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メカジキのミラノ風カツレツ

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 一昨年、伊達藩の慶長遣欧使節団、ローマ法王謁見400周年を記念して、イタリアに参りましたが、ちょうど開催されていた万博を見るためにミラノにも滞在しました。ミラノ在住のTomokoさんにお願いして、ミラノの郷土料理店に案内して頂きました。

 ミラノの伝統的な料理といいますと、サフランを使った黄色いミラノ風リゾットRisotto alla Milanese、子牛の脛を煮込んだオーソブッコ Osso buco、そして、ミラノ発祥と言われるミラノ風カツレツCotoletta alla Milaneseです。このこの本場のカツレツを頂きましたが、実に美味しかったのです。

 本来は子牛の骨付きロース肉で作るのらしいのですが、モモ肉だったように記憶しています。このカツレツ、フランスではコートレットCotelette、オーストリアではウィンナーシュニッツェル Wiener Schnitzelと呼ばれて、どこでも元祖を主張しているようです。なお、日本のカツはフランスのコートレットの英語読み、カットゥレッツCutletsから来ているそうです。

 さて、それはそれ、みやぎ水産の日、2月のお薦めはメカジキです。これを使ったミラノ風カツレツ風をご紹介致します。^^



 ムニエルや焼き物用として販売されているメカジキの切り身を求めます。
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 このあと、叩き伸ばしますので1cm以上の厚みは必要です。


 メカジキのカツを作るのですが、衣は水溶き小麦粉とパルメジャーノを混ぜ込んだパン粉になります。
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 パルメジャーノは求めやすい粉末で結構です。チーズが入ることで衣自体が美味しくなります。

 
 
切り身はラップに挟み、擂り粉木で叩き伸ばして行きます。
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 あまり力を入れず、少し押し潰すように1.5倍ほどの面積に広げます。


 本場ではバターも使って揚げますが、オリーブオイルとキャノーラ油を半々にしました。
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 バターを使わなくても十分に美味しいカツレツが作れますよ。


 油を弱火で温めている間にサルサを作ります。イタリアでもこのような野菜たっぷりのソースで食べることもあります。
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 トマト、玉葱、パセリの微塵切りに塩をして、しんなりしたらレモン汁とオリーブオイルを混ぜ合わせます。今回は辛味と香り付けでパクチーペッパーを使いました。


 それでは、軽く塩胡椒をしたメカジキの切り身に衣を付けて揚げ始めましょう。
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 油はヒタヒタで結構です。両面をこんがり揚げてキツネ色になれば出来上がりです。


 お好きな野菜を添えて熱々を頂きましょう。
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 カツレツには下味が付いており、衣にもチーズが入っていますので、このままで十分に美味しく頂けます。


 サルサをかけますと、サッパリ+ピリッとした味わいになります。
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 サルサは最初からかけないで途中からの味の変化を楽しんだ方が良いと思います。


 メカジキのカツは白身のフライとも、マグロのカツとも違った独特の食感があります。刺身サイズの一口カツを芥子醤油で食べるのも和のテイストで日本酒にも合います。新鮮なメカジキは刺身で食べるのが一番ですが、切り身が安い時はこのような食べ方もお薦めです。
2017/02/16(木) 05:00 | trackback(0) | comment(0)

2017 正月バール開催

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 皆様、明けましておめでとうございます。
     本年もご閲覧よろしくお願い致します。


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 年末年始はイベントの準備とその開催でほとんど時間がなく、こちらの更新もすっかり遅くなってしまいました。一昨年、設立致しました塩竈・キオッジャ友好協会ですが、その後、イタリアでの桜植樹や宮城へのオリーブ植樹、映画鑑賞会やゆめ博でのバール開設など様々な活動を参りました。



 年明けの1月2日~3日には、塩竈神社参拝客の皆様へ温かいものを提供しようと再びバールの企画しました。
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 当協会の会員である本間様が本塩釜の壱番館でまちカフェ竹下園を営んでいらっしゃるので、それをちょっとイタリア風にアレンジさせて頂きました。



 店内外には、イタリアの港町キオッジャを紹介する展示も行っております。
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 ちょうどこの両日は箱根駅伝と重なっており、気になる方にもゆっくりして頂こうと、大型ディスプレイで中継を映しておきました。

 なお、料理写真を撮る暇がないくらい慌ただしかったので、スタッフやお客様から提供して頂いた写真を使わせて頂いております。m(_ _)m



 
提供致しました料理ですが、その一つは初詣で冷えた体を温めて頂こうと、熱々のミネストローネを用意しました。
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 具だくさんでこれにパンでも付ければランチにもなります。ベーコン、玉葱、人参、キャベツ、ひよこ豆、枝豆に塩竈らしさを出そうと薩摩揚げの細々も加えています。ペストジェノベーゼ(バジリコペースト)も最後に一垂らし。



