今回はリゾート地としても名高い統営市の海辺からサバの刺身をご紹介いたします。サバは韓国の方も大好きで、日本と同じように塩干しにしたフィレー(カンコドゥンオ)を市場でもよく見かけます。焼きサバ定食も大変人気とのことです。ですが、刺身となるとこれは日本と同じでそう簡単には食べることができません。日本では〆サバという形で、生のサバがよく食べられますが、既にご報告しましたように韓国では生きている魚貝類を食べる直前に造ったものしか刺身で食べないのです。つまり、刺身は活魚料理店か魚市場食堂でしか食べることができません(関連記事) 。
サバは回遊魚ですので泳ぐスピードも速く、水槽で活かすのは簡単ではありません。その上、輸送やすくい上げにも弱く活かしたまま、水槽まで運ぶのも大変な苦労が必要です。日本であれば、生半可に活きているサバより、直ちに締めて海水氷で鮮度維持されたもの方がありがたいのですが、韓国では前記の理由により、とにかく生きていなければ、刺身に出来ないのです。
統営は地図のように朝鮮半島南端の慶尚南道にある多島地域の市です。
かつては忠武(チュンム)と呼ばれたこともありましたが、周辺と合併して1995年に統営市となりました。半島部と多くの島から成る統営市は海洋リゾート地の中核的存在として有名です。もちろん、豊富な海の幸を食べさせてくれるレストランも沢山ありますよ。
数々の海鮮レストランの中から、慶尚大学の先生が選んでくれたのが、このお店です。
海岸に立つビルの8階にあります。店内からは海が一望でき最高の眺めです。
エントランスの正面にはこのレストランの看板であるサバが水槽内で気持ち良さそうに泳いでいます。
実はこれらは畜養サバなのです。養殖よりも短期間、海の生け簀に収容して育てたもので、だから水槽内でも落ち着いていられるのです。しかも、地元の大学と独自の餌を共同開発し、食べても太らないヘルシーなサバを畜養しているそうです。なんだか羊肉みたいなサバですね。L-カルニチンでも餌に配合したのでしょうか。詳しいことはもちろん教えてもらえませんでした。^^
サバの刺身を注文しますと、いつものようにサービスの前菜がテーブル一杯に並べられます。
こちらのお店の前菜は今まで一番凄いかも知れません。全15品が所狭しと並べられました。4人分ですが、まともに食べたら結構効きますよ。
前菜だけではありません。ナマコ、ホヤ、ツブ、生牡蠣の豪華盛り合わせも出てきました。
これもサービスなんでしょうけど、サバが1尾10,000円位するのではないかと、会計役の私は気が気でなりません。^^
続いて、カレイの煮付けやチヂミまで出てきました。
おいおい、こんなに出されたらメインのサバ刺に行き着く前に満腹になってまうやろがぁ~。^^
ここでやっと、真打ち登場。韓国風サバのお造りです。
盛り付けも日本とはずいぶん異なります。古墳のようなこんもりとした盛り方です。刺身の下からは戻した春雨が発掘されました。^^ 日本の大根のケンに似せているのでしょうか。サバの血合いの色が美しいですね。腹身も細切りで盛り合わせるところが憎いです。
もちろん韓国式刺身はヤムニョムまたは酢コチュジャンと一緒にサンチュやエゴマの葉で包んで食べるのが原則です。
でも、こちらでは日本人観光客も多いのでしょうか、山葵醤油も出してくれました。世界のどの国に行っても現地の食べ方に従う私ですが、こと刺身については、山葵醤油も欲しくなりますよね。やはり、繊細な生の魚には強すぎる香りが邪魔になります。もちろん、サバ自体は直前まで生きていましたら、鮮度抜群で美味しかったです。畜養物ですが、脂の質が良好でくどさが全く感じられません。やはり餌料を改良した結果なのでしょうね。
それでも、地元に敬意を表して、まずは韓式で頂きます。
ヤムニョムもそうですが、エゴマの葉もかなり香りが強いです。口の中でサバの味がさっぱり感じられません。
メインの後にも、さらに料理は続きます。カニ、エビ、サツマイモ揚げ物にエイのコチュジャン和えカオリチンも出てきました。
食べ残すのが韓国式の礼儀とはいえ、食べ物を感謝しながら頂くのが信念の私には苦行のように感じてきました。
ここでやっとヘムルチゲ(アラ汁)と一緒にご飯です。
ご飯は黒米が炊き込んでありますね。ここまで辿り着くには相当の胃袋が必要です。これだけ食べて気にあるお値段はどのくらいだと思われますか? 実にたったの1600円、もちろんランチなのでお酒は飲みませんでしたけど。^^
日本でもサバの畜養はよく行われています。宮城では牡鹿半島で武田さんが頑張って開発中です(関連記事)。武田さんは自然のサバに近づけるため定置網に入る小魚を与えていましたが、こちらでは、さらに進めて、人間の健康を考慮した餌料を与えているそうです。味わいはどちらも甲乙付け難いのですが。
何度も書いていますが、韓国では活きた魚貝類しか刺身にしません。ですから、コリコリとした食感を大切にします。しかし、魚も1日程度熟成させた方がタンパク質も分解し、旨味成分であるアミノ酸が生成されます。このような繊細な味わいを楽しむためには韓式のコチュジャン・ヤムニョム+サンチュ・エゴマの組合せでは無理があります。差し出がましいようですが、韓国の方にも刺身の本当の味わいを理解してもらいたいものです。