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(6)〆はやはりへぎそば

カテゴリー: 外食:蕎麦

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 佐渡料理と地酒のお店、たらい舟さんでしこたま飲んだ後は、少し歩いてふるまちモールの交差点近くにあります蕎麦屋さんを目指します。新潟で蕎麦と言いますと、へぎそばがあまりに有名ですが、その起源はよくわからず、我こそが元祖と言わんばかりのお店が目立ちます。ともあれ、食べながら考えてみることにしましょう。^^

 




 おおさんに案内されたのは、 須坂屋そばさんでした。
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ライティングにも工夫が見られ、すっきりとコンテンポラリーなデザインの蕎麦屋さんです。

 




 エントランスも店内も木と土を感じる和風ながら現代的な雰囲気がある空間です。
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ジャズでも流れていそうですが、よく覚えておりません。^^


 





 さて、なにはともあれ地酒です。散々呑んできても呑兵衛の習性上、避けられない儀式です。^^
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 ぐい飲みも好きな物が選べます。飲んだ地酒は何だったか・・・。

 






 それでは、名物のお蕎麦を頂きましょう。あれっ、へぎそばとは書いていませんね。へぎ手振りそばですって・・・。
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 こちらのお店ではへぎそばという品名では出せない理由があるようです。


 

 

 そこで、へぎそば登録商標でググリますと、筆頭に小千谷市のわたやさんのHPが出てきます。それによりますと、「へぎそば」「手振りそば」は登録商標です。当方の許諾なしに販売に使用することはできません。と如何にも申請者らしい口上が記載されています。

 


 一方、長岡市の小嶋屋さんのHPでは、越の海藻挽(くさび)きそばはへぎそばとも呼ばれています。越の海藻挽きそばは長岡小嶋屋の登録商標です。と書かれ、三段論法的にへぎそばの使用の正当性を主張しています。

 


 方や、小千谷そばの角屋さんのHPではへぎそばが登録商標されていることだけを伝えており、だれが申請者かわからない表現になってます。

 


 どうも、これらを総合すると、へぎそばというのは、もともと、そばの生産地の長岡や小千谷の蕎麦が、手振りそばと言われたり、海藻のフノリを使うので布海苔そばであったり、最近では海藻挽きそばやへぎ手振りそばだったりするようですが、元は同じものを、我こそ元祖合戦の結果、このような統一性のないそばになってしまったようです。同じイタリアンを看板にしているみかづきさんとフレンドさんのような相乗効果はなく、逆効果になっているのが残念です。もしかすると、県内や他県で本来の物とかけ離れたへぎそばが粗製濫造され始めたことへの防衛手段だったのかも知れません。それにしても団体申請ができれば、地域のへぎそばとしてもっと有名になったことでしょう。


 
へぎそばを整理しますと、
  
  
へぎそば:盛り付ける容器の名称、へぎ(剥ぎ、枌、片木)から来る名称。


手振りそば:一口分ずつ、手で糸の束のように盛り付ける動作から付いた名称。


布海苔そば:つなぎに海藻であるふのりを用いたことから来る名称。



の三つの側面を持っており、それらを総称してへぎそば(広義)となるようです。

 






 さて、あまり前振りが長いと蕎麦が不味くなりますので、頂きましょう。これで4人前です。
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 このようなへぎと呼ばれる大きな木製容器に蕎麦が手振りで綺麗に盛られて供されます。これが二大特徴


 





 よく見ますと、そばの表面が妙に艶やかです。これはつなぎにフノリを使っているからでツルツルスコスコした食感が生まれます。これが3番目の特徴
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 一定量を綺麗な8の字にまとめて整列させています。蕎麦の端が下側になって見えないようにしてあります。これも美しく見せるための配慮ですね。ただ、この手振りの一単位は子供や女性の一口には大きすぎるように感じました。^^


 




 さて、へぎそばの4番目の特徴は豊富な薬味類であることを知りました。
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 海苔や大量の晒し葱くらいなら驚きませんが、山葵の他に練り芥子が登場します。かつて、小千谷や長岡では山葵を栽培していなかった頃の名残だとされますが、冷たい蕎麦には辛みが欲しくなることを裏付ける証になりそうです。それはともかく、びっくり仰天はきんぴらごぼうです。


 





 こうして、きんぴらごぼうと一緒に蕎麦を食べます。これこそまさに、へぎそばの珍百景。
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 蕎麦との馴染みを考えて、笹搔きではなく、糸掻きにしてあります。蕎麦ときんぴら・・・・、意外ですが、面白い味わいです。ざるそばを食べているというより、冷たいけんちんそばかなぁ。へぎそば自体が蕎麦の風味をあまり強く感じないので、このような食べ方も悪くありません。つゆもたっぷり浸けらるように幾分薄めに味付られています。