 こちらはイタリア式おでんボリートです。
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 本来、大きな肉の塊や鳥モモなどを野菜と煮込み、切り分けて供するのですが、そこはそれ、鶏手羽元で代用しています。これも塩竈色をだそうと、鮪のつみれ(マルブン食品)も加えています。



 そして、ヨーロッパではポピュラーなホットワイン。シナモンの香りを利かせています。
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 アッポーとパイナッポーを串に刺して、昨年、流行ったPPAP風にしております。(^-^;



 実は日本酒も用意しています。一昨年、イタリアで数ある浦霞の中で最も人気を博した生一本を熱燗で提供しました
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 イタリア人も唸らせた塩竃の銘酒の一つ浦霞はイタリアでも販売を開始しております。


 
 ここでランチを済ませたい向きにパンの詰め合わせも用意しました。
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 本塩釜駅横のカフェデリーナさんに袋詰めを作って頂きました。



 塩竈・キオッジャ友好協会の会員には、飲食店や食品製造業を経営されている方が何人かいらっしゃいますので、このようなイベントには好都合です。今後も塩竈の節目節目で開催し、新しい名物として定着していければと思っています。最終的には常設のみなと町バールとして塩竈の新鮮な魚貝類を使ったキオッジャ・ベネツィア料理を提供できれば最高でしょうね。(^^)
2017/01/07(土) 05:00 | trackback(0) | comment(0)

昼呑み忘年会

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 大名マークさんから磯自慢の大吟醸が手に入ったので呑みに来いとのお誘いが掛かりました。有り難く馳せ参じ、明るく使い勝手の良いキッチンに久々に立たせて頂きました。本日は前菜、お凌ぎ、蒸し物、〆の麺類の4品を作ります。今ちょうど、前菜の4点盛りが出来上がったところです。


 前菜はサーモンの紅葉漬け、白子の胡椒焼き、人参と大豆の白和え、ほうれん草と食用菊の柚香浸しの4点です。
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 紅葉漬けにはイクラを入れたかったのですが、今年は秋鮭が不漁で品薄気味。筋子(マスコ)をバラして使っています。


 以前、サンマの一本海苔巻き(こちら)を紹介しましたが、これは肴として食べやすい柳葉魚の海苔巻きです。
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 ゆけちゅうさんにもお手伝い頂き、せっせと巻き込んでいきます。


 左が私、右がゆけちゅうさんの盛り付けです。
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 ゆけちゅうさんの方がスッキリしていて秀逸ですね。
 

 こちらはホスト家の大名マーク夫人がご用意されたオードブル。
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 マグロの生ハム巻きが斬新ですね。右下のネギトロのセビッチェも最高。南米を思い出させます。


 お酒も各自持ち寄りでこんなに。いつもこんなに呑めるかと思うのですが、空かなかった時はありません。
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 そして厳かに宴は始まります。


 意表を突かれたビーフシチュー。
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 ホスト家恐るべし。何が登場するかわからない楽しみがあります。


 私はここで牡蠣の蒸し物。仕上げに熱した香味油を回しかけます。
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 牡蠣を蒸し煮した際に出たエキスは熱燗と混ぜて牡蠣酒にします。これも乙な味です。左は江戸期の芋酒を再現しました。


 さて、ここで珍味の盛り合わせです。ホスト家が金沢で買ってらした贅沢な品々。
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 鯖のへしこ、河豚の卵巣のへしこ、アワビの煮貝、これに宮城の珍味、蒸しホヤを盛り込みました。河豚の卵巣は猛毒ですが、糠に長期間、漬け込むことで解毒されるのです。これに到達するまでに多くの犠牲もあったのでしょうね。


 この肴で真打ちが登場します。磯自慢の大吟醸です。
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 実に素晴らしい香りです。酔いつつある舌がシャキッとしました。


 誰かがローストビーフを食べたいと我が儘を言うと「あるよ。」と出てくる凄さ。
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 冷凍庫にちゃんとあるところが素晴らしい。山葵やグレービーおろしで頂きます。


 いよいよ最後の〆に取り掛かります。オリジナルのホヤの焼きうどんです。
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 稲庭饂飩を三陸オーシャンさんのホヤ醤油(開発中)と蒸しボヤで炒め合わせます。は茎の部分は炒め合わせ、葉の細々は針海苔とともに天盛りしました。ホヤ醤油、実に深い味わいです。早く商品化して頂きたいですね。


