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これは20年ほど前にバルセロナで食べたパスタのパエリアPaella de pastaです。要するにお米の替わりにカッペリーニのような極細のパスタを細々にちぎったものをスープで炊いてオーブンでパリッとさせた料理でした。カタルーニャ地方の郷土料理とのことでしたが、バルセロナは地中海沿岸でプロバンスやイタリアにも近く、パスタも普通に利用されているようでした。この時は言われるままにPaella de pastaとして記憶に留めていましたが、以前からフィデウア(フィデワ)FideuaとかフィデオFideoと呼ばれる料理との関係が気なっていました。
日本ではフィデウアと言いますとスパゲッティやスパゲッティーニをフライパンでスープや具とともに煮た料理として知られていますが、Paella de pastaとは原理が同じでも味わいがまるで異なります。スペインからアップされている信頼できそうな料理サイトでFideuaを調べていくうちにさらに意外なことに気付きました。どうも当のスペインでフィデウアと呼ばれている料理は日本のフィデウアと丸っきり異なるのです。
スペインのフィデウアにはこのような小さなマカロニと言いますか、2cm位に切ったブカトーニのような穴あきパスタが使われているではありませんか(スペインのレストランHPより借用)。

そうしますと、冒頭の極細タイプのPaella de pastaは一体なんて言うのでしょう。それに日本のような長いままのスパゲッティを煮込んだフィデゥアも見当たりません。
さらに調査を進めますと、以下のようなことがわかってきました。
・フィデオというのは調理する前の材料(短いパスタ)のことで、それをパエリア風
に仕上げるとフィデウアという料理になること。
・ただ、パエリア風に調理してもフィデオと呼ばれる料理もあること。
・材料であるフィデオにも何種類かあり、スペインではごく普通に市販されている
こと。
・パエリア鍋で煮込んだ後にオーブンで焼く場合と焼かない場合があること。
・具材は肉を使ったものよりエビやイカなどの海の幸(Mariscos)が圧倒的に
多いこと。
上記のうち私が最も気になったのは材料であるフィデオを料理してもフィデウアになる場合とフィデオのままの場合とがあることです。そこで、GoogleでFideuaとFideoについて画像検索をかけ、使われているパスタを観察してみました。すると次のようなことがわかりました。それぞれスペインから発信されている200前後の画像を調べています。
フィデウアとフィデオに使われるパスタのタイプ
料理名\パスタ | マカロニタイプ | カッペリーニタイプ |
---|
Fideua | 92.6% | 7.4% |
---|
Fideo | 1.0% | 99.9% |
---|
結論はこうなります。スペインにおいては、フィデウアにはマカロニタイプのフィデオを使い、フィデオにはカッペリーニタイプの極細フィデオを用いると言うことです。前記のように材料のフィデオにも太さや形にバリエーションがありますが、それらは少数派でそれらを使った場合はフィデウアに分類されるようです。料理としてのフィデオには99.9%極細フィデオが使われますのでスペインではそれらを日本の饂飩(うどん)と素麺くらいに区別しているのではないでしょうか。それと冒頭のPaella de pastaはフィデオであることが判明し、胸のつかえも落ちた感じがします。
日本で広まっているスパゲッティやスパゲッティーニを使ったフィデウアはスペインで食べられているフィデウアでもなく、フィデオでもないということになり、日本独自の物でしょう。またそれをフィデウアとしてレシピ公開している料理サイトも多いのですが、スペイン人から見れば心外なのではないでしょうか。私たちも海外で見かけるとんでもない日本料理に心を痛めるように。
仕上げににオーブンでカリッと焼くのは極細のフィデオの方に見られますが、メジャーではないようです。でも、表面がカリッとしてピンピンと立ったフィデオは美味いものですねけどね。あと、もう一つ。スペイン語では海の幸を使った料理にMariscoが使われますが、フィデウアとフィデオでは以下のようになります。
Fideua de Marisco
Fideo con Marisco
deは英語のof、conはwithです。フィデウアとフィデオでは名詞の性が異なりますが、なぜこうなるのか不勉強でわかりません。
さて、毎度ながら前置きが長くなりましたが、さっそく、バルセロナのフィデオを再現して見たいと思います。YouTubeでスペインのレストランや料理研究家が発信している動画を何本も見て以下のような調理フローを作ってみました。
材料の分量は示しておりませんが、料理人によって一貫性がありませんでした。共通するのはエビとイカが使われることと魚貝類のスープストックで煮ることです。パスタとスープの分量の関係ですが、レシピによって全て違うと言ってもよいくらいです。現在、実験によって適量を決めている最中でので、後日、発表いたします。今回はパスタがヒタヒタになる程度から煮初めて、焦げ付かないように途中で追いスープをしながら仕上げます。
