十三浜(石巻市北上町)の知人より、震災前に摘み取って乾したフノリを頂きました。津波の後はどこの浜でも収穫を中止していますので貴重なフノリです。フノリは布海苔と書きますように、煮溶かして糊状にして着物の張りを出すのに用いられてきました。もちろん食用としても珍重され、汁物の具にしてトロリとした食感が楽しまれています。
特に新潟では、このフノリの粘着力を使って蕎麦を打つ習慣があり、へぎそばとして愛されてきました。フノリでつないだ自家製蕎麦の記事はこちらで、新潟で食べたへぎそばの記事はこちらです。
水で戻しますと、1.5倍にくらい膨れますが、このフノリはまだ走りで枝先が細かいですね。そして、実に瑞々しい。
市販のフノリには、ストローのように育った物もありますが、このフノリはまだ若い芽の段階です。そういう意味でも貴重です。根元に砂粒が付いていることがありますので、注意深く手で確認しましょう。
私の大好きなフノリの食べ方はこれです。春キャベツとの酢醤油漬けです。
ざくざくと切った春キャベツと水で戻したフノリを混ぜ合わせ、酢と醤油を半々にした調味液を回しかけます。決して、じゃぶじゃぶと漬け込んではいけません。塩っぱくなり過ぎます。混ぜ合わせるくらいにして、時々、天地を返します。ポリ袋に入れて漬けた方が簡便で良いかも知れません。砂糖などの甘味は決して加えないで下さい。スッキリしなくなります。
何度か混ぜ返し、大体3~4時間で食べられます。
しんなりするまで漬けないで、サラダ感覚でパリパリ食べられる方が好みです。
春キャベツの甘さとパリパリ感に磯の香りとフノリ特有の歯触りがなんとも例えようのない美味しさなのです。
ご飯のおかずにも酒の肴にも向く佳品です。ワカメやコンブでは駄目なのです。この料理にはフノリが出会いなのです。
今晩はカツオの焼き霜造りにもフノリを添えて頂きます。
カツオは土佐のタタキのように、薬味を乗せてポン酢を回しかけて馴染ませたのも好きなのですが、このように新玉葱のスライスと練り芥子で食べるのも捨て難いのです。
それとフノリの味噌汁はやはり外せませんね。
汁椀に味噌汁を注いでから、フノリを乾燥したまま千切って入れます。こうしますとカリカリした歯触りも楽しめます。とろりと溶けかけたフノリが好みの場合は仕上がり間近の鍋に入れます。
久々にまとまった雨となり、気温も4月並に下がったので、今晩は蕎麦焼酎のお湯割りでフノリを楽しみます。
以前にもフノリを煮たり揚げたりした料理も紹介していますが、このシンプルな料理に落ち着きます。
三陸沿岸は3.11の巨大津波でとてつもない被害を受けました。岩礁域も同様、激しい波や土砂に洗われたはずです。磯の海藻類は大丈夫でしょうか。海藻類に影響がありますと、我々が磯の香りを楽しめなくなるばかりではなく、それらを餌にして育つアワビやウニにも影響があるということになります。それに巨大津波で掻き回された陸地には泥が溜まっており、降雨のたびに海に流れ込みます。これによる濁りが長く続くと光合成をする海藻類にも不都合です。6月からは各種の漁が再開されます。岩礁域の海藻やアワビ、ウニの様子も見えてくるでしょう。