 いつもいつも大人数のゲストをお招き頂き、ホスト家には頭が下がります。昼前から飲み始めてもすぐに夕方になってしまいます。それくらい話題も尽きず、笑いも絶えません。お互いに尊敬できる方々との宴は色々な意味で自分の栄養になります。また、よろしくお願い致します。

 
2016/12/28(水) 05:00 | trackback(0) | comment(2)

カレイのカレームニエル

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 宮城県では師走に子持ちのナメタガレイ(ババガレイ)やマコガレイの煮付けを食べる習慣がありますが、若い世代の家庭では経済的にも負担であり、煮魚が嫌いな子供も多いのでこの食文化の継承が難しくなっています。そこで、仙台湾のカレイ類の中でも資源量が最も多く、値段も手頃なマガレイを使ってお子さんも好きになれそうな料理を考えてみました。仙台湾のマガレイは冷凍ではなく鮮魚で出回ることが多いので、カレイ本来の味も知ることが出来るからです。



 まず、新聞紙の上でヌメリとウロコを掃除します。
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 カレイの両面の鱗を丁寧に出刃の刃先でこそげ落とします。これは頭を落としたり、内臓を取る前にやって下さい。



 そして一工夫。調理ハサミで背鰭と尻鰭を切り取ります。必ず尾の方から鰭を立てるようにして切り取ります。
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 これには訳があります。マガレイ空揚げにしますと鰭までパリッと美味しく食べることが出来るのですが、ムニエル塩焼きだとそうは行きません。そこで、鰭は鰭で料理して無駄をなくそうという魂胆です。その利用の仕方は後述します。



 両側の鰭を切り取ったカレイは頭を落として内臓を引き出します。
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 さらに尾鰭も切り落とし、よく洗ってから正中線に沿って切り込みを入れておきます。こうしますと、肉の厚い部分にも火が通りやすくなるとともに、食べる時に身を骨から外しやすくなります。



 前処理が終わって、いよいよ加熱調理です。
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 調味は塩とカレー粉だけです。香り付けに好みのハーブを用いても良いでしょう。カレー粉は十数種類のスパイスの複合体ですので、ハーブがなくても十分に香り付けが出来ます。淡白なマガレイの白身をスパイシーに演出しようという作戦です。


 フリーザーバッグにカレイと調味料、ハーブ類を封じ込めて30分ほど寝かせます。
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 ハーブはローズマリー、セージ、タイムなどが魚とよく合います。


 この間に切り取った鰭で煎餅を作ります。よく洗ってから水気を拭き取ってクッキングペーパーに並べます。
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 これを耐熱皿に乗せて、電子レンジで600W3分を2~3回繰り返します。一度加熱したら取り出し、庫内の蒸気を排出し、鰭も天地返しします。量が少ない場合は2回でも出来ますが、3回目は様子を見ながら時間を加減して下さい。油を使わないヘルシーな鰭煎餅が出来ます。カリッと仕上がったら塩を振ります。


 さて、カレー粉が馴染んだカレイですが、バッグからハーブだけを取り出し、片栗粉を振り入れます。
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 バッグを膨らませて密封し、よく振りますとカレイに片栗粉が満遍なく塗せます。


 余分な粉を叩いて、油を熱したフライパンでハーブとともに焼き上げます。
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 少し多めの油で焼き始め、傾けたフライパンの端に溜まる油をスプーンでカレイにかけながら両面同時に加熱します。鰭を切り取っていますので、フライパンが焦げ付きやすいと皮が剥けてしまうことがあります。その場合は、クッキングペーパーを敷いてその上で焼いて下さい。


 両面こんがりと火が通ったら完成です。
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 好みの野菜とレモンを添えて頂きましょう。鰭を切り取ってあるので身が背骨から外しやすいのですが、縁側の中の小骨(担鰭骨)は紛れやすいので注意して下さい。


 こちらはレンチンして作った鰭煎餅。軽く塩を振りました。
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 やや生臭さが残るので、これにもカレー粉を塗しておいた方が良かったかも知れません。



 特に師走は生鮮のナメタガレイマコガレイがお高くなります。かといって、どこの国のカレイか不明な冷凍切り身ではカレイ本来の美味しさは子供にも伝わりません。仙台湾はカレイの宝庫、特にマガレイは値段も手頃で生鮮物が販売されており、子供も喜ぶこのような料理で是非、味わってみて下さい。
2016/12/14(水) 05:00 | trackback(0) | comment(0)

