や葉の薬効を謳って関連商品を売っている輩がいますが、使い方を間違えば健康障害のみならず、青酸中毒に至る場合もあるそうですので注意しましょう。