 

 それにしても、新潟県民はきんぴらごぼうが好きですね。後の記事でご紹介しますが、団子の餡にもきんぴらが使われていたりしましたよ。

 


 左は食べ終わったへぎの構造を見たものです。
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本来は山形の板そばのように、薄く剥いだ板で作った平たい箱だったようですが、現代は水切りの良い簀子を敷くのが普通です。そば湯もしっかり頂いて余韻もじっくり楽しみます。


 
 念願の本場のへぎそばを食べることが出来ました。厳密に言いますと本場は小千谷や長岡なのかも知れません。器、つなぎ、盛り付け、薬味の4大特徴があるへぎそばは、是非、一定の基準を定めて統一した名称を使えるようにして頂きたいものです。旅人にとって嬉しいことは、その地に根付いた独自の物が食べられることです。名称不統一の実態は不安を招いてしまいますので・・・。

 

 へぎそばの味わいに関しては、以前、自分でフノリを使って蕎麦を打った(裁った)ことがあり、大体想像通りでした(作り方)。スコンとした噛み心地はいわゆる蕎麦とは少し離れますが、へぎそばは新潟県民によって作り上げられてきた独自のスタイルを楽しむものです。
 
 
 かくして、新潟の夜は更けていきます。食べ歩きツアーの御一行様は、よく食べ飲み歩きました。明日も早朝から貪欲に行動します。おおさんとつねちゃんは、この後も飲み行ったそうです。若さだねぇ~。




 
 須坂屋そば 山水庵 古町店


所在地:新潟県新潟市中央区西堀前通8番町1509-2  
電 話:025-223-3275 
営業時間:11:00~14:20/18:00~翌0:30 
定休日:日曜、祝日  
駐車場:なし




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2009/06/06(土) 05:00 | trackback(0) | comment(6)
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kazu

URL | [ 編集 ] 2010/07/25(日) 23:11:41

いやあ、勉強になりました。
ちょっと違うけど、松葉ガニ、越前ガニ、ズワイガニの呼称と同じようですね。
元会社の近くの東京・神田に、須坂屋というへぎ蕎麦を売りにした店がありました。
ふのりをつなぎにしたぬるっ感が、神田に合わなかったのかも知れません。じき撤収しました。
なにせ老舗の「まつや」「やぶ蕎麦」がある土地柄ですものね。
代わりに安い讃岐系うどん、背脂系ラーメン店の激戦区です。

サエモン

URL | [ 編集 ] 2010/07/26(月) 06:03:38

 kazuさん ありがとうございます。

 ズワイで例えるなら、意地でも越前と呼びたくない
京都府丹後半島の間人ガニかも知れません。

新潟でもネームバリューのある「へぎそば」や「手振りそば」
を使いたいけど、登録商標されてしまったので、仕方なく
似たような名前が乱立したのでしょう。「へぎ手振りそば」は
その苦しさがよく表れています。

 へぎそばは江戸前蕎麦のメッカ、神田では厳しいでしょうね。
新潟県民か新潟旅行した人が懐かしくて利用するくらいでは
ないでしょうか。喉越し重視の江戸前では、噛むタイプの蕎麦は
受け入れ難いでしょうね。

愛酒る会

URL | [ 編集 ] 2010/07/29(木) 12:52:52

博識ですね。いつも感心させられます。新潟行くときに拠らせていただきます

サエモン

URL | [ 編集 ] 2010/07/29(木) 21:28:38

  愛酒る会さん おばんです。

 いえいえ、決して博識ではないので、必死に調べるのですよ。^^

 それにしても、新潟に行ったら、どちらの蕎麦屋さんでも安心
してへぎそばが食べられるように組合でも作ってもらいたいです。
そして、正統へぎそばの幟旗も上げてもらいたいですね。

 店ごとに多少の個性はあっても上記記事のように最低限の基準は設けて
もらえるとありがたいのですがねぇ。

風写

URL | [ 編集 ] 2010/08/03(火) 09:12:54

おはようございます
ブログにも書きましたが、秋田県羽後町西馬音内にも布海苔入り蕎麦の歴史が息づいていました。
なかなか興味深い蕎麦文化です。

サエモン

URL | [ 編集 ] 2010/08/03(火) 21:51:56

  風写さん おばんです

 乾燥させた海藻は日本中どこへも運べます。
フノリ(布海苔)はもともと布をパリッとさせるために
使われており、それこそ、機織りが盛んな地域では必需品
だったようです。それがあとから蕎麦のつなぎに応用された
みたいですね。

 内陸部なら山芋や小麦があると思いますが、それぞれが
貴重だったのかも知れません。

 花火は残念ですが、参加できません。また、誘ってください。











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