小粋ナ独酌・対酌ノスゝメ その③ 最終

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 3回シリーズで開催して参りました晩酌塾“小粋ナ独酌・対酌ノスゝメ”、いよいよ最終回です。今回は江戸時代後期、庶民が食を楽しみ始めた頃の料理を再現しながら、当時の食文化を垣間見ます。会場は色々と我儘を聞いて下さっている仙台は立町のKaffeTomteさんです。なお、今回も写真は受講生の皆様からお借りしました。ありがとうございます。m(..)m




 食に関する日本の書籍は平安時代からありますが、当初は祭事の細則や包丁式家の秘伝書などでした。
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 その後、江戸時代に入ると流派を超えた料理の実用書や本朝食鑑のような専門的な食の事典も出版されます。さらに時代が下り、天明の頃になると農村部は飢饉で苦しんでいるのですが、上方や江戸では、食を楽しむ読み物や旅のグルメガイドなども著されるようになりました。

 私は以前より、食育に対して食楽という概念を確立しようと温めてきました。決して食道楽や食通のことではなく、食材の背景にも習熟して、その持ち味を活かした料理の創製を楽しむものです。その点からしますと、まだ、海外の料理に染まり切っていない江戸期の惣菜は食材の持ち味を活かしたものが多く、大変、参考になります。


 食楽の典型とも言える百珍本は連鎖反応のように僅か3年の間に7冊も発行されました。
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 百珍本とは特定の食材を取り上げ、その料理法を百種類以上紹介する実用書というより読み物です。中には記載されているレシピ通りでは決して再現できないものも紛れており、面白さを狙っていることがわかります。豆腐百珍が引き金となり、鯛、大根、卵、海鰻(鱧)と続き、少し間をおいて、蒟蒻や甘藷(薩摩芋)などの百珍本が出版されています。


 さて、今回の第一品目は、料理伊呂波包丁という安永二年(1773)に刊行された料理総合実用書に記載のあった前菜で、大根と林檎の胡麻山椒和えです。
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 中央には口直しに新物の生海苔山葵酢浸しを添えました。胡麻と山椒の組み合わせは和食としては珍しいと思います。大根は薄味で下煮をしてさっと焙ってから擂った黒胡麻と粉山椒で和えています。林檎は白胡麻を使いました。同じ胡麻でも風味は異なりますので、その対比も楽しんで頂こうという意匠です。


 本日のお酒はご覧の通り。
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 料理に合わせて、亀岡の阿部酒店さんが厳選して下さっています。




 この晩酌塾は江戸期の料理の再現だけではなく、その精神的背景にも探りを入れます。
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 江戸っ子の心意気はで成り立ってます。野暮は嫌われます。本来は上方で茶道や華道に精通している様子を粋(すい)と呼んでいたようですが、江戸に伝わり、庶民が江戸なりの精神美として(いき)を作り出しました。

 でも、を貫くのはそれなりに苦労も要り、息抜きも必要でしょう。少し緩い小粋くらいが肩肘張らず実践できそうです。特に単純美は現代でも見習うべき価値観だと思います。




 と言えば、池波正太郎の時代小説、鬼平犯科帳の長谷川平蔵ですね。二代目中村吉右衛門さんが良い味を出しています。
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 シリーズの中で兇賊という話がありますが、その中で加賀やという居酒屋で平蔵が名物の芋酒芋膾に舌鼓を打つシーンがありますが、料理番組さながらのシーンが印象的です。こちらをご覧ください。


 そして、まず、芋酒。トロ―リ温かで冬にぴったし。精力剤として呑まれていたとも。。。
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 鬼平犯科帳通りの作り方は山芋を賽の目に切って、熱湯に通し、擂り鉢で酒とともに擂っていくとあるのですが、熱湯に通す意味が分かりません。湯通し程度では中まで加熱されませんし、表面のぬめりを取ったとしても中からまた出て来ます。それに角切りの山芋を擂り潰すのは難儀です。普通におろし金か擂り鉢の内側で擂り下し、その後、酒とともに練り上げれば良いと思います。いずれにせよ、練り上げた芋酒はお燗で頂きます。


 こちらは芋膾ですが、里芋で作っています。
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 蒸かした里芋の上に酢締めの魚を乗せ、合わせ酢を掛け回したものです。天盛りは針生姜。添えは平田赤ねぎの甘酢漬け。シャリを里芋に替えた寿司のようにも見えますが、やはり膾ですね。面白い料理です。



