焼き空豆は美味いか?
カテゴリー: 料理:野菜・果物
先週末、自宅へ戻る日に気仙沼在住の方から空豆を頂きました。そういえば、空豆のシーズンだったのですね。そんなことも頭の片隅にも残っていませんでした。何でも、収穫期も終盤で雨に当たると黒くなるので皆さんに配っているとか。有難いですね。帰ったら、早速、頂きましょう。
帰りの運転は2時間半くらいかかりますので、これをどう食べようか考えを巡らします。よく空豆を鞘ごと焼いて食べる野趣に満ちた手法がありますが、あれって焼いたことになるのでしょうか。密閉度の高い鞘に包まれた空豆は周囲からどのように加熱されても、中は蒸された状態になるのではないだろうか。そんな疑問が頭を占領し始めます。
かつて、殻付きガキの焼きガキもあれは蒸しガキだと記事にしたことがありましたが、空豆は加熱しても鞘が開かない分、もっと蒸しに近いだろうと仮説を立て、異なる加熱方法で比較してみることにしました。実験方法は以下の3通り加熱方法で2鞘ずつ調理し、味わいを比較検証します。その後、再検証も行います。
【第1の加熱方法】 蒸し器で鞘ごと蒸し上げます。
水蒸気が上がってから10分ほど蓋をして蒸します。
【第2の加熱方法】 いわゆる焼き空豆です。オーブンではなく直接、炎で炙りたいのでガスの魚焼きコンロを使います。
これも強火で10分ほどで焼き上げます。鞘に数カ所焦げ目が出来るくらいですね。
【第3の加熱方法】 電子レンジでチンです。ラップに包むと蒸しと同じ作用も働くと考え、そのままで加熱します。
時間は500Wで6分位ですが、鞘の柔らかで熱の通りを判断しました。
それぞれは同時に仕上がるようにセットしました。左から蒸し、焼き、レンジでチンです。
外観は焼きには焦げがありますが、蒸しとチンは似ています。子細にみますと、蒸しは鞘に細かい皺が寄っているのがわかります。
個別に中の豆を検証しますと、まず、蒸しは鞘が柔らかくなり、豆自体にも皺が寄っています。
味ですが、少し水っぽい感じです。加熱の加減かも知れませんが、若干、柔らかく口のなかで崩れやすくなっています。もちろん、不味いわけではなく、相対的な問題です。
続いて、焼きですが、豆の皮がしっかりしています。鞘は閉じたままでしたが、水分を蒸発させていたのでしょう。
豆も歯応えが残っています。ですが、焼きに期待したかった香ばしさは豆には移らないようです。
意外だったのは、電子レンジでチンです。鞘もしっかりしていて豆の皮が破れているものの、豆自体は歯応えも残りしっかりしています。
焼きと区別するのが難しいですね。歯応え、旨味、甘味ともに優劣が付け難いほどです。
残りの空豆で焼きと電子レンジでチンを再検証します。豆の硬さが同じようになるように調整しました。
後方が焼き、手前がチンです。マメの皮が破けるのは必ずしもチン特有の現象ではないようです。
じっくり味わって違いを探します。まず、これは焼きです。
やはり、焼き特有の個性はありません。疑問に思った通り、鞘ごと焼いても、中の豆は蒸されているのと同じようです。
こちらは電子レンジでチンですが、全く焼きと差がありません。
今回は鞘ごと焼く手法の比較検討をしましたので、鞘ごとチンしていますが、効率を考えますと、鞘を剥いてからチンするべきでしょう。いずれにしろ、枝豆と違って鞘に付着した塩分を舐めながら食べませんので、加熱し終ったら、お歯黒の辺りに切れ目を入れて、濃い塩水にさっと浸し、少し馴染ませるとよいでしょう。
人間は思い込みで美味いと思ってしまっていることが多いものです。鞘焼きの空豆はもちろん美味しいのですが、中の豆は他の加熱調理法でもほとんど差が見られませんでした。牡蠣の殻焼きや玉葱・筍の丸ごと焼きなどは野趣味を楽しむものであって、同時に他の加熱調理でも比較しますと意外と差がなかったりします。ただし、茹でる場合は加熱媒体が水になりますので、旨味が逃げ出すこともあり、差が出てくるものと思われます。