余談ですが、スペインの料理動画を見ていますとプロの調理人でも、かなり調理が雑に見えます。エビの腸は取らないし、スープのアクもそのまんま。日本人が几帳面すぎるのかも知れませんが、スペイン人も日本人が作ったスペイン料理を美味しいと感じるのではないでしょうか。
それでは、材料ですが、主役のフィデオの替わりに極細パスタ、カッペリーニを使います。今回はエビとイカの他にもアサリやホタテなども揃えましたが、基本はエビとイカです。
フィデウアの場合は結構豪勢に具材が乗るようですが、フィデオはイカとエビくらいでパスタが前面に出ています。ちょうど、海鮮丼とてこね寿司みたいな感じでしょうか。野菜では玉葱とニンニク、パセリは必須ですが、あとは好みでパプリカやキノコなどを使って下さい。その他はトマト水煮缶、塩、胡椒、オリーブオイル、白ワイン、あればサフランを使うと本格的になります。
DECCECOのカッペリーニを2~3cmに折っていきます。ちょっと手抜きで5cm位のもありますが、ご愛嬌。^^ 分量は1人分で80~100g、今回は器の関係で3人前を作ります。
本場スペインのフィデオは2cmくらいにカットされた物が箱入りで市販されています。面倒ですが、ロングパスタをポキポキ折るのって意外と楽しい。^^
エビの下拵えですが、飾りとするもの以外は食べやすいように殻を剥きます。イカも炊き込む分は細々と切り、同じくトッピング用に大きく切った物も準備します。
エビの殻やホタテのひも、イカのげそなどはスープの材料とします。小粒なアサリもスープ用に使います。
フィデオに色と香りを添える脇役達の準備です。
玉葱とニンニクは微塵切り、水煮缶のトマトも細かく潰しておきます。サフランは水で戻し、パセリはよく擂り潰しておきます。
今回は5カップほどのスープを取ります。
水に白ワインを加え、魚貝類のアラ、玉葱やパセリの軸などを入れて20分ほど煮ていきます。最後にごく薄めの塩味を付けておきます。
スープが取れましたら、いよいよフィデオ作りの核心部分に移ります。パエジェーラ(パエリア鍋)がないのでフライパンを使います。
最初に刻んだニンニクと玉葱をオリーブオイルで炒めます。
続いて魚貝類を炒め合わせ、軽く塩胡椒をして味を付けておきます。
なお、トッピング用はサッと色が変わったら取り出します。
トッピング用魚貝類を取り出したフライパンで今度はフィデオ(カッペリーニ)を炒めます。
パエリアもそうですが、パスタを炒めるのが特徴の一つです。続いて、トマト水煮と温めた魚貝類のスープ、サフランとパセリも加えて煮込みます。とりあえず、パスタがヒタヒタと浸かる程度に加えましょう。本来、カッペリーニは2分程度で茹で上がりますので、迅速に行動します。水分がなくなりそうになってもまだカッペリーニが硬い時だけスープを足します。
まだ、芯が残っているうちに火から下ろし、急いで味を調整してから耐熱容器に移してトッピング用具材を並べます。
器の面積に対してトッピングが多すぎました。途中で変更が出来ませんのでこのまま続けます。パエリア鍋であれば、そのままオーブンに入れられるのですが・・・。
210℃位に予熱しておいたオーブン(グリルモード)で表面だけを一気に焼き上げます。
表面のカッペリーニがカリッとすれば出来上がりです。具材が多くて豪華ですが、やはり、フィデオは表面のパスタがカリカリ、ピンピンしてないと行けませんね。トッピングをあとから乗せても良かったかも知れませんが、トッピングも香ばしくさせたいし・・・。ジレンマ^^
それでは冷めないうちに頂きましょう。魚貝類の旨味が染み込んだフィデオ(パスタ)が最高です。
安物ですが、料理に使った残りの白ワインで頂きます。パスタよりトッピングが主菜のようになってしまいました。^^ スペインではこれにアリオリソース(ニンニク入りマヨネーズ)を添えますが、日本人にはちょっとクドイかも。
スペインのパスタパエリアPaella de pasta を皮切りに色々調べまくり、フィデウアFideuaとフィデオFideoの関係や日本で広まっているフィデウアがスペインのとは全く異なることがよくわかりました。バルセロナで食べた懐かしのフィデオを再現しようと思いましたが、欲張ってトッピング用の魚貝類を増やしたことやパエリア鍋でなかったことなどから、カリカリ感が今一でした。今度はオーブンに入るパエリア鍋でより本物に近いフィデオを完成させてみます。
スープを継ぎ足し継ぎ足し作りますと、どうしても掻き混ぜて粘りが出てきます。なるべく、1回のスープ補給で仕上げられれば、より茹でた感じに近くなるものと思います。前記のように、現在、試行錯誤で最適な水分量を求める実験を繰り返しておりますので今しばらくお待ち下さい。それとスペインで市販されているフィデウア用のマカロニタイプのパスタ(Fideo)を入手して本物のフィデウアを作ることも課題となりました。中にスープが染みて大変美味しいのだそうです。
いずれしましても、フィデオやフィデウアはお米で作るパエリアよりずっと短時間で調理でき、ソースを別に作る必要もありませんので、簡便な パスタの食べ方として、忙しい時には便利ですね。日本のフィデウアもどきはスペインのようにショートパスタではありません。やはり日本人はスパゲッティというと麺料理と認識しているからでしょう。フィデウアやフィデオはパスタのパエリアと言われるようにお米の代用だとスペイン人は受け止めています。しばらく、このテーマでいたずらしてみます。^^