 さて、江戸期の晩酌の華は何んと言っても小鍋立てです。
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 小鍋立ては自ずと独酌か対酌になります。3人以上になりますと宴になり様相が変わりますね。一人手酌で鍋を突きながら物を想ったり、差しつ差されつでしんみり話すのも好いものです。毎度毎度パーティーでは楽しくても自分磨きにはなりません。


 今回は奈良に飛鳥時代から伝わる飛鳥鍋にしました。
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 元来、ヤギの乳で作ったらしいのですが、現在では牛乳で代用します。メインの具にはこれから旬を迎える牡蠣を使いました。牡蠣とミルクは出会いですが、この鍋が江戸で食べられていたかは不明です。


 江戸期の晩酌から学ぶものは多いのですが、百珍本などの料理が普段食べられていたとは思えません。
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 江戸時代後期に実際に庶民が食べていた惣菜を知るには見立番付が役立ちます。見立番付とは相撲の番付表を真似して、様々な物のランキングを楽しむものです。その中に惣菜の番付がありました。200種類くらいが記載されており、魚類方と精進方に分かれています。精進方の大関は八杯豆腐、魚類方はめざしいわしとあります。


 この八杯豆腐が気になって作り方を調べましたら、醤油1、酒1、だし6の合計8で豆腐を炊いた物でした。
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 この調味液で同量の豆腐を炊きますと、塩分1%ほどの好適塩分に仕上がります。レシピを覚える先人の知恵ですね。煮汁にとろみを付けて戻してやると冬は体が温まります。天盛りは大根おろしと七味唐辛子。


 江戸期の晩酌を整理しますと、小鉢や小皿の前菜で呑み始め、小鍋立てでメインを楽しみ、〆の飯となります。
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 電熱器でも土鍋ご飯が炊けることは実証済です。名飯部類(享和2年;1802)というご飯料理の名著を紐解きますと、汁かけ飯も江戸期には好まれていたことが分かります。




 そこで、浅草海苔ではありませんが、ちょうど今、初海苔のシーズンなので生海苔を使った汁かけ飯で〆にします。
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 生海苔をだし醤油でつゆだくに炊いて、海苔と汁をご飯にかけ、山葵を乗せて頂きます。生海苔の香りが鼻腔に広がります。



 今回はデザートも用意しました。焼き柿です。焼き牡蠣ではありません。^^
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 これも江戸期に存在した菓子。焼くことによりトロリと甘くなり、皮まで食べられます。これに味醂と肉桂をかけています。素朴な甘さがなんとも懐かしい。日本人の甘味の原点は柿ですからね。上白糖に庶民は手が出せませんでしたし。




 今回の晩酌塾3回シリーズを全部受講された6名の方々には皆勤賞として私から薬研堀の七味唐辛子を贈呈させて頂きました。
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 薬研堀は400年近く前に日本橋で創業した七味唐辛子の老舗中の老舗です。現在も浅草で営業されており、通販でこのようなMy七味のケースも買うことができます。七味唐辛子は日本が生んだ世界に誇れるブレンドスパイスですね。




 江戸期の食文化を垣間見て、現代にも取り入れられる考え方や料理を探索して参りました。その結果、単純美を重んじるという概念と小鍋立てに象徴される晩酌スタイルに行き着きます。山海の美味を何種も詰め込んだ寄せ鍋を皆で突くのも楽しいものですが、3種類以内の厳選した具材を小鍋立てにして、一人手酌の独酌や差しつ差されつ対酌で楽しむのも落ち着きのない現代には必要な時間でしょう。


 江戸料理を再現して感じるのは素材の味を残す控えめでシンプルな味付けです。煎り酒煮貫で素材を味わうと現代の味付けが必要以上に濃いことに気付きます。醤油が普及した後でも八杯豆腐のように人間の体液の塩分濃度に近い味付けにしてあります。もちろん冷凍冷蔵保存はできませんので、高塩分の漬物や切込みもあったでしょうが、料理自体の味付けは極めてヘルシーだったようです。


 かといって、現代の食生活を江戸時代に戻したら、体格も貧弱になり寿命も縮小するでしょう。それにそのようなことは不可能です。世界中の料理で構成される現代の食生活ですが、その所々に江戸期の料理を織り込んで当時を偲びながら晩酌を楽しむのは日本人にしかできないことです。江戸庶民の好きな惣菜は見立番付から学べます。これに記載される200種余りの惣菜を1日1品ずつ晩酌のアテにするだけで半年以上も楽しめます。是非、池波正太郎の時代劇でも観ながら、江戸の心意気に浸って、小鍋立てを楽しみましょう。^^
2016/11/21(月) 05:00 | trackback(0) | comment(0)